【プレスリリース】米国の輸出入銀行がモザンビークLNGへの47億米ドルの融資を承認
トランプ大統領が新たに任命した米国輸出入銀行の理事会が、深刻な人権侵害が報告されているモザンビークLNG事業への融資を承認
2025年3月14日金曜日ートランプ政権下で新たに選出された米国輸出入銀行(US EXIM)の理事会は、フランスの大手企業トタル・エナジーズが開発を進めるモザンビークLNG化石ガス事業への47億米ドルの融資を承認しました[1]。これを受け国際的なNGOは、モザンビークLNGへ資金提供する欧州及びアジアの金融機関に対し、米国による有害かつ無責任な行動に追随せず、人権侵害を巡る多数の申し立てを伴い、かつ、気候変動を大きく加速させるモザンビークLNG事業の再開に反対するよう呼びかけています。
原文はこちら(英語)
トタル・エナジーズのアフンギガス田に近接するパルマ市を壊滅させた大規模な反乱軍の攻撃を受け、2021年4月からモザンビークLNG事業に「不可抗力宣言」が発出されたままです[2]。それにも関わらず、US EXIMは融資を決定しました。市民社会団体やメディアによる多数の報告では、事業を警備するためトタル・エナジーズが支援していたモザンビークの治安部隊によって、深刻な人権侵害行為が行われていたとの疑惑が指摘されており、また人権侵害についてはトタル・エナジーズも認識していたことがわかっています[3]。この事業により影響を受けるコミュニティの何百もの家族は、自分たちの土地を利用できるか、新しい畑を始めることができるか、補償金を受け取れるかなどが依然として不透明であるため、企業の門の前で抗議活動を行っています。昨日も、キトゥンダ移住村の住民が、トタル・エナジーズが設定した会議に割り込み抗議しました。さらにモザンビークでは現在、民主主義のプロセスが弱まり、市民の活動空間が縮小し、選挙後の抗議活動の波は国家による暴力に直面しており、そのような中で事業が行われることになります[4]。
トタル・エナジーズは、何か月にもわたり米国政府に積極的にロビー活動を行ってきました。2020年のトランプ政権第1期中に、モザンビークLNG事業への巨額の資金支援が決まりましたが、バイデン政権の下ではその支払いに承認を得ることができていませんでした[5]。本日の米国輸出入銀行の決定により、ドナルド・トランプ米政権と、ジョルジャ・メローニ伊政府[6]の2政府がモザンビークLNGにゴーサインを出したことになります。事業への支援とトタル・エナジーズの事業そのものに極右権力の印がついたといえます。
2020年にモザンビークLNGに149億米ドルのプロジェクト融資[7]を行った全ての公的及び民間金融機関は、4年間の支援中断の後、事業の再開と融資及び融資保証の解除を承認するよう求められています。米国輸出入銀行の決定は、オランダや英国の最近の動向とは、全く対照的です。2025年3月4日、オランダ政府は、モザンビークLNG事業に関連してモザンビークの治安部隊が行ったとされる人権侵害について、独立調査を実施すると発表しました[8]。一方、英国輸出金融公社(UKEF)は、事業の支援継続の契約上の義務に関して法的助言を求めており、国際的な金融機関の間で懸念が高まっていることを示しています[9]。フランスの銀行クレディ・アグリコルやソシエテ・ジェネラルなど、いくつかの金融機関は沈黙を貫いています[10]。
国際NGOは、モザンビークLNGの他の融資者、特に欧州とアジアの銀行や政府に対し、トランプ大統領とメローニ首相に追随せず、この大変問題の多い事業の再開に反対するよう呼びかけています。また、2021年7月から9月の間にトタル・エナジーズのアフンギガス施設付近で、施設の警備にあたっていたとされる公安部隊によって行われた可能性のある民間人虐殺について、国連機関が主導する独立した国際調査の要請を支持するよう金融機関に求めています[11]。
Justiça Ambiental! / Friends of the Earth MozambiqueのテクニカルコーディネーターであるDaniel Ribiero氏の声明:
「モザンビークLNG事業で起きている人権侵害、武力紛争、環境への影響、そしてリスクの高い経済予測は、大方の賢明な投資家を事業から遠ざけるはずでした。フランスの企業がモザンビークで事業を行うために、47億米ドルの融資を承認するという米国輸出入銀行の決定は意味をなしません。特にトランプ大統領は癇癪を起こし、最近モザンビークの医療部門への数百万ドルの援助をキャンセルしました。これは彼の政権の本当の狙い、つまり人々から資金と資源を奪い、裕福な多国籍企業に渡すことを露呈しています。」
Friends of the Earth USの経済政策担当副事務局長であるKate DeAngelis氏の声明:
「トランプ政権は人命救助や災害救援のための対外援助を削減する一方で、米国の納税者からの約50億米ドルの税金を化石燃料産業に回しています。これは政府による税金の無駄遣いの極みであり、納税者のお金の濫用にあたります。政府効率化省(DOGE)は、必要なサービスを提供する連邦政府のほぼ全てにチェーンソーを振りかざしており、億万長者や外国のガス会社に資金が流れる限り、対外援助を提供することに微塵も抵抗も感じていないことを示しています。」
