【パブコメ】電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会 第八次中間とりまとめ(案)についての意見を提出しました

気候変動

8月17日(水)まで意見募集が行われている「電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会 第八次中間とりまとめ(案)」に対し、FoE Japanからも以下の意見を提出しました。

「電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会 第八次中間とりまとめ(案)」に対する意見

・該当箇所: 
全体

・意見内容:
脱炭素化とエネルギーの安定供給をすすめるために、新たな制度はむしろ逆効果となる可能性があり、導入は撤回すべき。

・理由:
①原発と火力発電の温存は問題である
「発電・供給時にCO2を排出しない電源(=脱炭素電源)」を対象としているが、実際に意図されているのは、原子力と、脱炭素技術に段階的にシフトすることを理由として進める火力発電の温存・延命である。

火力発電の新設や維持は1.5℃目標に整合せず、原発については、核のごみの処分先もきまっていない上、トラブル続きで不安定であり、大きなリスクとコストを伴う。

気候危機への対応(脱炭素化)、持続可能なエネルギー供給、地域分散型の国産エネルギー供給、安定・安価なエネルギー供給を実現するためには、原子力や化石燃料から脱却し、省エネルギーとエネルギー効率化を大前提として、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー供給体制に大きくシフトする必要がある。

そのためには、大規模電源をベースロードとして活用する現在のシステムから、再エネを中心として供給も需要も柔軟に調整するシステムへと抜本的な転換が求められる。

②柔軟な調整システムの導入こそ優先されるべきであり、大規模電源の新設促進はそれと逆行する
「新たな制度」案は、大規模な電源で供給の大部分を賄うという現在のシステムが前提とされているが、柔軟な調整システムの導入こそ優先されるべきである。大規模な原子力や火力発電の新設を促したり既設電源の改修を促したりして温存・推進することは、柔軟な調整システムへの移行をさまたげ、需給ひっ迫などのリスクを高める側面がある。

③進めるべきは再生可能エネルギーの導入促進であり、新たな制度は不要
再生可能エネルギーについては、すでにFIT/FIP制度もあるため、その改善を含め別途議論すべきであり、新たな制度は不要である。

④当初同様の趣旨で導入された容量市場も機能せず
すでに取引開始済みの容量市場も、当初は電源の新規投資も目的としていたはずだが、電源の新設を促すという意味では機能せず、消費者の負担で古い電源が温存される構造となっている。新たな制度も同様の結果となるおそれがある。国民負担の観点からも、導入は見直すべきである。

・該当箇所: 
p.3 「仮に、現行容量市場の上限価格以下の価格を長期固定した場合、参考図 1 のとおり、脱炭素電源の固定費回収の予見可能性確保には一定程度資するものの、多くの脱炭素電源にとって一部に留まり、固定費回収の大部分は本制度措置以外からの収益(他市場収益)に依存することとなる。それにより、将来収入のダウンサイドリスクが残り、必要な脱炭素電源への投資が進まない場合、中長期的な観点から需要家に対する安定供給上のリスクや価格高騰リスクが生じることになり、本制度措置の目的を達成できないこととなる。」

・意見内容:
将来ダウンサイドリスクが残るような電源については支援を行うべきではない、すなわち、そのような電源を想定している本制度は、撤回すべきである。

・理由:
「将来収入のダウンサイドリスクが残る」ということは、将来コスト回収が見込めない可能性がある、将来他の電源にくらべ価格競争力を持たないおそれがあるということである。

水素・アンモニアの混焼・専焼やCCUS、原子力などはまさに、将来にわたり高コストが懸念されている電源である。そのような電源を消費者の負担によって支援することは、長期的にみて大きなリスクであり、政策の誤りである。それよりも、すでにある技術で今後コスト低下が見込まれる再生可能エネルギーやエネルギー効率化・省エネのほうに投資を回すべきである。

