阪和興業に「見解」と3回目の質問を送付ー天然林を木質ペレットの原料として皆伐または植林地に転換することは「持続可能性」に反する

近年インドネシアでは、日本でバイオマス発電所の燃料として利用されている木質ペレット生産を目的とした「エネルギー産業用造林(HTE)」が急速に広がっており、面積は約130万haにも達しています。これにより、天然林の伐採および単一樹種による人工林への転換が進行し、生物多様性の喪失、洪水リスクの増大や森林や農地へのアクセス不可による地域住民の生活への深刻な脅威となっています。
インドネシア・スラウェシ島北部のゴロンタロ州で生産されている木質ペレットは、日本や韓国などへの輸出向けであり、日本では商社の阪和興業などが輸入しています。
FoE Japanとインドネシア環境NGO4団体は、これ以上、インドネシアの天然林を破壊することがないよう、2025年11月6日、阪和興業へ木質ペレットの輸入中止を要請するとともに、現在までに2回(第一回:2025年11月6日第二回:2026年1月21日)、同社に質問書を送付しました。同社から一応の回答を得ていますが、不明確な部分も多く残されています。
このたび、同社から得られた回答に対するFoE Japanの見解および3回目の質問を同社に送付しました。

現在までのご回答に対するFoE Japanの見解

これまで2回の質問を通して得られた回答において、「天然林または天然生林(※)の重要性」と「持続可能性の考え方」、および「事業地周辺住民等への配慮」の3点について、再度大きな疑問を投げかけざるを得ないと考えています。

※「天然生林」とは伐採など人為の攪乱の後に天然更新し、回復の途上にある森林のこと。天然林との違いは、天然林は台風などの自然攪乱による回復の途中のものから十分に回復し、安定した状態に達するまでを含むもの。

熱帯林は生物多様性の宝庫です。この熱帯林の減少・劣化を止めることこそが、生物多様性保全や気候変動対策に寄与するため、持続可能性を担保するために取るべき第一歩です。

貴社が木質ペレットを調達している森林は、たとえ、土地区分制度において「伐採(択伐)済み」と分類されていたとしても、「依然として原生林(primary forests)」と、インドネシアのNGOは指摘しています。当該森林は保護、保全の対象とすべきであり、木質ペレットの原料として皆伐または植林地に転換することは「森林減少・劣化」に当たります。

このため、その天然林/天然生林を皆伐、転換し、ガマル植林地を造成することを「持続可能性」と称することは著しく誤解を招く行為です。天然林/天然生林から単一樹種の植林地に転換することにより、生物多様性を含む生態学的価値が失われ、水循環環境の攪乱など生態学的な影響が生じますが、そのような影響を完全に無視しています。

また、伐採地周辺の村々および住民の方々への影響について、事業の許認可取得に必要な取り組みは実施されているとのことですが、詳細な説明がないため、「いつ誰に対して何を実施したのか」を判断できる材料は依然として不足しています。

2026年5月には、地域住民による事業者への抗議活動が発生し、参加した複数の住民が警察によって不当に拘束されたとの報道もありました。こうした事態は、事業者による住民への説明や、住民との約束・合意事項の履行が十分でなかった可能性を示唆しています。 

この点については、貴社の人権方針において支持、尊重するとしている「人権に関する国際規範」に則り、現地当局や警備員による人権侵害に貴社が加担しないよう確保するための適切な対応が迅速にとられるべきと考えます。

つきましては、これまで明確な回答のなかった項目、および不明な点について、再度以下の質問をお送りします。

【質問】

(1)天然林の皆伐行為に関する矛盾について

天然林または天然生林の皆伐行為は「エネルギー転換に伴う現実的な課題を踏まえつつ、気候目標の達成に取り組んでいくことが重要」との記述と矛盾しています。

天然林または天然生林の皆伐は、炭素排出であり、ガマル植林等によって補償や相殺できるものではありません。この矛盾について、貴社のご見解をお示しください。

(2)森林の伐採や改変について

 「二次林地域が確認されている」(第一回目のご回答)、「PT BTLおよびPT IGL が関与する2013年、2014年よりも前に伐採行為が生じていた」(第二回目のご回答)とのことですが、インドネシアNGOから入手した2000年と2018年の衛生画像からは広域・大規模に皆伐されているような痕跡は見られず、「天然林または天然生林」の状態は維持されています(参考資料参照)。2000年と2018年の画像の比較においては、2018年はむしろ植生が回復していると考えらます。したがって、ガマル植林地への転換は明らかな「森林減少」です。現時点で、すでに生物多様性を含む生態学的価値の喪失と水循環環境の攪乱を含む生態学的な影響が生じており、これは「持続可能性」に反しています。この点について、貴社のご見解を改めてお示しください。

(3)原材料の持続可能性について

 「持続可能に調達した木材を原料として加工」(第一回目のご回答)とのことですが、「持続可能に調達すること」と「持続可能性が確認された原材料の調達」とは異なります。また、「PT BTLおよびPT IGLはいずれも、森林資源の合法性を確認するための森林製品合法性検証(VLHH/SVLK)証明書を取得している」(第二回目のご回答)とのことですが、これも「合法性」の担保であり、「持続可能性」ではありません。

