インドネシア・ジャワ1ガス火力:現地漁民グループとNGOがJBICに独立調査を要請「事業者のモニタリング報告と漁民の被害実態は大きく乖離」

2026年10月8日、インドネシア西ジャワ州で日本の官民が推進してきたジャワ1ガス火力発電事業に関して、現地漁民グループGKNKSと彼らを支援しているインドネシア環境フォーラム(WALHI)は、国際協力銀行(JBIC。日本政府全株式保有)に対し、独立した調査・検証・評価の実施を求める要請書を提出しました。
漁民グループらは2026年3月にもJBICへ書簡を提出し、同事業に伴う漁獲量の大幅な減少や漁網の損傷・喪失といった悪影響により、漁民が厳しい生活を強いられている実態を伝えていました。しかし、今回の要請書では、それから半年以上が経過した現在も、現場では漁民の抱える問題に対する根本的な解決策が講じられていないことが指摘されています。
さらに同要請書は、JBICによる「特段の問題は生じていない」という認識と、現場で同事業の影響を受け続けている漁師たちの経験・実態が大きく乖離していると批判。その主な原因として、JBICがモニタリングにおいて事業者からの報告のみに依存し、客観的な検証を怠っている点が挙げられています。
JBICは同事業への最大の融資供与者(約6億400万米ドル)で、アジア開発銀行(ADB)や民間銀行とともに事業者であるPT Jawa Satu Power(JSP。丸紅40%、双日20%出資)に対して協調融資を行いました。
同ガス火力発電事業は、アジア初の「Gas-to-Power」事業(発電施設とガス関連施設の一体開発)で、2024年に商業運転を開始。燃料となる液化天然ガス(LNG。西パプア州タングーLNGから調達)をガス火力発電所(1,760MW)へ供給するため、浮体式貯蔵気化設備(FSRU)や輸送パイプライン(海底約14km)が近海域に設置されましたが、漁民グループは建設前から現在に至るまで適切な協議が行われていない点や、生計手段への甚大な影響を報告しています。
同事業によって被害を受けている漁民たちの声に真摯に耳を傾け、過去の損失に対する適切かつ十分な損害賠償がなされるよう、そして漁場環境および海洋生態系の原状回復が実現されるよう、迅速かつ適切な対応をとることがJBICに強く求められています。
詳細は以下をご覧ください。(FoE Japanによる和訳。原文インドネシア語はこちら。英訳はこちら)
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インドネシア西ジャワ州ジャワ1ガス火力発電事業に係るJBICによるモニタリングの不備および独立した調査・検証・評価の実施に関する要請書
(原文はインドネシア語。以下は、FoE Japanによる和訳)
2026年10月8日
国際協力銀行 代表取締役総裁 天川 和彦 様
貴行が2018年10月18日に貸付契約を締結[1]した、インドネシア西ジャワ州における「ジャワ1Gas-to-Powerプロジェクト」(ジャワ1ガス火力発電事業。以下、同事業)に関し、私たちが今年3月9日付で書簡を提出してから半年以上が経過しました。大変残念なことに、私たちが貴行にお伝えした同事業に伴う漁獲量の大幅な減少、漁網の損傷または喪失といった問題に対処するための適切かつ有効な措置は依然として講じられておらず、現地の漁民は厳しい生活を強いられたままです。
私たちは前回の書簡提出後、FoE Japanが貴行との会合および電子メールでのやりとりを通じて得た、同事業による漁民への影響に関する貴行の認識について確認しました。私たちは前回の書簡で貴行の「モニタリングにおける重大な過失」を指摘しましたが、貴行がFoE Japanに伝えた認識は、貴行のモニタリングの方法や質に深刻な課題があることを強く示唆するものでした。
例えば、同事業の海底パイプライン敷設の影響について、貴行は事業者からの報告に基づき、「海底パイプライン沿いのエリアでは漁業の活動が制限」されており、海底パイプラインが「埋設されていない箇所については、コンクリートマットレスを被せることでパイプラインを保護し、同時に海底に固定」していると説明しています。つまり、貴行としては特段の問題は生じていないとの認識を示しているとお見受けします。
しかし、そのような漁業制限措置について、現地の漁民グループ(GKNKS)は「これまで何も説明を受けたことはない」と繰り返し述べています。事業者が建設前、建設中、あるいは、操業開始後のどの段階で、誰(どの漁民)に対しどのように説明を行い、影響を受けるあらゆる漁民から適切な合意を得たのか、極めて疑問です。前回の書簡でも、建設前にSocialisasiと呼ばれる説明会は行われなかったことを指摘しましたが、これは現在に至るまで同事業の影響に関する住民協議が適切に行われていないことの証左です。
