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G20による化石燃料支援ーFoEUSとオイルチェンジインターナショナルによる新レポート
日本は化石燃料事業に巨額の支援を行いクリーンエネルギーへの移行を阻止
- 2020年から2022年にかけて、G20諸国の国際金融機関と国際開発金融機関による化石燃料事業への支援額は、年間平均で少なくとも470億ドルにおよび、これは同時期のクリーンエネルギーへの支援の約1.4倍相当です。
- 日本(69億ドル)は世界第三位の化石燃料支援国でした。カナダと韓国と合わせたこの3ヵ国による支援が2020年から2022年までのG20諸国による化石燃料投融資全体の64%を占めていました。
- 日本と韓国は特に大きな後れを取っています。日本はG7加盟国として、化石燃料への国際公的支援を廃止すると公約¹しましたが、現在も日本の政策は化石燃料プロジェクトへの融資を継続するための抜け穴を残しています²。さらに、日本は炭素回収貯留(CCS)を通じ化石燃料支援を増やすことも進めています³。
- G20諸国と国際開発金融機関のエネルギー向け国際支援全体のわずか8%が低所得国向けで、そのうちの71%は化石燃料向けでした。エネルギーアクセス改善のために化石燃料支援が頻繁に正当化されているにも関わらず、事実上、エネルギーへのアクセスは提供されていません。
- 日本は、2020年から2022年の間、化石燃料の上流事業に対し年間平均25億ドルの支援を行いました。これは上流に対する支援の全体の半分近く(49%)に当たり、日本は上流プロジェクトに対する世界最大の支援国でした。
2024年4月9日ーG20諸国と国際開発金融機関(MDB)によるクリーンエネルギー向けの国際投融資が2022年に単年で最大の増加を見せたにも関わらず、本日発表された報告書では日本を含む一握りの国々が化石燃料への巨額の資金支援を続け、再生可能エネルギーへの公正な移行を妨害していることが明らかになりました。
オイル・チェンジ・インターナショナルとFoEUSの新しい報告書は、エネルギー分野における国際金融における憂慮すべき格差を浮き彫りにしています。2020年から2022年までの間、G20と国際開発金融機関による化石燃料事業に対する支援は1,420億ドルもの額におよび、一方でクリーンエネルギー関連事業への支援額は1,040億ドルにとどまりました。日本はクリーンエネルギー事業に年間平均23億ドルを提供しているのに対して、化石燃料には69億ドルを提供していました。
国際的な気候変動協定であるパリ協定の、温暖化を1.5℃に抑える目標を達成するためには、すでに開発されている化石燃料埋蔵量の60%を地中に留めておく必要があります。これらの制限を考慮し、国際エネルギー機関(IEA)は、官民関わらず、2021年時点で既にコミットされている分以上に新しい石油・ガス田、LNGに投資をするべきではないことを明確にしています。
この調査では、G20の最も裕福な国々が化石燃料への継続的な投融資に対し主要な責任を負っており、日本は最も責任重い国の1つとして名前が挙げられています。化石燃料への支援は、2017年から2019年の680億ドルから2020年から2022年の470億ドルに減少しました。しかし、仮に日本が化石燃料への国際支援を行わないというG7の公約を破り続ければ、この進行が脅かされる可能性があります。日本は政策の抜け穴を利用し、化石燃料への融資を継続しています。日本政府はつい先月も、オーストラリアのガス田とメキシコのサン・ルイス・ポトシとサラマンカのガス火力発電事業への約10億ドルの融資を承認しました。
報告書はまた、化石燃料に対する資金支援からの脱却のモメンタムが来ていることも強調しています。石炭に対する国際公的資金はほぼなくなる方向に動いています。ただし、日本は年間平均6億6,500万ドル分を石炭事業に提供しています。G20加盟国中7ヵ国が、化石燃料への国際公的支援を修了する「クリーンエネルギー移行パートナーシップ(CEPT)」に署名しています。G7はCETPとほぼ同様の公約を掲げてますが、日本はまだ署名をしていません。
詳しくはレポートの本文(英語)をご覧ください。
レポートの発表を受け、各団体のメンバーは以下のコメントを発表しました:
