インドネシア・チレボン石炭火力2号機:住民が意見書提出「JBICは融資停止と審査役調査結果の再検証を」
丸紅、JERA(東京電力と中部電力の合弁)が出資し、国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)や3メガ銀行が融資して進められてきたインドネシア・チレボン石炭火力発電所2号機(100万キロワット)については、2017年5月に住民グループからJBICに異議申立書が提出され、『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(ガイドライン)違反が指摘されていました。
その後、インドネシア国内で住民・NGOによる関連訴訟が続いていたため、またコロナ禍の影響もあったため、JBIC環境ガイドライン担当審査役(審査役)による調査は一時停止されるなど大幅に遅れていました。2022年11月25日にようやく公開された審査役による調査報告書(2022年9月5日付)では、「JBICガイドラインの不遵守はなかった」と結論付けられています。
しかし、異議申立てを行った住民グループは、今回の同報告書の公開に先立ち、以下のとおり、同報告書に対する意見書(2022年11月8日付)を提出済みです。意見書では、「審査役の理解・調査・検証が極めて不十分なものであった」ことが詳細に記されており、審査役に問題事項の再検証を求めるとともに、JBICに改めて融資停止を要請しています。
チレボン2号機は、現地コミュニティに甚大な環境社会影響を及ぼすだけでなく、現在もインドネシア汚職撲滅委員会が贈収賄について調査中であり、また気候危機を悪化させるなど、問題は山積したままです。隣接するチレボン石炭火力発電所1号機(66万キロワット)の早期閉鎖の必要性が認識される中、日本の官民は試運転中のチレボン2号機を稼働させないための真摯な努力を求められています。
以下、住民グループによるJBIC審査役に対する意見書(和訳)です。
インドネシア西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業2号機に関するJBIC異議申立審査役の調査結果等報告書に対する意見
> 意見書全文・和訳(PDF) / 意見書全文・インドネシア語原文(PDF) / 意見書全文・英訳(PDF)
2022年11月8日
国際協力銀行
環境ガイドライン担当審査役
奥 真美 様、佐瀬 裕史 様
(前任者 星野 一昭 様、豊永 晋輔 様)
Cc: 国際協力銀行
代表取締役総裁 林 信光 様
インドネシア西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業2号機に関するJBIC異議申立審査役の調査結果等報告書に対する意見
「インドネシア共和国西ジャワ州チレボン石炭火力発電所Unit 2プロジェクトに対する異議申立に関する調査結果等報告書」(以下、報告書)を拝読しましたが、私たちは大変失望していると同時に憤りさえ感じています。
まず、JBICの異議申立手続は、JBICが関与する事業によって被害を受けた住民に対する一種の救済措置であるはずです。しかしながら、環境ガイドライン担当審査役(以下、審査役)が私たちのような住民の証言を非常に軽視しており、インドネシア政府への「礼譲」というものに重きを置いて分析・判断を行っていることから、この異議申立手続が一体誰のためにつくられたのかと、私たちは疑問を抱かざるを得ません。日本であろうと、インドネシアであろうと、同じ人間の環境・社会・健康・文化に関わる問題を扱っているということを審査役もJBICも忘れるべきではありません。
また、同報告書では、「調査の結果、 申立人らが主張する具体的被害 が生じている または 将来発生する相当程度の蓋然性は認められなかった。また、JBIC に よる 環境ガイドラインの違反は認められなかった。」との結論が出されていますが、私たちは以下の表で示した意見のとおり、審査役の理解・調査・検証が極めて不十分なものであると考えます。
以下にまとめた私たちの意見をご査収いただくとともに、異議申立書で私たち申立人が指摘した具体的な問題事項について、JBICが適切な環境社会配慮確認を行なってきたか再度検証するとともに、当該指摘事項のガイドラインの遵守状況について再考していただけますよう宜しくお願い申し上げます。
最後に、私たちコミュニティーへの環境社会影響が悪化することを回避するため、チレボン2号機に対する融資をこれ以上行なわないよう、私たちは改めてJBICに強く要請します。
報告書の個別内容に対する意見
※同意見書の「報告書の個別内容に対する意見」の表は、PDFにてご覧ください。
> 意見書全文・和訳(PDF)