COP30開幕直前!注目すべきポイントは

気候変動

11月10日、ブラジルのベレンで国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が開幕しました。今回のCOPが持つ意味合い、そして注目すべきポイントについてまとめます。

COP30の持つ意味

COP(コップ)とは、締約国会議(Conference of the Parties)の略で、国際条約の加盟国が集まって会議を行い様々な議論や意思決定を行う場所のことです。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のCOPは、198の国・機関が参加する気候変動に関する最大の国際会議で、毎年開催されています。

今回の開催地ベレンは、アマゾン川の河口に位置する都市です。世界最大の熱帯雨林が拡がるアマゾンはCO2を大量に吸収してくれるため「地球の肺」と呼ばれますが、近年は違法伐採や火災などによって消失が急激に進んでおり、この地でCOPが開催されることはとても象徴的です。議長国であるブラジルは、会期中のみ首都をブラジリアからベレンに一時的に移転することを決定し、今回のCOPの重要性を強調しています。

一方で、歴史的に最も温室効果ガスを排出してきた国であるアメリカはパリ協定離脱を表明するなど、国際協調が脅かされていることは明らかです。「パリ協定」採択から10年の節目を迎えた今年、各国がどこまで協調し、気候変動対策を前進させられるかが問われます。

注目ポイント

  1. 2035年の温室効果ガス削減目標をどこまで高められるか
  2. 途上国への資金支援を具体化できるか
  3. 森林保全・森林破壊防止の議論が進むか
  4. 市民社会はどこまで声を届けられるか

1. 2035年の温室効果ガス削減目標をどこまで高められるか

2015年のCOP21で採択された「パリ協定」において地球の平均気温の上昇幅を産業革命前とくらべ1.5℃に抑える目標が掲げられ、その実現のために、各国が温室効果ガスの削減目標を含む国別目標(NDC)を5年ごとに提出・更新することが約束されました。

各国が初回のNDCを提出したのは2020年頃で、2023年のCOP28では、実際にどれだけ削減が進んでいるのかの進捗確認(=グローバル ストックテイク)が行われました。その結果、残念ながら各国の削減計画では「1.5℃目標」達成に必要な道筋とは隔たりがあることがわかり、主に以下の内容が合意されました。(詳しくはこちら:COP28総括

  • 2030年までの重要な10年間で、化石燃料からの脱却に向けた行動を加速させる
  • 2030年までに世界の再生可能エネルギー設備容量を3倍に拡大する
  • 2030年までにエネルギー効率の改善率を倍増する
  • 2030年までに世界のGHG排出量を2019年比で43%、2035年までに60%削減する必要がある

これを受けて、各国は2035年の削減目標を含む新たなNDCを2025年2月までに提出することとなりました。しかし、期限までに提出した国はわずかで、2025年9月時点でも3割程度しか提出されていない状況です。遅ればせながらCOP30期間中には各国のNDCが出揃う見通しとなっており、全てをまとめた時にどこまで「1.5℃目標」に近づけられるかが大きな焦点です。

また、COP28で合意された目標についても2030年の期限が近づいており、達成に向けた具体的な議論、「実行」のフェーズに進めるのかという点も注目されています。

国連環境計画(UNEP)の「排出ギャップレポート2025」によれば、2023年とくらべ2024年は2.3%排出が増加していること、各国がNDCを完全に実施した場合、今世紀の地球温暖化予測値は2.3~2.5℃で、「1.5℃」に抑える目標には程遠い状態と指摘しています。2024年度に発表された「排出ギャップレポート」では2.6~2.8℃としていたので前進があるようにも見えますが、米国がパリ協定から脱退したこともあり、実質何の進展もないとも指摘しています。

歴史的に排出の大きい先進国が、野心的な削減目標を設定し実行することが重要です。日本政府は新しいNDCを提出していますが、シンクタンク「Climate Action Tracker」によると、1.5℃に整合させるためには、日本は2030年に66%以上、2035年に81%以上の削減目標が必要で、産業革命以降の歴史的責任を加味すればそれ以上であるにもかかわらず、2035年度の温室効果ガス削減目標は、2013年度比で60%にとどまっています。火力を維持する方針も変わっておらず、日本政府に対し対策の強化と実行が求められます。(詳しくはこちら:FoE Japan声明「声明:第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画、GX2040ビジョンの閣議決定に抗議」)

2. 途上国への資金支援を具体化できるか

Credit: Bianka Csenki / The Artivist Network

前回のCOP29では、途上国が気候変動対策を進めるための資金支援について大きく議論されました。途上国は先進国よりも温室効果ガスの排出量が少ないにも関わらず、気候変動の悪影響をより大きく受けることや、先進国の歴史的な排出責任を踏まえ、途上国側は年間1兆ドル以上の支援を求めました。一方、先進国は、具体的な数値目標の提案に後ろ向きで、民間資金の動員や開発銀行の改革の重要性を主張していました。予定していた会期後も延長して議論が続けられた結果、以下の内容が合意されました。

  • 2035年までに先進国が年間3,000億ドル(約46兆円)を途上国に支援する
  • 2035年までに官民合わせて少なくとも年間1兆3,000億ドルを拠出するよう呼びかける

