現地レポート
春の緑化活動に向け準備はじまる ~活動地からの報告・第2回~
近年、活動地とその周辺では大きな変化が起こっています。活動地は内蒙古自治区の最東南角にあり、中国でも重要な工業地帯である遼寧省に隣接しています。このため都会の影響を受けやすい地域といえます。沿海部発展のインフラとしての地域の変化を報告します。
何を運んでいるのでしょうか? |
土地政策が緑化意欲を後押し
活動を開始した2001年、地域は貧弱な防風林に囲まれた集落があり、周りは草がわずかに残る砂丘が連なる荒地が広がっていました。村民はなるようにしかならないその日暮らしという生活ぶりでした。沙漠植林ボランティア協会が緑化を始めて6年が経って、この砂地でも木を植えれば育つということがようやく認識された時期でした。
大きく変わり始めたきっかけの一つは農村請負法です。2002年頃、いくつかの法律、条令が整備され私有財産権が認識され始めたのです。中国沿海部の発展も波及してきました。住民にも“木を植えたい”という意欲が出てきたようでした。
風力発電に鉄道建設、変化の波は町にも
一方、地域的な枠の変化として、町村合併、県庁の新建設、道路建設、電力施設強化、鉄道拡張などが見られます。私たちの活動地域、庫倫旗(クリンキ。旗=日本の市レベル)と科左後旗(カサコウキ)も変わりました。2006年前後、小学校分校の中心校への統合に始まり、中学校統合、鎮レベル自治体は合併し効率化を進め、庫倫旗でも鎮が11から6になりました。試験があり多くの先生、役人がクビになりました。
2008年頃、旗政府の移転は全国的なトレンドだったようです。庫倫旗も科左後旗も広大な新立地に豪華な庁舎を新築。観光振興にも意欲的になりました。庫倫旗はお寺の町といわれていました。4つある古いお寺をドンと一箇所に集めて観光パンフレットを作り、白い砂漠も観光資源にしてしまおうということです。
冒頭の写真の正解は風車の羽根です ハイラル~遼寧省の送電線 庫倫旗に完成した駅舎 |
風力資源はこの3年ほどで利用が急増しています。砂漠地帯では風が止むことはほとんどありません。建設上の障害も少なく、いたるところ建設適地です。「ほら、あっちの遠くにもあるでしょ」幹線道路を移動していると、時々仲間が教えてくれます。
今年だけで60km四方の移動範囲内で300基程できたそうです。総出力でいえば9万kw程度でしょうか(道路から見た感じです)。まだ当分建設は続くと思います。2006年、緑化隊が遼寧省で見学した機器は欧州製でした。近年見るのは皆中国ブランドです。
送電線も何系統か建設されました。奥地にある石炭火力発電所から都会に送る電力用です。
鉄道では南満州鉄道時代の路線、大鄭線(満州国国営鉄道委託経営線)がFoE Japan現地事務所のある町・カンチカを通っています。この線路が2年ほど前に複線化され、輸送力が大幅にアップしました。
庫倫旗にも、初めて鉄道がカンチカから通じます。昨年工事を始め、間もなく営業開始です。驚くのは工事の早さです。手をつけたらあっという間に作ってしまいます。このスピードはすばらしいです。どこかの国は見習ってほしいです。
参考データ:
庫倫旗・・・・・人口 18万人 面積 4,650k㎡
科左後旗・・・人口 39万人 面積 11,476k㎡
次回は、活動地の近況についてお伝えします。