 現在、貴社が調達している原材料の「持続可能性」はどのように担保されているのか、改めてご見解をお示しください。

(4)ステークホールダーとの継続した対話や協議について

 「当社のバイオマス事業は、当社の環境方針・人権方針などに沿って運営されています。このポリシーには、環境関連法規の遵守、資源・エネルギーの有効活用等が含まれています」(第一回目のご回答)とのことでした。2026年5月に発生した事業者に対する住民の抗議活動は、関連するステークホルダーとの対話・協議など人権方針に基づく取り組みが十分でなかったことも一因となり、発生したと考えられます。貴社では、同方針に基づき、「いつ誰に対してどのような取り組みを実施した、またはしているのか」について、お示しください。

(5)貴社グループのサプライチェーンハンドブックについて

 2026年1月に「阪和興業グループ サプライチェーンハンドブック」が公開されました。その適用範囲については「主に当社グループのサプライヤーをはじめとする取引先(直接・間接)を読者対象」との記載があり、適用範囲があいまいです。

a) このハンドブックの適用範囲は、サプライヤーをはじめとする全ての取引先企業(直接・間接)だと理解してよろしいでしょうか?

b) 同ハンドブック、(5)情報開示・情報保護の「取引先へ期待すること」として「非財務情報(環境・社会面)も含め、ステークホルダーに有用な情報を積極的に開示すること」と示されているものの、これまで当方との2回のやり取りの中では、FPICの確保を示す証拠や環境影響評価(AMDAL)の結果についてお示しいただくことはありませんでした。再度の質問となりますが、①PT BJA、PT BTL、PT IGL の各社が保有するFPICの手続きおよび関連文書、コミュニティとの対話の内容や、やり取りの記録等、②環境影響評価(AMDAL)の結果、および直近の環境モニタリングの結果について、お示しください。

c) 貴社サイトにおける同ハンドブックの公開について、日本語版は確認できましたが、今回のPT BJAのように海外のサプライヤーに対する英語版(または現地語版)もあるものと思われます。英語版について、開示いただくことは可能でしょうか。

d) 同ハンドブックについて、今後、継続的に全事業者へ働きかけるとともに、内容を改善・更新していく計画はおありでしょうか?現状、人権侵害リスク評価や生物多様性リスク評価に関する記載はあるものの、i) サプライチェーン全体を通した森林減少・劣化を食い止めることへのコミットメント、ii)環境影響評価の実施とその結果公開について言及されていないことは残念です。

(6)「私有林(Hutan Hak)」指定について

 環境および社会への配慮ならびに法令遵守に関連して、「環境林業省より木材林産物利用のための ”私有林(Hutan Hak)” 指定を受けている」(第一回目のご回答)とのご説明でした。両社が指定を受けた2020年5月13日時点では、Hutan Hakに関する法令P.21/MENLHK/SETJEN/KUM.1/4/2019(*1)が有効でした。その後、同法令はPermen LHK Nomor 17 Tahun 2020(*2)を経て、現在はPermen LHK Nomor 9 Tahun 2021(*3)へと改正されています。

 現行法令(*3)では、Hutan Hakの対象者が明確に定義されており、PT BTLやPT IGLのような営利企業は対象に含まれていないと理解しています。また、改正前の法令(*1)、(*2)においても、第1条および第2条に「地域社会の福祉の実現」および「持続可能な森林管理」が掲げられていることから、営利を主目的とする企業を対象とした制度ではなかったと読み取ることができます。

 以上を踏まえると、2020年5月13日にPT BTLおよびPT IGLがHutan Hakの指定を受けたことは、制度の趣旨や対象に照らして極めて異例であり、通常の法制度上どのような根拠に基づいて指定されたのか疑問が残ります。この点について、指定の法的根拠を含め、貴社のご見解をお示しください。

参考資料

PT. BJAグループの事業地周辺の衛生画像(2000年、2018年、2025年)

インドネシアNGOのForest Watch Indonesia(FWI)によると、PT. BTNの事業地周辺の2000年、2018年、2025年の衛星画像(図1a~c)から、彼らの事業権(HGU)が付与された2014年の前後の2000年と2018年では、2025年のような広大な面積を対象とした伐採行為は確認できない。したがってPT. BTLによる大規模伐採事業が実施される前は、「伐採済み森林(HBT)」と区分されていたか否かを問わず、「天然林」または「天然生林」は残存していたことがわかる。

したがって、2013年、2014年に付与されたHGUによってPT. BTL社が伐採している土地は「天然林」または「天然生林」だったと考えられる。

図1(a) PT. BJAの事業地周辺の森林の様子(2000/12/31時点)

注)座標:0”41’31.10”N 121”31’33.18”E 512m

図1(b) PT. BJAの事業地周辺の森林の様子(2018/11/27時点)

注)座標:0”42’30.54”N 121”30’37.77”E 650m

図1(c) PT. BJAの事業地周辺の森林の様子(2025/3/28時点)

注)座標:0”42’40.65”N 121”32’33.34”E 472m

 

 

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