バイオマス発電に関する2つのガイドラインにおける林野庁の統合・改定案に意見提出
- 林野庁により、これまで木質バイオマスを発電用の燃料として活用するうえで、供給者が留意すべき事項をまとめた2つのガイドラインの一貫性・継続可能性および持続可能性基準のFIT/FIP制度への反映を目的とし、ガイドラインの統合および改定をすることとなった
- ガイドラインの統合と改定に合わせ、同庁は改定案のパブリック・コメントを募った。FoE Japanはバイオマス燃料の調達によりさらなる天然林の伐採が生じないこと、また、持続可能性を担保する仕組みとなるよう、以下のコメントを送付した
- FIT/FIP制度により促進されるバイオマス発電において、燃料の調達が「天然林の減少・劣化および人権侵害に寄与しないこと」、また「天然林より生産された木質ペレットをFIT/FIPの対象にしないこと」、カスケード利用の徹底をガイドラインの趣旨として明記すること
- 由来証明やGHG排出量などの情報開示体制の確立、およびトレーサビリティの確保を規定すること
- 改定版のガイドラインを確認したところ、上記のコメントは反映されていない、かつ持続可能性が担保されるようなガイドラインとはほど遠い改定となった
経緯
日本では、再生可能エネルギーとしてみなされているバイオマス燃料を活用した発電を推進するうえで、木質バイオマス燃料の供給者が留意しなければならない事項が記載されているガイドラインが2つ存在しています。
今回のパブリック・コメントでは、2つのガイドラインを「木質バイオマス証明ガイドライン」として1つに統合かつ改定を行うために、実施されました。
これまで参照されていたガイドラインは2つあります。「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(2012年)です。FIT/FIP制度では、燃料の由来により調達価格が設定されています。同制度に対する消費者の信頼を確保するため、供給者が各バイオマス燃料の証明にあたって留意すべき事項がこのガイドラインに記載されています。間伐材由来の木質バイオマスや一般木質バイオマスの定義、それらの各調達段階における証明方法、ライフサイクルGHGに関する情報の収集・管理・伝達などについて示されています。
そして、2つ目は「木材・木質製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(2006年)です。このガイドラインでは木材・木材製品の供給者が合法性、持続可能性の証明にあたって留意すべき事項がまとめられていました。証明方法として、①森林認証制度を活用した方法、②団体認定による証明、③企業独自の取り組みによる証明――の3つがあげられ、輸入バイオマス燃料における持続可能性の証明にも活用されていました。
したがって、FIT/FIP制度に認定されたバイオマス発電事業で、木質バイオマス燃料による発電を行う場合は、事業者は上記2つのガイドラインを参照する必要性がありました。
このような背景のもと、2025年10月に開催された「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」の議論にて、輸入木質バイオマスの持続可能性基準等をFIT/FIP制度に反映することを目的に、2つのガイドラインの統合が経済産業省より提案され、2026年4月を目途に改定することが話し合われました。
この時の議論では、バイオマスの持続可能性に関して先進的な事例となっているEUの再生可能エネルギー指令の改正案(EU-REDIII)や欧州森林破壊防止規則(EUDR)をはじめとする国際的な規範や制度の現状、現行のガイドラインで認めている第三者認証制度における持続可能性基準の定義を踏まえ、日本における持続可能性基準の検討が行われました。
特に、持続可能性基準の「土地利用変化への配慮」の項目において、「一定時期以降に、原⽣林⼜は⾼い⽣物多様性保護価値を有する地域を開発していないこと」の明記を望む声があった一方で、国ごとで用語の定義が異なるため、さらなる議論の必要性が示唆されていました。さらに、持続可能性の証明方法として、現在、第三者認証制度の活用が多くみられていますが、認証の取得のみで持続可能性が担保されるわけではないことや改定後のガイドラインの実効性を確保する必要性があることが懸念点として挙がっていました。
このような様々な懸念点があがっていたものの、パブリック・コメントにかけられた際の林野庁からの改正案(概要)は非常におおまかなもので、以下の改正内容が掲載されていました。
- バイオマス証明書の記載事項に関する規定の整備
- 間伐材等由来の木質バイオマスであるか一般木質バイオマスであるか
- 当該木材等の販売先、主な樹種、数量等の基礎的な情報
- 証明書の発行者名
- 輸入木質バイオマスの持続可能性(合法性)の証明方法に関する規定の整備
- 森林認証制度:FSC、GGL、PEFC、SBP
- 企業による独自の取り組み:以下項目について自らが確認を行ったことを証明書に記載する
- 土地利用への配慮
- 温室効果ガス等の排出・汚染削減
- 生物多様性の保全
- 土地使用権の確保
- 児童労働・強制労働の排除