「化石燃料プロジェクトへの国際公的融資をやめるというG7の公約にも関わらず、日本は新たな化石インフラへの融資を続けており、今もまだいくつかのプロジェクトが進行中です。例えば日本貿易保険(NEXI)は現在、地元の漁業者がLNG開発の影響を受け、また気候変動によって激化したハリケーンの被害も受けている地域において、キャメロンLNGターミナル拡張事業に対し支援をすることを検討しています。このプロジェクトは地元の住民にさらなる負担をもたらし、気候危機を悪化させます。日本は化石インフラへの融資や、アンモニアやCCSの混焼といった誤った解決策の推進もやめるべきです。」ー深草亜悠美、FoE Japan、気候変動とエネルギー担当・事務局次長
「日本と米国は世界で最も遅れている国であることを彼ら自身が証明しています。これら両国は気候変動への取り組みにも関わらず、世界中で化石燃料インフラに何十億ドルも注ぎ続けており、OECDを含めあらゆる場面で進捗を妨げています。残念ながら、日本と米国はこの破壊的な化石燃料への融資を2023年、2024年に入っても継続しており、今後も続く可能性が高いです。岸田首相は米国にバイデン大統領を訪問する予定であり、両首脳はどのように公約を果たし、国際的に化石燃料への支援をやめるかについて話し合うべきです。」ーケイト・デアンジェリス、FoEUS、国際金融プログラムシニアマネージャー
「日本はアジア全域、そして世界中で再生可能エネルギーへの移行を遅れさせています。化石燃料融資をやめるというG7の公約にも関わらず、国際協力銀行(JBIC)のような公的金融機関は、オーストラリアのスカボロガス田やメキシコのガス発電所など、新たな化石燃料プロジェクトを支援し続けています。JBICは現在、バタンガス市におけるフィリピン初のLNG輸入ターミナルの開発において、社会的・環境的安全措置に従わなかったという主張に対して調査をしています。日本は金銭的な利益よりも人々や地球環境を優先し、財政支援を化石燃料から再生可能エネルギーに転換していく必要があります。」ー有馬牧子、オイル・チェンジ・インターナショナル、シニア・ファイナンス・キャンペーナー
「豊かな国々が足を引っぱり、世界的に公正なエネルギー移行に資金を提供する余裕がないと主張し続ける一方で、カナダ、韓国、日本、米国のような国々は、気候を破壊する化石燃料への公的資金には事欠かないようです。気候危機の資金源となっている富裕国の責任を追及し続け、このような国々に対して、化石燃料の段階的廃止に向けて最初に、そして最も早く動くこと、化石燃料への財政支援を停止すること、そして世界的に公正なエネルギー移行、損失と損害、適応のための資金提供における公正な分担を要求していかなければなりません。」ークレア・オマニク、オイル・チェンジ・インターナショナル、パブリック・ファイナンス・アナリスト
注釈:
- 「クリーンエネルギー移行パートナーシップ(CETP)」は2021年にグラスゴーで行われた第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で発表されました。41の署名国(リストはこちら)は、「2022年末までに、排出対策の講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門に対する新たな直接公的支援を終了する」こと、その代わりに「クリーンエネルギーへの移行に向けた支援を全面的に優先する」ことを目指しています。これらの取り組みの実施状況については、トラッカーをご覧ください。
- IPCCのAR6報告書は、化石燃料に対する公的資金提供がパリ協定の目標達成と「著しく乖離している」と強調していますが、もしこの流れを変えることができれば、緩和策に対する資金ギャップを埋め、排出削減と公正な移行を可能にするうえで重要な役割を果たすことができるとしています。エネルギーシステムの形成において国際公的金融が果たす役割の詳細については、このオイル・チェンジ・インターナショナルのブリーフィングをご覧ください。
- ケンブリッジ大学のホルヘ・E・ビニュアレス教授とマトリックス・チェンバーズのケイト・クック弁護士は法的視点から、化石燃料インフラへの投融資を続ける政府や公的金融機関は、潜在的に気候訴訟のリスクにさらされていると主張しています。
問い合わせ先:
深草亜悠美 fukakusa@foejapan.org / +818069170794
有馬牧子 makiko@priceofoil.org / +818035342812
Nicole Rodel nicole@priceofoil.org / +27842570627 (GMT+2)
Shaye Skiff kskiff@foe.org, +12703004980