ReCommonの金融・気候キャンペーン担当であるSimone Ogno氏の声明:
「イタリアのイタリア外国貿易保険(SACE)は、モザンビークLNGへの資金援助を承認した最初の輸出信用機関ですが、それは事業に関連する社会的及び環境的影響に関する新しい評価が検討されないまま行われました。米国輸出入銀行も本日、同じことをしています。これらの選択から、モザンビークLNGに直接的、間接的に関わる人権侵害を完全に無視している、ジョルジャ・メローニ伊首相の政府と、ドナルド・トランプ米大統領の政府の密接な関係が見て取れます。」
Milieudefensie / Friends of the Earth Netherlandsの公正な移行担当官であるIsabelle Geuskens氏の声明:
「オランダの金融支援は保留されたままであり、ハイネン大臣はモザンビーク軍やその他の治安部隊による人権侵害と、事業主であるトタル・エナジーズとの関係について調査することを約束しています。オランダは、トタル・エナジーズや米国のような輸出信用機関からの圧力に対して、毅然とした態度を取ることが重要です。このような混乱の時代において、良い統治とは公的財政を責任と透明性を持って行うことであり、汚いビジネスよりも人権を優先するという模範を示すことが鍵となります。」
Friends of the Earth Franceの民間金融キャンペイナーであるLorette Philippot氏の声明:
「メッセージは明確です。トタル・エナジーズは、気候の混乱と民間人に対する残虐行為の恐ろしい疑惑の真っ只中にあるモザンビークLNG事業を支援するために、イタリアや米国の極右政権を頼りにできています。環境と社会に責任ある姿勢を示すために絶えず努力を重ねているフランスの銀行、クレディ・アグリコルとソシエテ・ジェネラルは、もはや共謀して沈黙を守ることはできません。両行は、トランプとメローニの先導に従うことを拒否し、モザンビークLNGの再開に反対しなければなりません。」
Friends of the Earth Japanの副事務局長である深草亜悠美氏の声明:
「日本の輸出信用機関である国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)は、双方の支援額を合わせると、モザンビークLNG事業に対する最大の公的融資機関になります。これらの機関は融資に対して、透明性と説明責任を持つべきですが、事業のデュ―デリジェンスをどのように実施しているかについて、明確な説明をしていません。この事業は地域コミュニティに害を及ぼし、人権侵害も報告されています。日本の輸出信用機関は、独立した調査を求める声を支持し、融資を進めるべきではありません。」
Oil Change Internationalの米国キャンペーンマネージャーであるCollin Rees氏の声明:
「モザンビークLNGは環境問題と人権にとって悪夢です。トランプ政権は、トタル・エナジーズの命にかかわるような事業への融資を承認することで、深刻な人権侵害につながる化石燃料事業に、納税者から集めた数十億ドルの資金を投入すると同時に、連邦政府の雇用と労働者世帯のために不可欠な公的サービスを削減しています。公的資金は健全な社会と持続可能な未来を支えるべきであり、汚染企業や人権侵害者への施し物であってはなりません。しかし、英国にはまだ別の道を選ぶ選択肢があります。キア・スターマー英首相は、明確な選択に直面しています。トランプ大統領や他の極右政権に加わり、英国民を含む数百人の悲劇的な死者をすでに出しているこの悲惨な事業に、納税者の資金を提供するのか、それとも勇気を出して、この悪夢を支援するという前英国政府の愚かな決定を破るのか、という選択肢です。」
連絡先
- Lorette Philippot – Friends of the Earth France: lorette.philippot@amisdelaterre.org; +33640188284
- Simone Ogno – ReCommmon: simoneogno@recommon.org; +393491303455
- Daniel Ribeiro – Justiça Ambiental!: daniel.ja.mz@gmail.com; +258 86 620 5608
- Kate DeAngelis – Friends of the Earth US: kdeangelis@foe.org; +12023204742
- Adam McGibbon – Oil Change International: +447809368481
注釈
[1] Reuters, US approves $5 billion loan to TotalEnergies for Mozambique gas project, March 2025.
