COP28閉幕間近〜FoEインターナショナルによる記者会見〜

気候変動2024.7.5

12月12日、COP28の閉幕を前に、FoEインターナショナルは記者会見を行いました。

議長は12日午前中の閉幕を目指していましたが、11日の夕方にグローバルストックテイク(GST)の新たな交渉文書がようやく出るなど、今も交渉が続いています。

FoEインターナショナルのSara Shawは、最新のGST交渉テキストについて化石燃料に関するパラグラフは非常に弱い内容にとどまっており、「排出対策の講じられていない石炭」に言及が絞られ、その他の化石燃料の廃止が含まれていないこと、再生可能エネルギーによる発電を3倍にする記述についてはよく見えるが、その実施の手段や支援について触れられていないこと、また再エネの需要拡大によって鉱物資源採掘に対するプレッシャーが強まることによる環境や住民への影響対策に触れられていないこと、原発やCCS、除去技術などが含まれていることの問題を指摘しました。これらの技術はむしろ気候変動対策を遅らせてしまいます。化石燃料のフェーズアウトが必要だが、誤った対策をフェーズイン(導入)すべきでないと強調しました。(化石燃料についてはこちらの記事も参照のこと)

また、パリ協定6条(炭素市場)についてあまり関心が集まっていないものの、カーボンオフセット事業が地域コミュニティや環境を破壊している事例がいくつもある中で、運用が開始されることに強い懸念を示しました。

FoEマレーシアのMeena Ramanは、多くの人がGSTのパラグラフ39(エネルギーに関する箇所)に注目をしているが、アメリカやノルウェー、カナダ、アンブレラグループ(日本が含まれる)EUが、1.5℃目標の維持や2050年までのネットゼロを訴える一方で、自国では化石燃料の利用や開発を推進して残されたカーボンバジェットを使い尽くそうとしていると指摘しました。そのような中で1.5℃達成というのは幻想であり、「共通だが差異ある責任」や歴史的責任に触れずにいるのは偽善であると強く非難しました。また、議長はこのCOPをゲームチェンジング(=流れを変えるような・革命的な)なCOPにしたいとしているが、ゲームプレイング(=ごまかしの)COPだとも強く非難しました。

途上国がNDCを実施するには5~11兆ドルが必要であると試算される中、化石燃料廃止や移行のための「手段」についての議論が欠けていること、資金目標の議論も来年に先送りされてしまっている状況を指摘し、先進国による途上国への資金支援が大幅に不足していることを強調しました。

今回のCOPでは、初日に「損失と被害」に関する基金の運用開始が合意されたことが注目されました。FoEバングラデシュのBareesh Chowdhuryは、前回のCOP27が「ロスダメ」COPと言われ、途上国が一丸となってロスダメ基金を求めたこと、そして今回のCOPで基金の運用が開始されたことは歴史的なステップであるものの、求められる資金額には到底足りていないことを指摘しました。そして、基金の運用にあたり、資金充填のプロセスが明確化されていないこと、誰が基金にアクセスできるのか、途上国が直接アクセスできるのかなど、課題や疑問も残されていますことに言及しました。また、今後短くとも4年は世界銀行が基金を受け入れることになっていますが、世界銀行が基金に強い影響を及ぼさず、独立した運用がなされるのか懸念が残ると指摘しました。

また適応について、適応世界目標に関する交渉が特にこのCOPの中でも苛立たしい交渉であったとコメントし、最新の交渉文書には共通だが差異ある責任や公平性、実施手段についての言及がないことを非難しました。

気候変動の影響が深刻になる中で、適応に対する資金ニーズと得られる資金のギャップはますます大きくなっています。

FoEナイジェリアのBabawale Obayanjuは、ジャスト・トランジション(公正な移行)について言及し、公正な移行に向けた作業計画に関する交渉の進捗を見れば、ナイジェリアや世界中の人々の生活への気候変動による影響の悪化を阻止するために必要な長期的な変革がもたらされないことは明らかだとコメントしました。また、化石燃料産業に従事する労働者のための公正な移行と、食料システム、エネルギーシステム、経済と社会全体の変革が必要であり、その移行によって現在のシステムが生み出しているのと同じ人権、搾取、環境問題が引き起こされないようにする必要があるとコメントしました。

また、先進国は、融資ではなく無償資金の形で、追加的な公的資金を提供することや、発展途上国の移行を支援するために必要な適切な技術移転を含む、公正な移行に向けた取り組みを主導すべきだ、と締めくくりました。

FoEインターナショナルのLise Massonは、FoEインターナショナルが中心的な価値観として据えている気候正義について改めて触れ、私たちが気候正義について語る時、それは公平性や歴史的責任を意味している。この先これ以上の採掘主義や気候植民地化が起きないことを求めていることを強調し、正義が大規模排出企業や富裕国によって踏みにじられてきたことからFoEインターナショナルとして、正義を求める声を繰り返したい、と強く訴えました。また、エネルギーの公正な移行は、労働者や大半を女性が占める無償ケア労働に従事する人々を中心において初めて公正なものとなり得えます。労働者の重要性について語るとき、この会場全体の建設に従事した強制労働について言及することを忘れてはならないともコメントしました。

最後にパレスチナについても触れ、COP28において、停戦を求める市民社会の声が取り締まられる状況を目の当たりにする中で、このように市民を沈黙させることは、世界的な傾向であることに懸念を示しました。停戦は、気候植民地主義を終わらせるための始まりに過ぎず、FoEグループが、ここCOPの会場においても、自分たちの国においても、そのような抑圧に屈するつもりはないことを表明しました。市民社会の連帯が今いっそう求められています。

(深草亜悠美・高橋英恵)