- 業務上の健康安全の確保
- 労働者の団結権及び団体交渉権の確保
- 法令順守(日本国内以外)
- サプライチェーン上の分別管理の担保
FoE Japanによるパブリック・コメント
上記改正案に基づき、FoE JapanはFIT/FIP制度により促進されるバイオマス発電において、「天然林の減少・劣化および人権侵害に寄与しないこと」、また「天然林より生産された木質ペレットをFIT/FIPの対象にしないこと」、およびカスケード利用の徹底をガイドラインの趣旨として明記することや、由来証明の徹底やGHGの算定を含めた情報開示の体制の確立を求めました。(詳細は以下)
パブリック・コメントの期間を経て、2026年4月1日に改定版のガイドラインが発表されました。残念ながら、上記のコメントは反映されず、持続可能性が担保されるようなガイドラインとはほど遠い内容となりました。
ガイドラインの前提について
意見内容:FIT/FIP制度により促進されるバイオマス発電において、「天然林の減少・劣化および人権侵害に寄与しないこと」、すなわち「天然林より生産された木質ペレットをFIT/FIPの対象にしないこと」をガイドラインの趣旨として明記いただきたい。
理由:現在COP26でのグラスゴー・リーダーズ宣言やCOP28での決定において、「2030年までに森林減少と劣化を食い止める」ことが明記されており、賛同している日本もその決定に沿った政策を設ける必要があるため。
また、FIT/FIP制度に基づき、日本国民から徴収している賦課金により支援されているバイオマス発電が、現在、北米やインドネシアなどの木質ペレットの生産国における、生物多様性や先住民族および地域コミュニティにとって生活に欠かすことができない天然林の伐採圧力になり、なおも推進されていることは問題であり、改善すべきである。
例えば、日本において木質ペレットの輸入量が2番目に多いカナダでは、British Colombia州の貴重な原生林が皆伐され、木質ペレットとなっている事例がNGOより報告されている。そして、その木質ペレットを生産・加工しているDrax社は2027年からカナダ産のペレットをイギリスへ供給するのを中止することを明言したことから、それらがすべて日本に輸入される可能性があり、憂慮している。
また、インドネシアの木質ペレットの輸入量がここ数年で急激に増加している日本(以下補足の表)は、インドネシアの天然林を含めた森林の伐採圧力に加担していることになる。政策やこのようなガイドラインにて森林減少・劣化を食い止めるという方針を実践に移す道筋を示す必要性がある。
証明ガイドライン 1.趣旨 2パラ
「木質バイオマスについては、間伐材等から大量に発生する一方で、既に相当部分が製材、合板、木質ボード、製紙用等に供されていることから、このような既存利用に影響を及ぼさないよう適切に配慮していく必要がある。」
意見内容:バイオマスのカスケード利用の原則をガイドラインの趣旨などに記載いただきたい。
理由:既存の木材利用との競合の可能性に配慮するだけでは、森林減少・劣化を食い止めるという方針を守るためには弱い文言であるため。たとえば、インドネシアでは紙・パルプ用の産業造林ではなく、エネルギー用産業造林の拡大を推進しており、天然林を単一の人工造林に転換している。このような傾向は木材を含む多様な森林利用がすべて木質ペレットに転換してしまうことを示唆している。バイオマスのカスケード利用に基づいた木材の商業利用とは矛盾する。
バイオマス合法性・持続可能性ガイドライン 2.定義 (2) 持続可能性
意見内容:持続可能性の定義を求める。
理由:「合法性」と「持続可能性」は異なり、カッコを用いた表記は誤りであり、また事業者の誤認を招く可能性があるため。
森林減少・劣化を食い止めることを求める国際的な流れの中でも、「持続可能性」の定義が重要である。
バイオマス証明書の記載事項に関する規定の整備
意見内容:輸入木質バイオマスについて、ペレットの原料である木材の伐採箇所に関する情報を開示するように求めていただきたい。
理由:
1. 輸入木質バイオマスについても由来証明を行うことで、天然林由来の木質ペレットの輸入を防ぐきっかけとなり、森林減少・劣化を食い止める方針に整合した仕組みづくりに貢献すると考えるため。
2. 現在国内の間伐材などによるバイオマス製品においては、伐採箇所を明記するように指定しているが、輸入木質バイオマスにおいては規定がないため。
国内の林業の活性化も目指し、FIT/FIP制度の対象としてバイオマスを含めているはずだが、このような要件の違いは輸入木質バイオマスの優遇につながる可能性があり、上記の目的に沿った要件ではないと考える。
輸入木質バイオマス持続可能性(合法性)の証明方法に関する規定の整備
「森林認証制度に基づく証明を行う場合は、次の認証制度で認められた木材である旨を示す書類の写しを添付する」
意見内容(1):
1. 天然林の減少・劣化を防ぐという観点から認証だけでは不十分であるため、前述の伐採元の情報開示などと組み合わせるべきである。
2. 現在、森林認証材を一部だけ使い、その他大部分は非認証材であるのにもかかわらず、「認証材」と称して木質ペレットを販売するなど、不適切な対応が横行している。このような木質ペレットは持続可能性が担保された「認証材」として認められないことを明記すべきである。
