【NGO共同声明】気候リーダーズサミットで海外石炭火力支援について韓国に後れをとる日本政府~インドネシア、バングラデシュへの石炭火力支援中止の決断を

化石燃料

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
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気候ネットワーク

4月22日、23日にジョー・バイデン米大統領の主催で、各国の首脳が気候変動対策について協議する気候リーダーズサミットが行われましたが、日本政府による海外の石炭火力発電への支援について、新たな発表はありませんでした。世界各国が野心的な目標の発表を求められていた中、私たちはこの日本政府の消極的な姿勢に失望せざるを得ません。実際、今回のサミットでは、韓国の文在寅大統領も海外の石炭発電支援について停止を表明しました(※1)。日本政府は気候変動対策において国際的なリーダーシップを示すことのできる絶好の機会を逃す結果となってしまいました。

4月16日のワシントンDCでの日米首脳会談では、気候変動に関する日米気候パートナーシップが創設され、両国政府が自国のみならず海外への公的資金支援においても2050年までのネットゼロ排出達成と整合的にすることを表明していました(※2)。一方、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業(インドラマユ)およびバングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業フェーズ2(マタバリ2)に対しては、依然として国際協力機構(JICA)による支援が見込まれています。JICAがインドラマユおよびマタバリ2への公的支援を行うことは、この2050年までのネットゼロ排出を達成するとのコミットと大きく矛盾することになります。

2020年10月に国際エネルギー機関(IEA)が発表した World Energy Outlook 2020 によれば、既存の化石燃料エネルギーインフラおよび現在建設中のすべての発電所が、その寿命まで過去と同じように使用された場合、それらの排出量は2070年までに世界の平均気温を1.65度上昇させるとのことです(※3)。気候変動対策の国際的な枠組みであるパリ協定の1.5度目標を達成するためには、石炭のみならず石油やガスを含めた化石燃料への公的支援を止めることが必要です。

日本政府は今回の気候リーダーズサミットで国際社会が一致団結する必要性を強調しましたが、世界の気候変動対策において自らが足を引っ張っていることを自覚すべきです。6月11日〜13日にイギリス南西部コーンワルで開催される主要7カ国首脳会談(G7サミット)に向けて、日本政府はインドラマユおよびマタバリ2に対する公的支援の撤回を表明するとともに、全ての化石燃料事業への公的支援をやめるための国際的なリーダーシップを発揮していくべきです。

脚注
※1: https://www.youtube.com/watch?v=6xa7yyypznY (1:18:39)
※2: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100178078.pdf
※3: International Energy Agency (IEA), (2020), World Energy Outlook 2020, pp. 102, IEA, Paris, https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2020/achieving-net-zero-emissions-by-2050.

<本件に関するお問い合わせ先>
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺
tanabe@jacses.org

(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
200万kW(100万kW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(100万kW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を締結(2013年3月)。現在もE/S借款の支払いを続けている。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

 

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