CCSや水素支援に関するパブリックコメントを提出しました

化石燃料

FoE Japanは以下の2件のパブリックコメントを提出しました。

CCS に係る制度的措置の在り方についてに関する意見公募

パブリックコメント対象の文章はこちら

  • 該当箇所:1.はじめに
  • 意見内容:CO2の排出が避けられない事業分野への利用と謳っているが、CCSが必要とされる分野について明確な定義がなく、実際には再エネや省エネなど代替案が存在するセクターへの利用が検討されている。CCSの社会実装を目指して多くの資金・資源を投入することは、そのほかに行うべき省エネ・再エネに関する技術革新や社会実装を妨げ遅らせる可能性がある。そもそも日本のCCS政策に関する基礎的な方針が示されている「長期CCSロードマップ」は実現性に乏しく、CCSをカーボンニュートラル化の切り札と位置付けるのではなく、CCS政策を抜本から見直すべきである。
  • 理由:気候危機解決のため社会の脱炭素化が求められている。2023年のCOP28では全ての化石燃料からの脱却が合意された。気候危機解決のためには、化石燃料依存からの脱却が最も必要とされており、本取りまとめにおいてもそれを前提として明記すべきである。一方、CCSは1970年代から調査研究が続けられてきているが、比較的規模の大きな事業として、2016年〜2019年に苫小牧の実証事業でようやく30万トンの貯留が行われたのみにとどまっている。現在の日本のCCS長期ロードマップでは、2050年までに年間1.2~2.4億トン(圧入井1本あたり50万トンとして年間240~480本)を貯留するとしているが、これまでの実績とかけ離れている。政府は2023年に「先進的CCS事業の実施に係る調査」の公募を行い、国内貯留5案件、海外貯留2案件を採択した。しかし、これらの案件ではまだ可能性が示されているのみであり、技術的ハードルも経済性のハ―ドルも高い。日本のCO2排出量は約11億トン(2021年度)である。一方、石炭火力発電所からのCO2排出量は年間数百万トン、例えばJERA横須賀火力発電所からのCO2排出量推計は、726万トン(65万kW×2基分)である。実際にCCSでCO2の貯留を開始し、温室効果ガス削減策として機能するかどうか、極めて不透明な技術について10年以上待っている時間は残されていない。化石燃料自体の利用削減を最優先すべきであり、そのために資源を集中させるべきである。
  • 参考:「CCS(炭素回収貯留)ってなに?」2023年11月、FoE Japan
  • https://foejapan.org/issue/20231121/14984/

  • 該当箇所:全体
  • 意見内容:全体として、CCSに関する技術的課題についての対策や社会・環境影響評価についての記載や対策が不足している。
  • 意見理由:CCS事業に関するリスクマネジメントについて、ISOの基準が記載され、P.12に「安定的かつ安全に事業を行う上での様々な潜在的リスクを注意深く評価・分析する」とあるだけで、安全性を確保するためにどのような制度的措置を設けるのかの方向性が記載されていない。P.21に、保安措置について労働環境関連の記載があるが周辺地域や環境に対する影響への記載がない。地域住民の安全確保や環境保全についての具体案を盛り込むべきである。また苫小牧の実証実験については海洋汚染防止法に基づき実施されているとの記載があるが、事業ごとに環境社会影響評価を行う制度を導入すべきである。その際、当該CCS事業の直接及び間接的な影響を受ける可能性のある地域住民の同意取得についても義務とすべきである。

  • 該当箇所:P.16 試掘権及び貯留権の創設について
  • 意見内容:許認可については、環境影響も適切に把握するため、事業者の実施能力のみを見るのではなく、貯留事業ごとの環境影響評価を導入し、第三者による審査(規制委員会の設置等含む)を導入すべきである。少なくとも、経済産業省だけではなく、環境省も共同で、もしくは環境省が審査を行うべきである。
  • 意見理由:「国は、申請のあった者が、技術的能力や経理的基礎を有しているか、既存の鉱業権等を侵害しないかなど、一定の基準から審査し、最も適切かつ合理的に貯留層における CO2 の貯留を行うことができる者を選定し、関係都道府県知事に協議をした上で、許可を行う。」としているが、環境や社会への影響を回避乃至最小限に抑えるために、貯留事業ごとの環境社会影響評価の実施を義務付けるべきである。また審査基準を示し、地域住民が情報を得られるよう、審査に関する情報公開を徹底すべきである。

  • 該当箇所:P.13~14 モニタリング
  • 意見内容:事業者による監視の期間が、CO2が地下に安定的に封じ込められることを確認するまでの一定期間としているが、実際に封じ込められているかどうかを確認すべきである。また、リーケージの有無だけではなく周辺環境への影響についてもモニタリング項目に確実に含めるべきである。
  • 意見理由:「CO2が地下に安定的に封じ込められることを確認する」としているが、封じ込められるかどうかというポテンシャルで測るのではなく、実際に封じ込められていることを確認すべきである。よって封じ込められている、に変更し、封じ込めの確認のための明確な基準を設けるべきである。さらに確認後のモニタリングはJOGMECに移管することが提案されているが、その後JOGMECがいつまでモニタリングを続けるのか記載されていない。炭素除去の議論においては、CO2が大気から持続的に隔離されていることが重要となる。IPCCではDurably(永続的に)と表現されている。国連気候変動枠組条約における炭素除去の議論においては、durablyに明確な定義はないが一案として少なくとも200~300年、という提案もされている。この様な長期に渡り隔離された炭素の維持を担保できる法制度は実際には不可能であり、事業者によるモニタリング終了は、国が責任を引き継ぎ、想定される大量の炭素管理を公費で賄うとすれば、問題を将来世代に先送りするだけであり、解決策にはなっていない。