これを受けて、今回のCOP30では、1兆3,000億ドルへの投資拡大に向けたロードマップが示される予定になっています。具体的な資金確保の見通しをつけられるかが注目されています。

3. 森林保全推進と森林破壊防止の議論が進むか

冒頭でも紹介した通り、COP30がベレンというシンボリックな場所で開催されることもあり、今回のCOPは「ネイチャーCOP」になると言われています。森林保全が大きなテーマであり、議長国ブラジルは、森林を守るための基金「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(国際熱帯雨林保護基金、通称TFFF)」を立ち上げました。

国際熱帯雨林保護基金(TFFF)が目指す内容

  • 各国政府が拠出する公的資金を主とした250億米ドルを呼び水に、民間資金を引き込んで1000億米ドルの追加投資を得る
  • この基金の運用益で、熱帯林を保全することを約束した国々のために年間40億米ドルの資金を提供する
  • 森林を保全・回復した面積に応じて、1ヘクタールあたり4米ドルを基準に資金が支給される
  • 森林の保全・回復状況は衛星画像によってモニタリングされ、もし森林の破壊や劣化が生じた場合は、支払いが減額または停止される可能性もある
  • 受け取った資金の20%は、先住民族と地域社会へ直接還元する

森林破壊とその要因への対処が必要とされている中、FoEインターナショナルは、この基金が原因に対処し、先住民族と地域社会を森林保護の実現における重要な担い手として認識する表明をしていることを一定程度理解しつつも、森林破壊の構造的かつ根本的な原因にまで踏み込めていないと指摘する分析ペーパーを発表しました。特に、基金が「自然の金融化(自然に金融価値を付与し、売買できるようにするプロセス)」を促進・深化させ、利益のために民間企業や金融機関が途上国の森林に参入することに懸念を表明しています。分析ペーパーは、森林を炭素量や金銭で評価するのではなく、生態系そのものの本質的な価値を尊重すること、地域コミュニティ主導の保全を推進すること、さらに、土地への権利の保証や権利回復など構造的な変革を訴えています。

また、議長国のブラジル、日本、イタリアがリードし、COP開幕前のリーダーズサミットの間に、2035年までに「持続可能」燃料の使用を4倍以上に増やすことを目指す宣言を表明しました。宣言では水素、バイオガス、バイオ燃料、e-燃料が触れられています。

この「持続可能」燃料4倍には、大きな懸念がつきまといます。

バイオ燃料について見てみましょう。バイオ燃料はカーボンニュートラルとされていますが、燃料を「燃焼」すればその時点でCO2の発生を伴います。発生したCO2が、森林などが回復する過程で吸収されるまでには、数十年以上の長い時間を要します。

日本では輸入バイオマス燃料(木質ペレット等)を使った大型バイオマス発電事業が相次いでいます。しかし燃料生産の過程で、天然林の伐採や天然林から人工林への転換が生じ、この時点で蓄えられていた炭素量は減少します。また生物多様性や住民の自然資源や土地利用に悪影響を与えるなど様々な課題・懸念があります。(詳しくはこちら:「バイオマス発電の7つの不都合な真実」)

耕作可能な土地が有限である以上、たとえ直接的に森林を伐採しなかったとしても、エネルギー用の単一の作物の栽培のために大面積の土地を大企業が占有することにより、その他の作物のための土地と競合します。企業や政府は「森林を伐採していない。荒廃地を利用している」というような表現をすることがありますが、実際には地元のコミュニティの使っている土地や森林に影響を及ぼしたり、セラード(ブラジル中西部の高原に位置するサバンナ地帯)などの自然生態系を広範囲にプランテーションに転換することはよくあります。この過程で、土壌中や植生の炭素蓄積が減少し、CO2が大気中に発生することもあります。

また、従来の化石燃料を燃焼させるシステムの延命につながることも見逃せません。

4. 市民社会はどこまで声を届けられるか

ベレンに集まったFoEインターナショナルのメンバーたち

COP30は、単なる国際会議ではなく、グローバルな社会運動が結集する場でもあります。前回のCOP29が開催されたアゼルバイジャンやCOP28が開催されたドバイ等は、アクティビズムや抗議活動が厳しく規制されており、デモや集会などの開催が難しかった側面もありました。今回のCOPでは、会場外でのアクションや気候マーチなどが計画されており、民主的空間が取り戻され、議場の外での市民たちの活発なアクションによって、気候変動対策を加速するための後押しができるという期待が高まっています。

COP30と同時並行で開催される「ピープルズ・サミット」は、草の根レベルの多様な人々が参加し、公式会議を補完する役割を担っています。市民、先住民、ユース、NGO、科学者などが集まり、気候変動に関する問題を議論し、政策提言などを行うことで、本会議へプレッシャーを与えることを目指します。

また、11月15日は「グローバル・アクション・デー」として、世界中でのアクションが呼びかけられています。現地ベレンでは、ピープルズ・サミットの一環として、気候正義とシステムチェンジを求めるデモが行われる見込みです。日本国内でも以下のようなアクションが予定されています。1人でも多くの人々が声をあげることがパワーになりますので、ぜひご都合のつく方はご参加ください!

350.org Japan主催/11/15(土) 10:00-10:30 国会議事堂前アクション

Fridays For Future Tokyo主催/11/17(月) 18:00-20:00 オンラインイベント


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(轟木典子)

 

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