理由(1):
1. 認証制度の信頼性は、制度・国・地域により異なり、必ずしも天然林の減少・劣化を防ぐことや持続可能性を担保しない。
2. これまで、ベトナム産の木質ペレットにおいては、FSC認証の偽称問題が発覚し、大量の非認証材があたかも「認証材」として扱われていた事実が露呈した。本来、「認証製品」は100%認証材、またはラベル使用要件である70%以上が認証材であることが望ましいが、現在、1%のみ認証材で99%は非認証材で構成された木質ペレットが流通しているのが現状である。「認証材」の大部分の材が森林減少・劣化の原因になっている可能性は否定できず、持続可能性が担保されていない。したがって、発電事業者の責任において、適切なトレーサビリティ(注1)の確認および情報開示を義務付けるべきである。
意見内容(2):バイオマス発電所を運営している企業に対する由来証明を含めたトレーサビリティの確保を徹底するような文言の追加をしていただきたい。
理由(2):現在森林認証、団体認定、独自の取り組みのいずれかにより、持続可能性(合法性)を担保できるとしているが、いずれの方法も持続可能性を担保する制度としては欠陥があるため。
持続可能性を担保するためには、バイオマス燃料の燃料となる木材の伐採元を示すか由来証明を徹底するとともに、認証に加えた発電事業者へのトレーサビリティの確保と情報開示をガイドラインに記載すべきである
「個別企業等の独自の取組により由来を証明する場合は、持続可能性(合法性)に関する~(中略)~を証明書に記載する。当該証明書の発行に際しては、確認内容について第三者の監査を受け、その旨を公表することとする。」
意見内容(1):
1. 「個別企業等の独自の取組」だけでは内容が企業に任されており、持続可能性を担保するには十分ではない。どのような取組が十分とされるのか、何を確認すべきなのか、具体的にガイドライン上に明記すべきである。
2. 「第三者の監査を受けたこと」のみを公開するのではなく、何をもって持続可能性を確認したのか、その根拠を公開すべきである。
理由(1):
「個別企業等の独自の取組」だけでは企業の自己申告であり、持続可能性は担保されない。「第三者の監査」も業界団体による監査など、甘いものになりかねない。どのような取組が求められるのか具体的に書かない限り、公正な制度運用における大きな抜け穴になりかねない。
意見内容(2):
情報公開の履行を確認するための体制を確立するべき。また、第三者がこうした情報にアクセスすることを容易とするため、経済産業省のFIT認定の事業リストに公開場所を記すなど、制度の実効性を担保すべきである。
理由(2):
事業者がどこに情報を公開しているのか定かではなく、情報公開の履行の確認ができない。例えば、発電事業者のホームページが存在しない場合や、発電事業者が複数の企業による合同会社である場合には代表となる企業のホームページ上で公開されていたりと、第三者による確認が困難であり、情報公開の意味を為さない上に、経済産業省が情報公開の履行状況を確認できているのかも不明である。
また、現在定められている公開すべき情報(第三者認証スキームの名称、使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号(注2))が一箇所に公開されているとは限らず、全ての情報が公開されているか把握が難しい。一部の情報しか公開されていない事業者が多数ある。このような状況を把握しながらも長らく改善されないことは、ガイドラインの不遵守を国が容認しているに等しく、ガイドラインの実効性が問われることになる。
「(2) 個別企業等の独自の取組により~(後略)~・温室効果ガス等の排出・汚染削減」
意見内容:
1. バイオマス発電事業者にて国内および輸入木質バイオマスにおける生産、加工、輸送、燃焼におけるGHGの算定を求めるべきである。
2. ライフサイクルGHGの算定結果は、その根拠とともに第三者が検証可能なように公開すべきである。
理由:
1. 現在、燃焼段階におけるGHGの算定はされていないが、実際は燃焼段階でGHGは発生しているため、カウントすべきである。燃焼段階でのGHGのカウントを行わなくてもよいとする理由として、燃料生産による森林減少・劣化による炭素貯蔵減少がカウントされていれば二重計上になるからであるという説明があるが、現在はどちらもカウントされていない。また、燃焼段階でのGHGのカウントの方が、より容易である。
2. パブリックレビューを可能にすべきため。
最後に、今回提示いただいた改正案の概要は、曖昧であり、具体性に欠ける。原案そのものを再度、パブリックコメントにかけていただきたい。
- 追跡可能性。木材製品においては、どこで伐採され、どのように加工され、ここにたどり着いたのかという情報を正確に把握できること。
- 主に第三者認証機関が発行する認証コードのこと。内年度の燃料使用量や第三者認証スキーム名とともに、自社ウェブサイトなどで情報を開示することが事業計画策定ガイドラインで示されている。
補足:


(単位:MT) 財務省の貿易統計に基づきFoE Japanにて作成