https://www.reuters.com/business/energy/us-frees-up-almost-47-billion-loan-totalenergies-mozambique-gas-project-ft-2025-03-13/
[2] Alex Perry, Palma Massacre, June 2023. https://www.alex-perry.com/palma-massacre/
[3] Alex Perry, Politico, All must be beheaded: Allegations of atrocities at French energy giant’s African stronghold, September 2024.
https://www.politico.eu/article/totalenergies-mozambique-patrick-pouyanne-atrocites-afungi-palma-cabo-delgado-al-shabab-isis/
Le Monde, TotalEnergies savait que des exactions étaient commises sur son site gazier au Mozambique, November 2024.
https://www.lemonde.fr/afrique/article/2024/11/24/violences-arrestations-disparitions-totalenergies-savait-que-des-exactions-etaient-commises-sur-son-site-gazier-au-mozambique_6412216_3212.html
SourceMaterials, Don’t look back or we’ll shoot, November 2024.
https://www.source-material.org/mozambique-total-lng-military-human-rights/
Le Monde, Comment des soldats payés par TotalEnergies ont séquestré des civils au Mozambique, January 2025. https://www.lemonde.fr/afrique/video/2025/01/28/comment-des-soldats-payes-par-totalenergies-ont-sequestre-des-civils-au-mozambique_6520247_3212.html
[4] Platform DECIDE – Platform for Democracy, Citizenship, Rights and Studies.
https://pdecide.org/blog/preliminary-report-on-the-post-electoral-context-in-mozambique-3-months
[5] Financial Times, TotalEnergies failed to convince Joe Biden’s team to back $20bn African project, January 2025. https://www.ft.com/content/025849c8-a928-4dbc-9f25-b5c8c9caf1cd
[6] ReCommon, The Italian government confirms: SACE and Cassa Depositi e Prestiti will finance Mozambique LNG, January 2025.
https://www.recommon.org/en/the-italian-government-confirms-sace-and-cassa-depositi-e-prestiti-will-finance-mozambique-lng/
[7] Friends of the Earth France, Summary of financial institutions’ involvement in the Mozambique LNG project, February 2024.
https://www.amisdelaterre.org/wp-content/uploads/2024/07/summary—-financial-institutions-involvement-in-the-mozambique-lng-gas-project-2.pdf
[8] https://www.tweedekamer.nl/kamerstukken/brieven_regering/detail?id=2025Z03849&did=2025D08864
[9] Financial Times, UK takes legal advice over pulling out of $20bn Total LNG project in Mozambique, January 2025. https://www.ft.com/content/025849c8-a928-4dbc-9f25-b5c8c9caf1cd
[10] Justiça Ambiental! / Friends of the Earth Mozambique, Friends of the Earth France, Reclaim Finance, BankTrack, Urgewald, Friends of the Earth Japan, ReCommon, Milieudefensie / Friends of the Earth Netherlands, Friends of the Earth Europe, Friends of the Earth United States, Mozambique LNG: financial institutions so far refrain from taking a stance on allegations of severe human rights violations associated with the project, January 2025.
https://www.amisdelaterre.org/communique-presse/mozambique-lng-financial-institutions-so-far-refrain-from-taking-a-stance-on-allegations-of-severe-human-rights-violations-associated-with-the-project/
[11] Justiça Ambiental! / Friends of the Earth Mozambique, Friends of the Earth France, Reclaim Finance, BankTrack, Friends of the Earth Japan, ReCommon, Milieudefensie / Friends of the Earth Netherlands, Friends of the Earth Europe, International NGOs call for immediate official investigation into reports of series of atrocities committed by Mozambican security forces near TotalEnergies’ Mozambique LNG premises, September 2024.
https://stopmozgas.org/featured/call-for-investigation-atrocities-near-totalenergies-mozambiquelng/
モザンビーク及び世界各地の市民社会団体は、2021年7月から9月にかけて、ガス施設の警備を担当していたと主張する公安部隊が、トタル・エナジーズのアフンギ施設付近で行ったとされる民間人虐殺の容疑に関する緊急の独立国際調査の呼びかけに、金融機関が賛同するよう特に求めています。また、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)やアフリカ人権委員会などの国際的または地域的な政府間人権メカニズムによって調査が行われる必要性を強調しています。さらに、全ての事実と責任が調査され、そのような調査の結果が公表されるまで、事業への支援の約束を撤回し、不可抗力が解除された場合(事業再開に必要な法的措置)は支援を差し控えるよう金融機関に強く求めています。
以下団体によるプレスリリース:
Justiça Ambiental! / Friends of the Earth Mozambique
Les Amis de la Terre France / Friends of the Earth France
Reclaim Finance
Oil Change International
Urgewald
Friends of the Earth Japan
ReCommon
Milieudefensie / Friends of the Earth Netherlands
Friends of the Earth United States