【横須賀石炭訴訟報告 vol.9】環境省も指摘していた!?環境アセスメントの不備
本日、横須賀石炭火力訴訟の第9回期日が行われました。
本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。
(裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?)
原告含め約40名の傍聴者が参加した今回は、千葉弁護士から、環境省の文書から判明した経済産業省との本件アセス(横須賀石炭火力行政訴訟の対象となっている石炭火力発電所の建設に係る環境アセスメント)に関するやりとりについての意見陳述があり、その後、小島弁護士から本訴訟全体の要点に関する陳述が行われました。
環境省も指摘していた!?環境アセスメントの不備
千葉弁護士から、環境省の文書から判明したこと(原告準備書面16)に関する意見陳述がありました。
火力発電所の建設に係る環境アセスメントには、配慮書、方法書、準備書、評価書の4つのステップがありますが、環境大臣は配慮書と準備書の段階で経済産業省に意見を提出することができます。
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/015_10_00.pdf
横須賀石炭火力行政訴訟の対象となっている石炭火力発電所の建設に係る環境アセスメントの期間中、環境省が経済産業省に対し100項目以上もの質問をしていたことがわかりました。
環境省の質問の例として、
「天然ガス火力などの燃料の複数案が考えられるが、最終的に石炭火力としたのはなぜか?」
「重大な環境影響がないと判断するに至った過程を示してほしい」
「リプレースというが、改善どころか悪化するのでは?環境アセスメントに記載されている”現状”の意味をしっかり明記せよ」
など、まさに、現在行われている裁判で原告代理人が指摘していることを、環境省も環境アセスメントが行われているときに指摘していたことが判明しました。
これらの環境省の質問や意見に対し、経済産業省からの回答は事業者の利益を守るような回答が多く見受けられました。(詳細は、後日、横須賀石炭火力行政訴訟のHPに掲載される迅美書面16をご覧ください。)
繰り返し指摘される気候変動の深刻さ
小島弁護士からは、改めてこの環境アセスメントの問題点や石炭火力発電所がもたらす影響についての陳述がありました。本訴訟全体の要点として、
- 原告らの生命、健康、住居などの財産等への危機が差し迫っていること
- 発電所の稼働は多大な温室効果ガスの排出をもたらし、原告らの生命、健康、住居などの財産、食料の危機など、深刻な危険を増大させ、より切迫させること
- CCSやアンモニア発電は稼働させる理由にならないこと
- 石炭火力を発電させなくても、電力不足にはならないこと
- 本件アセスメントの手続きは多くの重大な瑕疵があり、その手続きの不適切さが著しいこと
の5つにまとめられました。
気候変動の影響は、気候危機と呼ばれるほどに深刻化しています。人間への影響として、日本でも今年すでに多くの方が豪雨災害の被害をうけ、8000人の方が熱中症で救急搬送されています。また、インフラへの影響も深刻で、本行政訴訟の対象となる石炭火力発電所が建設される横須賀市でも、2021年11月9日に豪雨により道路が冠水し、3年前にも市内で道路の冠水が起きています。国外でも、気候変動の影響は深刻です。オランダの最高裁判所やフランスの行政最高裁判所などでは、気候危機を危機として受け止めた判決が出てきており、ドイツの連邦裁判所については、「気候危機は壊滅的で終末的な規模の環境破壊である」と、気候危機は深刻な問題であるとの認識を示しているそうです。
CCSやアンモニア混焼技術を用いたとしても、上述のように気候変動による影響がすでにある中、気候変動の原因であるCO2を追加的に排出させることは許されないこと、エネルギー消費量の削減など適切な政策措置が取られれば石炭火力を稼働させなくても再生可能エネルギー100%の実現は可能であること、そして何より、この石炭火力発電所に係る環境アセスメントの手続きが不適切であることを強調されました。
迫力のある意見陳述が2名の原告代理人からありました。
しかし、第9回期日も、冒頭では被告からも陳述を行うことが確認されたものの、原告代理人の陳述のみで終わり、もどかしさの残る裁判でした。
次回期日のご案内
本日の裁判の報告会は、12月21日(火)18:30〜19:30にオンラインにて開催されます。
申し込みはこちらです。
▼第9回期日 オンライン報告会(12月21日)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KQqcIZ-SRyWBG1TAAPWJqQ
次回は、代理人だけでなく、原告の意見陳述及び尋問があります。ぜひ、原告の生の声を聞きにいらしてください。
▼次回の期日日程はこちら(傍聴前に、こちらで確認の上、お越しください)
2022年2月21日(月)13:30〜@東京地方裁判所第103号法廷
*2022年3月7日(月)10:30〜@東京地方裁判所第103号法廷(2/21に意見陳述の都合がつかなかった原告の意見陳述が予定されています。)
COP26でも、石炭火力の段階的削減が合意されました。日本は先進国として、石炭火力から脱却することが求められています。
FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や発電所建設の中止を求める地元住民、市民とともに、日本の脱石炭を求め活動していきます。
(髙橋英恵)