日米比首脳会合に対するコメント:原発の押しつけと人権の保護なき鉱物資源開発に反対する

訪米中の岸田文雄首相は、現地時間4月11日、アメリカ・バイデン大統領およびフィリピンのマルコス大統領と三者で会合を行い、共同声明「日比米首脳による共同ビジョンステートメント」を発表しました。これを受けFoE Japanでは以下の声明を発出しました。

2024年4月12日
国際環境NGO FoE Japan

日米比首脳会合に対するコメント:原発の押しつけと人権の保護なき鉱物資源開発に反対する

 2024年4月8日、日本の岸田文雄首相が訪米し現地時間11日にフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領と三者で会合を行い共同声明「日比米首脳による共同ビジョンステートメント」を発表した(1)。

 声明では、再生可能エネルギー分野における協力に加え、原子力、特に小型原子炉の開発の推進が盛り込まれている。また鉱物資源分野でも3カ国の協力を深めるとしている。

 フィリピンでは、国際協力銀行(JBIC)や、IHI日揮ホールディングスなどが出資する米新興企業のニュースケール社が、次世代原発とされる小型モジュール原子炉(SMR)の建設を検討しているが(2)、SMRも通常の原発かそれ以上にコストが高い。SMRという新たな装いをしていようとも、ライフサイクルにわたる放射能汚染、核廃棄物、事故リスクに加え、テロや戦争のターゲットとなるリスクなどの問題を抱えていることは、従来の原発と何ら変わりはない。

 ニュースケール社は昨年11月、米西部アイダホ州でのSMRの建設計画を中止した。理由は、多額の補助金を投じてもなお、SMRからの電気は再エネと比べて高く、まったく価格競争力がなかったことだ(3)。

 FoE Japan事務局長の満田夏花は「フィリピンに対して、日米が高価なSMRを押し付けることは、日米の原子力産業のためであって、フィリピンの人々のためではない。SMRが仮に実現しても、フィリピンの将来世代に大きなリスクと負債、核のごみを残すことになるだろう。」とコメントした。

 また、声明では鉱物資源についての協力も強調された。フィリピンは電池材料であるニッケルの生産国である。フィリピンのニッケル開発の現場では、これまで先住民族らが先祖伝来の土地から追いやられたり、伝統的な生活ができなくなるなど、甚大な影響を受けてきた。

 FoE Japanの開発と人権プログラムの波多江 秀枝は「自分たちの土地や生活を守ろうと声をあげる先住民族に対する超法規的殺害や脅迫等も起きている。『「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」を確保するための素地がフィリピンでは大きく損なわれていることに留意すべきだ。このような問題は、フィリピンですでにニッケル・アジア・コーポレーションと提携している住友金属鉱山が関わり、パナソニックを通じてテスラ向けに供給されているニッケル原料も同様である。国連「ビジネスと人権指導原則」に則り、ニッケル鉱山開発から生活を守ろうとしている人びとの権利を保護する国家の義務を3ヵ国の政府は忘れるべきではない。エネルギー移行によって他の犠牲が助長されることは避けなくてはならない。」

 FoE Japanがフィリピンのパラワン島でニッケル鉱山開発の問題に一緒に取り組んできた環境法律支援センター(ELAC)事務局長グリゼルダ・マヨ・アンダ氏は「今回の3カ国首脳会合では、公正なエネルギー移行が取り上げられ、クリーンエネルギーを供給するために重要鉱物資源産業を活用する必要性が言及された。私たちは今回の動きを非常に憂慮している。生物多様性や森林、野生生物がまだ比較的豊かで豊富なパラワン州でのニッケル採掘がますます加速されることになるからだ。公正なエネルギー移行は、地域コミュニティ、特に採掘活動や森林伐採、移転によって直接影響を受ける先住民族や農民、将来のコミュニティによって十分に検討されなければならないナラティブである。生計手段の喪失、生物多様性の喪失、水と大気の汚染は、パラワン島の地域コミュニティが直面している問題の一部であり、これらの問題は、フィリピン政府が公正なエネルギー移行とクリーンエネルギーの開発を推進する壮大な計画を進める前に、認識すべき問題である。」と語った。

以上

  1. 日比米首脳による共同ビジョンステートメント 仮訳https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100652839.pdf
  2. 日経「日米比、原発・半導体で供給網 中国に「深刻な懸念」」2024年4月12日https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11BQH0R10C24A4000000/
  3. FoE Japan「国際協力銀が出資する、ニュースケール社の小型原発計画が中止に ~問われる公的金融機関の説明責任~」2023年11月13日https://foejapan.org/issue/20231110/14861/
 

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