【声明】JBICと3メガバンクによる対米化石燃料融資の開始は十分な環境社会影響審査そして気候変動対策の国際的コミットメントという二つの約束を破る
2026年4月24日
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

本日(2026年4月24日)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクが、日米関税交渉に基づく対米投融資「第1弾」として、オハイオ州ガス火力発電所・テキサス州原油輸出ターミナル等の3案件に対し、計約2500億円を支援する方針を固めたと各紙に報じられた。
FoE Japan及びJACSESは以下に3点の問題を指摘し、強い懸念を表明する。
環境社会配慮ガイドライン違反
今回の融資方針決定において最も深刻な問題の一つが、JBICおよびNEXIの環境社会配慮ガイドラインが事実上、骨抜きにされたことである。
JBICとNEXIは、2026年2月18日の事業発表当日、建設予定地すら定まっておらず、環境影響評価(EIA)も存在しない状態でオハイオ州ガス火力への支援検討を開始した。本来、JBICの環境社会配慮ガイドラインは、ガス火力のような「環境への重大で望ましくない影響のある可能性を持つようなプロジェクト」について、意思決定前にEIAの提出、公開とレビューを義務づけている。FoE JapanおよびJACSESがJBICとこの件について会合した際には、JBIC担当者は、今時点で環境レビューに足る書類はなく、後日レビューをする形で、例外的なケースであると説明した。JBICは、ガイドライン改訂に関するコンサルテーションの際、EIAを通常、融資前に行うような案件には例外規定は適用しない旨を表明しており、本事業に例外規定を適用することはガイドラインに違反している。
ガイドライン上定められた、意思決定前のEIAという原則を適用しないことは大きな問題である。融資決定をした後にレビューを実施し、甚大な環境社会影響があった場合、直ちに貸付実行停止、借入期限前償還等の対応がなされる必要があるが、今回のように政治化された案件で後日の環境レビューで実際に中止できるのか、大きな疑問が残る。4月6日の国会・予算委員会においても、政府主導案件ではJBICの審査が甘くなるという指摘も出ている。
このような意思決定のあり方が、今後の先例となってはならない。特に関税交渉の結果としてすでに第二弾投融資パッケージが発表されているが、今後も新案件が発表される度、適切な環境社会配慮のプロセスを経ずに日本の公的資金が投じられるリスクがある。
JBIC、NEXIのガイドラインと並んで、今回融資に加わる三菱UFJ・みずほ・三井住友の3メガバンクが採択している赤道原則にも違反している。赤道原則が参照する世界銀行グループ国際金融公社(IFC)の「環境と社会の持続可能性に関するパフォーマンススタンダード」は、EIAの実施、影響を受けるコミュニティへの情報公開と協議、温室効果ガス排出量の評価などを明確に求めている。3メガバンクは赤道原則を採択している以上、JBIC、NEXIと同様に適切な環境社会配慮を実施するべきであり、それを棚上げにすることは許されない。
私たちはJBICおよびNEXIに対しては各自のガイドラインに基づく適切な審査を、また三菱UFJ・みずほ・三井住友の3メガバンクに対しては各行が自ら採択した赤道原則およびIFCパフォーマンススタンダードに基づく独立した環境社会デューデリジェンスを完了するまで、支援方針を見直すとともに、すでに融資・付保の契約締結が完了しているのであれば、契約の破棄又は支援決定の撤回を強く求める。
現地コミュニティへの被害を繰り返してはならない
今回のテキサス州原油輸出インフラへの融資が計画されている地域は、JBIC及びNEXIが長年支援してきた化石燃料事業が地域社会に深刻な被害を既にもたらしてきた地域でもある。特に同事業は、JBIC(26.95億米ドル)、三菱UFJ銀行(25.90億米ドル)、みずほ銀行(21.88億米ドル)、三井住友銀行(19.53億米ドル)が融資したフリーポートLNGと同じブラゾリア郡に位置する。
