【声明】原発推進「束ね法案」の閣議決定に抗議する

福島支援と脱原発2023.7.10

本日、原発の運転期間に関する規定を原子炉等規制法から削除することを含む、原発推進の「束ね法案」(GX脱炭素電源法案)が閣議決定されました。これを受け、FoE Japanでは以下の声明を出しました。


2023年2月28日
国際環境NGO FoE Japan

声明:原発推進「束ね法案」の閣議決定に抗議する

本日、原発推進の束ね法案(GX脱炭素電源法案)が閣議決定された。私たちはこれに強く抗議する。

1.運転期間に関する決定権限を利用側に

今回の「束ね法案」の中には、原子炉等規制法から「原則40年、1回に限り、原子力規制委員会が認める場合は20年延長できる」とする規定を削除し、経済産業省が所掌する電気事業法に移し、停止期間を除外できるようにする規定を盛り込むことが含まれている。「電気事業法」に移すことにより、原子力を「利用」する立場の経済産業省が、原発の運転期間に関する決定権限を持つことになる

原子力規制委員会の山中委員長は、原発の運転期間制限は「利用」政策であるとしているが、これは誤りである。運転期間制限は、2012年、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、安全規制の一環として、与野党合意のもとに原子炉等規制法に盛り込まれたものである。

当時の担当大臣(環境大臣)の細野豪志氏は、国会において「作動するそのそれぞれの機器の耐用年数というものも考慮にした中で40年というところの数字を導き出した」「電気製品をとっても、車を見ても、40年前の技術で今そのまま通用するものは、逆に言うとほとんどない」と説明(注1)。「40年の運転制限制度というのは必要である」とした(注2)。

これが当時の政府見解である。

今になってこれを覆し、原子炉等規制法から削除する理由は見当たらない。福島第一原発事故の教訓を蔑ろにするものである。

原子力規制委員会は、原発運転期間延長を前提とした規制制度案を策定し、昨年12月下旬から今年1月下旬にかけてパブリック・コメントにかけた。寄せられた意見2,016件の大半は、運転期間の延長に反対する内容だった(注3)。

また、2月8日の原子力規制委員会の定例会合および13日の臨時会議で、委員の一人、石渡明氏は、「今回の変更(炉規法からの運転期間の削除)は新たな知見などに基づくものではない。安全規制の後退だ」として反対した。

今回の閣議決定は、これらの反対の声を無視するものだ。

岸田首相は、17日、原発の安全規制について説明できる準備をしたうえで閣議決定を行うべきと指示したとされるが、それからわずか11日しかたっておらず、安全規制の内容はなんら具体的に示されていない。

従来から、運転期間30年を超える原発に対しては高経年化技術評価制度として、原子力規制委員会による10年ごとの審査が行われていた。今回、原子力規制委員会が示している規制の概要は、その延長線に過ぎない。老朽化した原発の評価および審査にはさまざまな限界がある。規制委が審査をすれば安全性が担保されるわけではない。

2.原発は「エネルギー安全保障」「電力安定供給」に役立たない

政府は、原発推進の理由として、原発が「エネルギー安全保障」「電力安定供給」「自己決定力」などに貢献するとし、原子力基本法に原発の基本原則を追加するとしている。しかし、原発は「エネルギー安全保障」にも「電力安定供給」にも資するわけではない燃料となるウランは、化石燃料と同様海外に依存しており、国際情勢によって左右される。原発がテロや戦争のターゲットになる可能性もある。

原発はトラブルが多く、1997~2010年までの事故故障等の報告件数は267件にものぼる。原発が計画外に停止すれば広範囲に大きな影響をもたらし、需給ひっ迫リスクを高める。
原発稼働があたかも電気料金の高騰の対策になるかのような説明がされているが、世界的にみても、原発の発電コストは増加をつづけている。原発の建設費はすでに1兆円を超え、今や原発は最も高い電源となっている(注4)。日本でも、再稼働のための安全対策費、維持費、廃炉のための費用がふくれあがっている。東京電力は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働のための安全対策費に1兆円以上も費やしている(注5)。

3.「束ね法案」は熟議民主主義に反する

そもそも、「束ね法案」という形で、性格や位置づけの異なる法案を一気に国会に提出することは問題だ。国会での審議を最小限にし、数の論理で強行突破しようという意図が透けて見える。国民を軽視し、熟議民主主義に反する手法である。とても納得のできるものではない。

私たちは、原発推進「束ね法案」の閣議決定に抗議し、撤回を求める。

注1)第180回国会衆議院環境委員会(2012年6月5日)
注2)第180回国会衆議院環境委員会(2012年6月15日)
注3)第71回原子力規制委員会(2023年2月8日資料1)
注4)LAZARD’S LEVELIZED COST OF ENERGY ANALYSIS — VERSION 15.0, 2021年10月
注5)日経新聞「東電の柏崎刈羽原発、安全対策費約2倍に」(2019年7月26日)

【Q&A 原発の運転期間の延長、ホントにいいの?】

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