【プレスリリース】ミャンマーでの事業について主要株主13社から回答。一部は日本企業4社の出資継続に懸念を表明
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メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan
Justice For Myanmar
アーユス仏教国際協力ネットワーク
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
上記6つの市民団体は2022年1月18日、ミャンマーで問題のある4つの事業に投資を続けているENEOS株式会社、住友商事株式会社、丸紅株式会社、三菱商事株式会社の主要株主125企業・機関に要請書(日本語/English)を送付しました。要請書は、4社の出資する事業がミャンマー国軍の資金源となる可能性があるため、ミャンマー国軍による殺人、迫害、恣意的拘束、性暴力、強制失踪、拷問などの国際犯罪や重大な人権侵害を支えることがないよう、4社へのエンゲージメントを株主に求めたものです。
この要請に対し、今日までに13社から実質的な回答があり、内3社は私たちの要請を受けて企業にエンゲージメントを行なったと回答しました。また、別の2社は、ミャンマーに関して今回の要請には含まれていなかった企業に既に働きかけていると述べました。
エンゲージメントを行なうため、更なる情報や意見を私たちに積極的に求める欧州の投資家もあった一方、日本の投資家は、1社を除き、自社の人権方針等を説明するといった要請内容に対応しない回答を寄せ、エンゲージメントの有無を含む状況も明かしませんでした。
4社が関与するのは、ティラワ経済特別区開発、イェタグン・ガス田開発、ランドマーク事業(ヨマ・セントラル・プロジェクト)、ティラワ港湾ターミナル事業の4事業です。
イェタグン・ガス田開発については、三菱商事とENEOSが報道を通じて撤退の意向を私たちが株主宛要請書を送付した後に表明していますが、私たちは引き続き、ミャンマー国軍に資金が渡らない形で撤退するための手立てを尽くすこと、また、近い将来に枯渇が予想される同ガス田の廃坑に責任を取った上で撤退することを求めていきます。
ティラワ経済特別区開発は、同経済特別区管理委員会が10%を事業に共同出資しており、配当金の一部が国軍に流れる可能性があります。クーデター後に国軍は同委員会の委員長を逮捕・拘束し、その後、新委員長を任命しており、事業全般への国軍の関与が増すことが懸念されます。日本政府は、現在のところ、配当は支払われず、事業の再投資に回していると説明していますが、この措置を長期的に続けられるかは不明です。
ランドマーク事業(ヨマ・セントラル・プロジェクト)は、用地がミャンマー国鉄の土地をサブリースするものです。現在、工事は中断していますが、国軍はミャンマー国鉄を管轄するミャンマー鉄道運輸省を実効支配しており、土地の賃料が国軍に流れることを確実に回避することが可能であるのか懸念されます。
ティラワ港湾ターミナル事業に関しても、国軍が関連省庁を実効支配しており、ミャンマー港湾公社(MPA)とのコンセッション契約の下、日本企業の支払う使用料等が国軍に流れることを確実に回避するのは不可能と考えられます。
ミャンマーでは国軍による暴力や人権侵害が止む気配は一向になく、国軍の恐怖作戦による犠牲者が日々増えています。日本企業が関与する事業がミャンマー国軍の資金源とならないよう、速やかに適切な措置が取られなければなりません。私たちは、4社の主要株主である企業・機関に、4社に対するさらなる働きかけを求めると同時に、4社がミャンマー国軍への資金の流れを防ぐための措置を講じない場合には投資の引き揚げも検討するよう求めます。
同要請書に掲載した表
表:各事業で懸念されるミャンマー国軍への資金の流れと各企業に求められる措置
*出典はPDFを参照のこと。
事業名及び出資者(出資比率) | 国軍に資金が流れる可能性 | 事業者に求められる措置 |
ティラワ経済特別区(SEZ)開発 (*1) ・日本民間6社(39%)住友商事(32.2%)丸紅(32.2%)三菱商事(32.2%)みずほ銀行(1.13%)三井住友銀行(1.13%)三菱UFJ銀行(1.13%) ・国際協力機構(10%) ・ミャンマー・ティラワSEZホールディングス(41%) ・ティラワSEZ管理委員会(10%) | ・ティラワSEZ管理委員会が10%を共同出資しているため、配当金の一部が国軍に流れる可能性 ・ティラワSEZ管理委員会の人事を国軍が既に掌握(クーデター後に委員長を逮捕・拘束し、その後、新委員長を任命)しており、事業全般への国軍の関与が増す可能性 | ・配当金の支払停止 ・SEZ運営上の意思決定における国軍の影響力排除 ・国軍を利することを回避できない場合は撤退 |
イェタグン・ガス田開発 (*2) ・ペトロナス・チャガリ社(40.9%) ・ミャンマー石油ガス公社(MOGE)(20.5%) ・PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)(19.3%) ・JXミャンマー石油開発(19.3%)JX石油開発(ENEOS 100%子会社)(40%)三菱商事(10%)経済産業大臣(50%) | ・国軍は既に関連省庁、中央銀行、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)を実効支配しており、天然ガス田と輸送パイプラインに対するMOGEの出資分の利益等、各種収入が国軍に利用されることを確実に回避するのは不可能 ・生産分与契約等に基づく天然ガス生産と輸送に課される各種支払金が国軍に流れることを確実に回避するのは不可能 | ・国軍が支配する事業体へのあらゆる支払金を停止し、民主化が確立するまで保護された口座にプール・国軍を利することを回避できない場合は撤退 |
ランドマーク事業 (*3) ・日本SPC 三菱商事 三菱地所 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN) ・現地SPAグループ・アジア開発銀行(ADB) ・国際金融公社(IFC) | ・国軍は既に関連省庁を実効支配しており、事業用地はミャンマー鉄道運輸省ミャンマー国鉄の土地をサブリースするため (*4) 土地の賃料が国軍に流れることを確実に回避するのは不可能 | ・土地の賃料も含め、事業収益が国軍を利することがないか調査し、国軍を利することを回避できない場合は撤退 |
ティラワ港湾ターミナル (*5) ・日本SPC(35%)住友商事(36%)豊田通商(34%)JOIN(30%) ・上組(51%) ・EFRグループ(14%) | ・国軍は既に関連省庁を実効支配しており、ミャンマー港湾公社(MPA)とのコンセッション契約の下、使用料等が国軍に流れることを着実に回避するのは不可能 | ・国軍がMPAを事実上統治下に置いていることから、国軍が支配する事業体へのあらゆる支払金を停止し、民主化が確立するまで保護された口座にプール・国軍を利することを回避できない場合は撤退 |
本件に関する問合わせ先:
メコン・ウォッチ
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