カナダの先住民族リーダーらがLNGカナダ事業に関して国際協力銀行と三菱商事に異議申し立て
本日、カナダの先住民族のリーダー二名が国際協力銀行に対し、同銀行が融資するLNGカナダ事業に関して異議申し立てを行いました。また類似の内容の申立が、事業に出資する三菱商事にも提出されました。
LNGカナダ事業は、現地時間6月30日に第一船を出荷したばかりで、カナダ初の大型LNG事業ですが、現地では先住民族等の反対にもかかわらずパイプラインの建設が進み、人権侵害も報告されています。詳しくはプレスリリースと、異議申立て書をご覧ください。

プレスリリース:カナダの先住民族リーダーら、LNGカナダ事業に関連する違反にJBICと三菱商事が加担したとして説明を要求ー先住民族の権利の侵害や環境被害悪化を指摘
2025年7月17日
カナダの先住民族Wet’suwe’tenのリーダーらは、重大な先住民族の権利侵害、継続的に起きている人権侵害、そして深刻な環境被害を理由に、国際協力銀行(JBIC)と三菱商事に対し、LNGカナダ事業への現在および将来のすべての投融資を即時停止するよう正式に要求した。
異議申立書は、Wet’suwet’enの世襲制チーフであるNa’Moksと、Hagwilget Village Councilの副チーフであるGwii Lok’im Gibuu(Jesse Stoeppler)が今朝提出した。
申立書には、日本の大手銀行(みずほ、三菱UFJ、三井住友)による融資と三菱商事の直接投資(15%)に加え、JBICによる8億5,000万米ドルの融資が、Wet’suwet’enの世襲制統治からの「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)なしに、コースタル・ガスリンク(CGL)パイプラインの建設を可能にし、事業がカナダ憲法と国際法に違反していることが詳述されている。なお、JBICは同パイプライン事業をLNGカナダ事業と不可分一体の事業とみなしており、『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』上、環境社会配慮の対象となる。
「JBICと三菱商事によるLNGカナダ事業への投融資は、私たちの主権と人権を侵害し、先住民族の土地擁護者に対する植民地主義的な暴力を助長し、私たちの土地の繊細な生態系を破壊しました」とチーフであるNa’Moksはコメント。「今年初めにJBICと我々の代表者らは会合をもったが、先住民族の意味ある「自由意思に基づく、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を欠く事業が増える中、私たちは国際的な金融機関に対し、融資の実態について責任を問うために、このような行動にでた。」とした。
異議申立ての内容には、以下の構造的な問題についての指摘が含まれる。
- 人権侵害:カナダ警察による軍事的な襲撃、恣意的な逮捕。パイプラインに反対する先住民族の土地擁護者に対する人権侵害の記録は、カナダ・スクリーン・アワードを受賞したドキュメンタリー「YINTAH」で強調されている。
- 環境違反:CGLパイプラインは、Wet’suwe’tenの生計手段と文化に不可欠なサケの生息する川など、繊細な生態系に直接被害を及ぼしており、環境違反で繰り返し罰金を科せられている。
- 気候への影響: この事業は国際的な気候公約に反しており、数十年にわたって大量の温室効果ガス排出が固定される。
Wet’suwet’enのリーダーたちは2021年からJBIC、三菱商事、また他の金融機関と東京での対面会議を含め、繰り返し協議等を行ってきたが、これらの機関は明らかな被害の証拠があるにもかかわらず、事業への支援を継続している。
異議申立てでは、JBICと三菱商事に対し以下を要請した。
- LNGカナダ事業に対する更なる貸付実行を即時停止し、計画されている拡張計画(フェーズ2)へも支援を行わないこと
- 環境および人権への影響について包括的な再アセスメントを行うこと
- Wet’suwet’enの伝統的リーダーたちと直接協議を行い、緩和策と説明責任についての正当な道筋を打ち立てること
「日本とその金融機関には国際法を遵守する義務がある」と、副チーフであるStoepplerは付け加えた。「だからこそ、JBICと三菱商事に対し、法的、環境的、社会的、そして倫理的責任を果たし、LNGカナダへの資金提供を停止し、先住民族と直接対話するよう求めている。」
以上
補足:
・事業の背景についてはこちら (English・日本語)
・JBICに提出された異議申立書はこちら(原文)。異議申し立て制度についてはJBICのウェブサイトをご覧ください。
・三菱商事については、人権・グリーバンスメカニズムの相談窓口から提出。