  • 該当箇所:P.29 コスト削減
  • 意見内容:コスト削減見込みが記載されているのみで具体的なコスト削減策について記載がない。
  • 意見理由:CCSに関する最も大きな課題はコストであるが、具体的な対策が書かれていない。IPCCも指摘するように、気候変動対策としてCCSは削減量でみても経済性でみても優位性にかける。炭素化を進めるためにも、CCSに巨額の補助金を振り向けることは避けられるべきである。

  • 該当箇所:P.34 海外でのCCS事業について
  • 意見内容:海外にCO2を輸出して行うCCS事業への公的支援は行うべきではない。
  • 意見理由:気候変動への歴史的責任を鑑みれば、国内での抜本的な排出削減が必要であり、他国における削減に対する支援もすべきだ。削減しきれないCO2を海外に輸出し固定するような方法は、社会的にも許容されるものではない。CO2を液化し海上輸送することで、ただでさえエネルギーを大量に消費するCCS事業のエネルギー消費量はさらに上がることが推測される。また海外でのCCS事業成果を削減/除去クレジットとして日本国のパリ協定目標に参入するためには、同協定6条の詳細ルールに則りクレジット移管がされることになるが、その内容は8年の国際交渉を経てもまだ合意されていない。パリ協定下の議論でも、制度面を含めた恒久性の欠如、事業クレジット期間後の長期的なリーケッジやリバーサル(反転・放出)への対応で根本的な解決策がないことが指摘されている。公的支援の可否の決定にあたり、環境社会影響評価の実施等を含むガイドラインも策定されていない中、CCS事業の海外展開を推進するのは時期早尚である。

水素・アンモニア政策に関する意見公募

パブリックコメント対象の文章はこちら

  • 該当箇所:全体
  • 意見内容:化石燃料や原子力由来の水素・アンモニアの利用を支援すべきではない。支援を行うとすれば、国内で再生可能エネルギーから製造するもののみとすべき。
  • 理由:本制度は、どのように製造しても現状高価格となる水素・アンモニア等について、製造や運搬の段階での化石燃料との価格差を支援するというものである。しかし、現状で想定されているのは、主に海外で化石燃料から製造する水素・アンモニア等である。「将来的には低炭素化をめざす」としているが、その基準や年限も、目安が示されているにとどまっている。化石燃料由来の水素・アンモニア等を支援し、一度設備の建設や製造を行えば、数十年にわたって使い続けることとなる。それを化石燃料への混焼という形で発電に用いることは、石炭火力も含めた化石燃料発電の利用を当面、すなわち少なくとも数年から10年以上にわたって継続させることとなる。また、水素・アンモニアの発電への利用は、2030年度までに20%程度、2040年度までに50%程度が見通されているにすぎず、仮に専焼が実現するとしても2050年に近い年次と考えられる。化石燃料由来の水素・アンモニア等については、仮に将来的にCCSを付加する計画であったとしても、2050年に近い年次まで化石燃料の利用を温存することにつながる。なお、CCSについても、1970年代から技術の研究がなされているものの、発電所などにCO2回収装置を設置してCO2を回収する事業は、コストの高さなどが原因であまり進んでいない。現時点の実現例のほとんどは、実証実験レベルにとどまるものや稼働が終わったもの、そしてEOR(原油増進回収)で使用されており、化石燃料の増産を促進している。気候変動対策として実施するのであれば、化石燃料の生産につながる技術の利用を前提とすべきでない。
    再生可能エネルギー由来の水素・アンモニア等を海外から輸入する場合にも、さらなる高価格に加え、エネルギー構造の海外依存を改善せず、海外であっても大量の再エネを製造・輸入するリスクは高い。また、原子力由来の水素・アンモニアについても、原子力発電自体の依存度を低減する政策や、原子力発電自体の不安定性・不確実性に鑑み、推進すべきではない。以上より、水素・アンモニアの価格差支援を行うとすれば、国内で再生可能エネルギーから製造する小規模・分散型の水素・アンモニアのみとし、また発電ではなく、代替不可能な分野での使用に限るべきである。

  • 該当箇所:1-4.低炭素水素等の定義
  • 意見内容:「天然ガス改質の際の水素製造に係る CO2排出量と比較して、約70%の排出削減を実現する水準として 3.4kgCO2/kg-H2が適当」との目安が示されているが、これは検討の素材として示されているにすぎず、制度開始時に適用されるものではない。このように、基準なし、その策定時期さえ未定という状況での支援制度の導入は行うべきではない。また、国内・国外の別や製造方法について区別することなく、CO2排出量のみで基準を決めるべきではない。
  • 理由:「3.4kgCO2/kg-H2」の水準ですら、具体的にいつ導入するのか、いつまでに検討するのかすら明記されていない。一方「遡及適用をしない」ことについてのみ明記されている。また、国内・国外の別や製造方法の違いは、国内のエネルギー自給率やエネルギー価格、エネルギー需給体制など国内の気候変動・エネルギー政策に大きな影響を与える。この観点が欠けてはならない。
 

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