【プレスリリース】石炭火力にJICA債資金を充当しないとの説明を巡って 環境NGOが米国証券取引委員会に異議申立て

化石燃料

日本語版リリース発出団体:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan

 
11月24日(米国東部時間23日)、国際協力機構(JICA)のドル建て債券発行時に、調達資金を石炭火力発電事業に充当しないとするJICAの説明が事実と異なるとして、国内外の環境NGO5団体(※1)が米国証券取引委員会に異議申立て(※2)を行いました。

JICAは2021年4月20日のドル建て債券発行時に米国証券取引委員会に提出した目論見書の中で、債券発行により調達した資金を石炭火力発電事業に充当しない、と説明しています(※3)。しかし、JICAはマタバリ石炭火力発電事業フェーズ1(バングラデシュ)の本体工事及びインドラマユ石炭火力発電事業(インドネシア)のエンジニアリング・サービスに対する融資について貸付実行中であると同時に、マタバリ石炭火力発電事業フェーズ2及びインドラマユ石炭火力発電事業の本体工事に対する融資について契約締結に向けた手続を行ってきています。債券発行による調達資金は、これら事業の融資資金の拠出元となるJICAの有償資金協力勘定で一括して管理されています。

このため、JICAの説明が事実と相反していること、この記載によって同債券の気候関連リスクに大きな差異が生じていること、詐欺・不正等を禁じている米国証券取引法に反していることから、米国証券取引委員会への異議申立てを行いました。

なお、本件に関連して、2021年3月にはJICA債保有機関等39社に対して、石炭火力発電事業への新規支援を行わないようJICAへのエンゲージメントを求める要請書を提出し、複数の金融機関からエンゲージメントに前向きな回答を得ています(※4)。

本件に関するお問合せ

 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝
   tanabe@jacses.org

※1:「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、国際環境NGO FoE Japan、Friends of the Earth US、Market Forces、Mighty Earth
※2:米国証券取引委員会に提出した異議申立書
https://www.marketforces.org.au/jica-faces-us-securities-complaint/
※3:JICAが米国証券取引委員会に提出した目論見書
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001679198/000119312521122542/d148810d424b5.htm
※4:【プレスリリース】債券保有者もJICAに働きかけ「バングラデシュとインドネシアの石炭火力発電事業への支援停止を」
https://sekitan.jp/jbic/2021/06/24/5090

(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
200万kW(100万kW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(100万kW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を締結(2013年3月)。現在もE/S借款の支払いを続けている。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

 

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