【G7首脳会合コミュニケに対する声明】来年のG7議長国である日本は脱化石燃料に向け政策転換を

気候変動2023.7.10

 6月28日、ドイツで開催されたG7首脳会議においてコミュニケが採択された[1]。同コミュニケで、G7首脳はロシアによるウクライナ侵攻に対する深い懸念を示した上で、パリ協定の目標達成に向け、気候変動対策やエネルギー政策に取り組む決意を示した。

 5月の気候・環境・エネルギー会合におけるコミュニケで示された通り[2]、G7は改めて、2035年までに国内電力部門を完全に、もしくは大部分を脱炭素化することや(a fully or predominantly decarbonised power sector by 2035 [3])、排出削減対策の講じられていない化石燃料エネルギーセクターへの国際的な公的支援を2022年末までに終了することなどにコミットしたが、恣意的な解釈のできる文言は残されたままであり、実施段階での実効性が懸念される。また、LNGに関しては、脱ロシア化石燃料依存等のため一時的な措置として投資を認める文言が今回のコミュニケに追加され、5月の合意内容が弱められた。気候変動対策およびロシアの化石燃料依存からの脱却のためには、新規のガスインフラへの投資を継続するのではなく、化石燃料依存そのものから脱却すべきである。

 日本は、来年のG7議長国を務める。しかし、日本政府は、第6次エネルギー基本計画改定において2030年度の電源構成を、化石燃料41%(うち石炭火力で19%)、原発20〜22%、再生可能エネルギー36〜38%としている。そのため「2035年までの電力部門での脱炭素化達成」のためには、国内政策の見直しが急務である。実用化・商用化の見通しが不確実で、排出量削減効果も疑問視される水素・アンモニア、CCSなどの燃料や技術をあてにしていては、2035年に間に合わない可能性が高い。また原発は、トラブルや事故、とてつもなく長い年月保管を要する核のごみといったリスクやコストを考慮すると、再稼働すべきではない。したがって再生可能エネルギー中心の電力システムへの移行が必要であり、エネルギー需要の抜本的な削減も求められる。

 日本はG7の中でも2番目に大きな額の公的資金を化石燃料事業に提供している。2018年から2020年の間、年間平均10億9千万ドルを、海外の石油・ガス・石炭事業に拠出している[4]。

 今回のG7首脳コミュニケでは、2022年末までに、排出対策の講じられていない化石燃料エネルギーセクターへの新規の国際的な公的支援を終了することに条件付きでコミットした。一方、日本政府は昨年のG7首脳宣言でのコミットメントにもかかわらず、2022年以降も海外の新規の石炭火力発電事業への公的支援を継続する姿勢を崩していなかった。

 海外の新規の化石燃料エネルギー事業全般への公的支援停止についても、日本政府による文言の解釈と運用を注視する必要がある。石炭火力発電と同様、「新規」の解釈についての問題は言うまでもないが、それに加え、日本政府が現在、海外でも推進しようとしているアンモニア・水素混焼技術が「排出対策」の一部として含まれるようなことがあってはならない[5]。

 現在、ロシアのウクライナ侵攻や、燃料価格の高騰、円安など、さまざまな要因が重なり、人々の生活とエネルギー供給に大きな影響が生じている。電力供給の逼迫に対応するために、火力発電所の運転再開も進められている。

 日本は一次エネルギーの約9割、電力の75%を化石燃料に依存している。このような状況の中「エネルギー安全保障」の議論では、原発再稼働や石炭火力の維持を求める声も強くなっている。しかし、原発は、莫大な安全対策費が必要で、燃料も輸入に依存している。事故やトラブルも多く、戦争やテロの攻撃対象になるリスクもある。輸入しなくてはならない化石燃料への依存こそ、エネルギーコスト上昇と不安定化をもたらしてきた。また化石燃料に頼ることは、気候変動を加速させ、さらなる被害をもたらすだろう。

 省エネの徹底や、大量消費・大量生産・大量廃棄をゆるす社会のあり方の抜本的な転換、地域社会のニーズと合意に基づく再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムの推進が求められる。

[1] G7 Leaders’ Communiqué (2022年6月28日)https://www.g7germany.de/g7-en/g7-documents
[2] G7 Climate, Energy and Environment Ministers’ Communiqué (2022年5月27日) https://www.g7germany.de/g7-en/g7-documents
[3] 5月に示されたコミュニケには”fully”の文字はなく、同コミュニケのほうがより強い文言になっている。
[4] Oil Change International “Opportunity to shift G7 finance from fossils to clean energy” 2022年5月 https://priceofoil.org/content/uploads/2022/05/OCI-G7-Fact-Sheet.pdf
[5] 国際的な議論では、化石燃料インフラに対する排出対策としてはCCSがOECDルールの中で認められている。水素・アンモニアは、現時点で化石燃料起源が主であり、排出削減効果が疑問視されている。こちらの声明も参照のこと「日本政府は海外石炭火力支援に関するOECDルールの解釈を見直すべき ~アンモニア混焼等は支援対象外~」2022年02月25日 https://sekitan.jp/jbic/2022/02/25/5463

以上