電力システム関連制度案に意見を提出~原発を意図した新たな融資制度案に反対 ほか
2024年度、電力システム改革検証の議論が経済産業省の審議会で行われ、2025年にそれを踏まえた制度変更が議論されました。
ところが審議会では、これまでの改革や自由化によって大手電力の大規模電源維持が難しくなっているとして、改革前の方向に逆戻りさせるような議論が行われ、大規模電源を維持温存する方向が強化されました。
原発を意図した「大規模な脱炭素電源」の新設について、政府によるあらたな融資制度案も提示されました。
・次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/index.html
・電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_design_wg/inde
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1月28日(17:30)まで呼びかけられている意見募集に対して、FoE Japanは以下の意見を提出しました。
対象文書:
1.「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WG とりまとめ(案)」
2.「次世代の電力システム構築へ向けて ~中間整理の概要~ (案)」
3.「次世代の電力システム構築へ向けて ~中間整理~(案)」
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会
WGとりまとめ案、中間整理案に対する意見
主に原発を意図した大規模電源の新設を支援する新たな融資制度案は導入すべきでない。
該当文書: 3つの文書それぞれ
該当箇所: 文書1の112~122ページ、文書3の7ページ 「電源への投資に対するファイナンス」
理由:
提案されている融資制度は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が、大規模脱炭素電源を建設しようとする事業者に対して財政融資を行うというものである。また、万一の場合に備え一般送配電事業者から拠出金等を回収するしくみも同時につくることとなっている。
対象となるのは、「50万kW以上」かつ「建設期間が10年以上」(案)の電源であり、これにあてはまるのは原発である。
原発のコストは近年上昇し続け、欧米で最近建設されているものはいずれも数兆円となっており、日本においても今後物価高騰や円安によりさらに上昇する可能性がある。
https://foejapan.org/issue/staffblog/2024/10/10/staffblog-20704/
さらに、「万一の場合に備え」として一般送配電事業者からの拠出金回収の枠組を設けるとしている。建設コストが大幅に上昇した場合、事業者からの返済の不足分に充てられる可能性がある。これは、本来事業者が負うべきリスクを、一般送配電事業者経由で消費者が負担することになる。
ここ数年の議論で、原発建設は事業期間の長さと巨額のコスト、さらにコスト上振れ等リスクの大きさから、民間銀行の融資のみでは不十分であり、投資予見性が低いことが示されてきた。また、原発に関しては、事故のリスクや核のごみの処分など大きな問題がある上、すでに研究開発や立地地域への交付金等、莫大な国費がつぎ込まれている。
そのような事業に、国が融資してリスクを肩代わりし、さらに「一般送配電事業者からの拠出金」というかたちで消費者負担のしくみをつくることには正当性がない。
大規模電源の新設促進や維持は、分散型再エネを中心として活用する電力システムへの移行とは逆行する。大規模電源による「供給力確保」ではなく、変動する再エネを活用し、需要も柔軟に調整する電力システムへの移行を加速すべきである。
該当文書: 3つの文書それぞれ
該当箇所: 全体
「制度設計WGとりまとめ(案)」や「次世代の電力システム構築に向けて~中間整理(案)」では、大規模電源の維持や新設によって「供給力確保」をする方向となっている。しかしこの方向は、再エネを中心として使うシステムへの移行の方向性とは逆行する。
太陽光や風力など変動性再エネを中心として活用するためには、再エネの出力変動に合わせて他の電源を調整する、余剰分を貯える、また需要を調整することなどが必要である。
こうした方向に合致するのは一定出力運転を前提とする大規模電源ではなく、出力を柔軟に調整できる電源である。
またカーボンニュートラル・脱炭素の観点から化石燃料から再エネへの移行を進める必要もある。世界の気温上昇を1.5℃までに抑えるために、できる限り早期に大幅に、コストも抑えながら温室効果ガスを削減するという視点を加えるべきである。
小売電気事業者への量的な供給力確保義務は、再エネを重視した電力調達を妨げる恐れがある。さらに電気料金の上昇や小規模小売の事業環境悪化につながるおそれがあるため、導入すべきでない。
少なくとも販売電力量5億kWh以下の事業者は対象とすべきではない。
該当文書: 文書1
該当箇所: 61~73ページ 「小売電気事業者の量的な供給力確保義務」
電力自由化の意義の一つは、多様な小売事業形態を可能とし、需要家の選択肢を広げることにあった。また、地域に根ざした再エネを活用する地域新電力についても、地域脱炭素・地域経済循環の観点から注目されている。
地域の再エネ活用を重視する地域新電力にとって、需給年度数年前の供給力確保は、大きな負担となりうる。非FIT再エネやPPAなどからの調達を主としている場合もあり、必ずしも3年前から電源を確保できない場合も多い。仮にこうした電源調達方法が不利となり、中長期取引市場を通じた原子力や火力からの調達が不可避となれば、経営方針の変更を迫られることにもなりかねない。
中長期取引市場からの調達はまた、燃料価格の高騰や為替変動など発電事業者のリスク回避のために、価格が高止まりするリスクもある。これは電気料金の上昇や小売事業者の事業環境悪化につながりうる。
小規模事業者も含め、原子力や火力電源の調達を事実上義務付ける方向となるとすれば、小売電気事業者の再エネ優先調達などを妨げる大きな問題である。原子力や火力電源の優先的な取引となり、再エネへの転換にブレーキがかかることも懸念される。さらに、原子力や火力からの電気ではなく、再エネや地域新電力からの電気を買いたいという消費者の選択を奪うことにもつながる。
「継続検討」となっているが、量的な供給力確保は導入すべきではない。
「GX戦略地域制度との連携」の中で、データセンターが集積される地域を選定し、系統を計画的・先行整備することが提案されている。しかし、データセンターの建設による環境影響は慎重に検討すべきであり、無秩序な建設は避けるべきである。
また、データセンターによる大規模な電力需要を早計に想定することは、過大な系統整備や設備開発となる可能性がある。必要性を慎重に吟味したうえで、省エネの可能性も十分に精査し、電力需要の過大な見積もりを避けるべきである。
該当文書: 主に文書3
該当箇所: 11ページ 「GX戦略地域制度との連携」
データセンターの建設には、電力需要の増大のみならず、大量の水の消費、騒音・振動、排熱、生態系や景観への影響などの環境影響が伴う。このため、データセンターの無秩序な建設を認めるべきではなく、現行の環境影響評価に加え、一定の規制も必要である。立地場所、電力・水消費の効率化、使用電力の一定割合以上を再エネで賄うなどの検討を行う必要がある。
また、レポート「グリーントランジション2035」によれば、日本におけるデータセンターを含む情報通信分野の電力消費量は2022年時点で約2%と推計されている(未来のためのエネルギー転換研究グループ、2024年)。今後の見通しも2030年に3%、2035年に4.2%、2040年に6.1%である。
電力需要の過大な見積もりは、政策の方向性を誤るおそれがあり注意が必要である。
個別の計画案についても、計画が中止や見直しとなる可能性もある。その必要性と合わせ慎重に判断しなければならない。
*未来のためのエネルギー転換研究グループ「グリーントランジション2035」2024年9月
https://green-recovery-japan.org/pdf/greentransition2035.pdf
29~33ページに「データセンターやAIによる電力需要量増加問題」


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