さらに、現地で漁民が抱える問題は今なお継続しています。直近1ヶ月の状況を見ても、例えばGKNKSの漁師4名からの報告だけで、少なくとも26枚の漁網が損傷したことを確認しています。「漁業制限措置を講じているから対策は不要」と貴行は考えているかもしれませんが、漁民グループの立場からすれば、自分たちの漁場において海底パイプラインの適切かつ安全な敷設措置がとられているとは到底言えない状況です。
また、苦情処理メカニズムに関しても、貴行は事業者の年2回のモニタリングレポートの情報に基づき、「苦情が適切に対応され、有効に機能している」と評価しているようです。しかし、この点も前回の書簡でお伝えしたとおり、漁民グループの立場からすれば、被害を受けた際にどこへ苦情を申し立てるべきか不明確なままであり、同メカニズムが実効性を欠いていることは明らかです。
このように、貴行の認識と現場で同事業の影響を受けてきた漁師たちの経験・実態は大きく異なります。この原因の一端は、貴行がモニタリングにおいて事業者からの報告のみに依存し、客観的な検証を怠っている点にあると私たちは考えます。貴行は私たちを含む第三者からの報告も直接確認し、事業者からの報告との間に齟齬が生じている場合には、現地実査などを通じた貴行自身による独立した調査・確認・評価を実施すべきです。
特に、前回の書簡でも『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(以下、ガイドライン)違反を指摘した漁民グループの漁師たちの生活が以前の水準において改善または回復していないという状況の検証については、事業者からの報告のみに依存しない方法により、漁獲量を含む漁民の生活に係る適正なベースラインデータと現状との比較を行うべきです。またその際に留意すべき点として、事業者の提供している補償や生計回復プログラムが、生活水準の改善または回復という目的に照らして真に実効性のあるものかという点が挙げられます。なぜなら、今年8月に事業者はカラワン県およびスバン県の漁民数百名に対して漁網等の提供を行いましたが、そうした漁網等の提供は、漁獲量の大幅な減少、漁網の損傷・喪失、そして収入の減少といった漁師たちが抱える問題の根本的な解決にはなっていないからです。
これまで貴行はモニタリング実査において、主に同事業の操業状況を確認してきたようです。しかし、モニタリング実査においては環境社会配慮の観点からも、被害を訴えている漁民グループの声に真摯に耳を傾け、事業者がガイドラインに沿った適切な対応を取ることを確保すべきです。
繰り返しになりますが、同事業により甚大な影響を受けながらも、これまで適切な措置を受けられてこなかった漁師たちに対し、過去の損失に対する適切かつ十分な損害賠償がなされるよう、そして漁場環境および海洋生態系の原状回復が実現されるよう、貴行がその責任を果たし、迅速かつ実効性のある適切な措置を講じることを改めて強く要請します。
以上
署名:
Gabungan Kelompok Nelayan Karawang-Subang(GKNKS:カラワン・スバン漁民連合)
WALHI西ジャワ
インドネシア環境フォーラム(WALHI)
Cc:
財務大臣 片山 さつき 様
経済産業大臣 赤澤 亮正 様
外務大臣 茂木 敏充 様
株式会社 日本貿易保険 代表取締役社長 黒田 篤郎 様
国際協力機構 理事長 田中 明彦 様
アジア開発銀行 総裁 神田 眞人 様
丸紅株式会社 代表取締役 社長 大本 晶之 様
双日株式会社 代表取締役 社長CEO 植村 幸祐 様
株式会社商船三井 代表取締役 社長執行役員 田村 城太郎 様
株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕 様
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 半沢 淳一 様
オーバーシー・チャイニーズ銀行 Group Chief Executive Officer Tan Teck Long 様
クレディ・アグリコル銀行東京支店 日本代表者 ベンジャミン・ランバーグ 様
ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店 日本代表者 ブルーノ・ゴソーグ 様
【連絡先】
インドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワ
住所: Jalan Simphoni No. 29, Kel. Turangga, Kec. Lengkong, Kota Bandung, Jawa Barat 40264, Indonesia
TEL: +62 22 63175011
Email: walhijabar@gmail.com
[1] https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2018/1022-011485.html