2022年6月8日に発生したフリーポートLNG爆発事故は、日本の公的支援が絡む化石燃料事業のリスクを象徴する出来事である。爆発時には3,400m³ものメタンを排出したこの事故では、 爆風で子供を含む複数人が怪我をし、ターミナルはその後8ヶ月操業を停止した。
Texas Campaign for Environmentのジェフリー・ジェイコビー氏は、日本の化石燃料ファイナンスについて「日本とJBICが世界的なガスインフラに数十億米ドルを投資することは、テキサス州、ルイジアナ州、米国南部メキシコ湾岸地域全体における環境人種差別、地元漁業の破壊、大気・水質汚染、経済的不平等、さらには気候変動に起因する壊滅的な災害に投資することと同じです。日本はLNGにコミットすることで、2022年にLNG施設が爆発したテキサス州フリーポートや、LNGが町に来てから漁獲量が大幅に減少したと漁師たちが報告するルイジアナ州キャメロン群の人々に、何世代にもわたって害をもたらすことを宣告しているのです。本当にそれだけの価値があるのかとJBICに聞きたいです」と述べている。
FoE Japanはこれまで、米メキシコ湾岸での日本の資金支援によるLNG開発がいかに現地住民を苦しめ、現地の環境を破壊してきたかについて、がんのリスク増加などの健康被害、地元漁業の苦境等について発信してきた。
私たちは、このような過去の被害から学ぶことなく同地域への化石燃料事業への支援を拡大することに強く抗議する。
気候変動による国際合意、JBIC自身のコミットメント違反
JBICおよびNEXIが新規ガス火力・原油インフラへの支援を実行することは、日本政府が国際的に約束した合意への明白な違反である。
2022年のG7エルマウ・サミットにおいて、日本を含むG7各国は「…排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を2022年末までに終了する」ことにコミットした。
さらに、2023年末のCOP28成果文書において、世界190カ国以上が「化石燃料からの脱却」に合意した。関税交渉の「取引材料」として化石燃料インフラに公的資金を投じることは、この国際合意の精神にも真っ向から反する。
これは、JBIC自身が公表している、「2050年までの投融資ポートフォリオの GHG排出量ネットゼロの達成の追求」という目標とも矛盾する。そもそも「ネットゼロ達成の追求」という目標自体が消極的な目標で、明確に「ファイナンスド・エミッションを2050年までにゼロ」とするべきだが、今回の融資はその消極的な目標をも反故にする。
FoE Japanの調査によれば、JBICの2024年のファイナンスド・エミッション(動員排出量、GWP20換算)は約4億800万トン(CO₂換算)に達する。仮にJBICを一つの国と見なした場合、これはフランス・英国・イタリアを上回る世界第20位に相当する排出規模である。
JBICの年間GHG排出の推移はIPCCが求める削減ペース(2019年比で2030年までに約43%削減)と既に整合していない。今回の融資は、この乖離をさらに拡大させるものである。
真にエネルギー安全保障を求めるなら、再生可能エネルギーに投資せよ
アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃を端とする危機は、化石燃料開発は化石燃料依存を深め、結果的に「エネルギー安全保障」ではなく、エネルギー脆弱性そのものであるという厳しい現実を改めて突きつけた。トランプ政権による関税を「取引材料」にした化石燃料購入・投資の強制という「化石燃料の武器化」も、日本が化石燃料に依存している状況から逆らい難いものになる。今回の支援決定はその脆弱な構造をさらに深化させるものに他ならない。高市首相自身が「資源国に頭を下げる外交を終わらせたい」と明言した以上、今こそ脱化石燃料を推進し、地域のニーズを踏まえた省エネ技術や再生可能エネルギーへの投資を加速させるべきである。FoE Japan及びJACSESは日本政府・JBIC・NEXI・民間銀行に対し、本支援を撤回し、真に公正なエネルギー移行を実現するための資金支援を強く求める。
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