・該当箇所: 
p.6 制度の対象について

・意見内容: 
原子力については、第6次エネルギー基本計画で、新増設・リプレースは行わないものとして整理されていることを明記すべきである。
またそのため、本制度の対象として原発の新設やリプレースを含めることは適当とは言えない。原子力については対象としないことも併せて明示すべき。

・理由:
第6次エネルギー基本計画で原発の「新増設・リプレースは行わない」としているにも関わらず、その記述がないことは、不備・不適切である。


・該当箇所: 
p.7 (a)-2 アンモニア・水素混焼を前提とした LNG 火力の新設案件
「(a)-2 については、LNG 火力の新設案件となるため、CO2 を排出する新たな火力発電所の新設案件となるが、調整力として期待できる側面もあることから、本制度措置の対象とすることとした。」

・意見内容:
脱炭素・脱化石燃料に向けて、LNG火力発電についても今後は新設すべきではない。

・理由:
遅くとも2050年までに「脱炭素社会」を実現するためには、発電部門については特にいち早く、「脱化石燃料、再エネ化」を実現する必要がある。そのために、LNG火力発電についても新設はできず、既存のものを順次廃止していく必要がある。
また、2022年のG7首脳会合コミュニケでも、「2035年までに発電部門の大宗の脱炭素化を」求めるとしている。この内容に整合するエネルギー政策のためにも、LNG火力発電も新設すべきではない。

・該当箇所: 
p.7~8
(b)-1 既設の石炭火力をアンモニア・水素混焼にするための改修案件
(b)-2 既設の LNG 火力をアンモニア・水素混焼にするための改修案件
「(b)の既設火力の改修案件は、短期的な供給力の増加には寄与しないものの、中長期的にみて供給力の確保に繋がる投資といえるため、本制度措置の対象とすることとした。」

・意見内容:
既設の石炭火力やLNG火力をアンモニア・水素混焼にするための改修案件は、対象とすべきではない。

・理由:
既設の石炭火力やLNG火力にアンモニア・水素を混焼するといっても、2030年度の目標値がアンモニア20%、水素10%であり、その実現可能性も不確かなものである。それ以外の燃料の大部分が石炭やLNGなど化石燃料である。実質的に、石炭火力やLNG火力の温存・延命である改修を「脱炭素電源」とすることは、制度の趣旨とも大きく乖離する。


・該当箇所:
p.11  【論点②】グレーアンモニア・水素を燃焼させる発電設備への新規投資

・意見内容:
本制度は「脱炭素電源」の新設を促すためのものであるとされている。グレーアンモニア・水素は、その生産・輸送段階で大量のCO2を排出する。仮に「発電・供給時にCO2を排出しない」としても、「脱炭素電源」とすることは適当ではない。対象からはずすべきである。

・理由:
2022年の高度化法の改正で「グレーアンモニア・水素を含む全てのアンモニア・水素を非化石エネルギー源として位置付け、利用を促進することとしている」ことを理由としているが、ライフサイクルで見た場合に化石燃料とほぼ同様にCO2を排出するグレーアンモニア・水素を燃焼させる発電設備を「脱炭素電源」とすることは、制度の趣旨とも大きく乖離する。


・該当箇所:
p.11  【論点③】バイオマス(混焼、既設の改修)のための新規投資

・意見内容:
「既設火力をバイオマス専焼にするための改修」についても、対象とすべきではない。

・理由:
現在、大規模なバイオマス発電所は、その燃料のほとんどを輸入に頼っており、燃料輸入量は激増している。燃料生産段階での大規模な森林伐採や開発で森林や土壌中に蓄えられている炭素がCO2として大気中に放出されるのみならず、生物多様性が失われる。また、加工・輸送段階でも大量のCO2を発生させる。既設火力発電所をバイオマス専焼に切り替えれば、その燃料は、国内産でまかなうことはできず、燃料を輸入することになる。現在生じている問題がさらに拡大することが予想される。
参考:レポート「バイオマス発電は環境にやさしいか?”カーボン・ニュートラルのまやかし”」2021年5月 FoE Japan https://foejapan.org/issue/20210514/3823/

 

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