【プレスリリース】ODA案件インドラマユ石炭火力にNo!日・インドネシア両首脳に中止を求める要請書を提出

脱化石燃料

10月20日に行なわれる日・インドネシア首脳会談を前に、19日、日本とインドネシアの8 市民団体は、国際協力機構(JICA)が支援を続けるインドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(100万kW)の中止を求める要請書を両政府に提出しました。

同要請書では、西ジャワ州インドラマユ県における新規の石炭火力発電所の建設を見直すべき理由として、以下の5つの問題点を指摘しています。
(1)ジャワ・バリ電力系統における電力の供給過剰の状態
(2)インドネシア国有電力会社の財務状況をさらに圧迫
(3)気候変動対策/脱石炭の動きに逆行
(4)環境社会問題(住民の生計手段への悪影響、大気汚染の悪化、住民協議等の不備)
(5)建設反対の声をあげる住民への深刻な人権侵害

石炭火力発電所の輸出支援について、日本政府は今年7月、脱炭素化への移行方針等が確認できない国へは「原則支援しない」との新方針を「次期インフラシステム輸出戦略骨子」の中で決定しましたが、インドラマユでの新規建設は、すでにインドネシア政府側との話し合いが進んでいる案件として例外扱いとされています。

しかし、同発電所の本体工事は依然始まっておらず、このまま適切な検証もなく、約2,000億円もの巨額を投じて必要のない、また、環境社会負荷なども大きい石炭火力発電所の建設を進めることは理に適いません。両政府は、新規のインドラマユ石炭火力発電所の建設中止に踏み切るべきです。

詳細は以下の要請書本文をご覧ください。

(以下、要請書本文)


>要請書PDF版はこちら(PDF)

2020年10月19日

インドネシア共和国大統領 ジョコ・ウィドド 様
内閣総理大臣 菅 義偉 様

インドネシア西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画の中止を求める要請書

インドネシア及び日本の以下の署名団体は、インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画[1](1,000 MW)(以下、同計画)について、これ以上、インドネシア政府が推進しないよう、また、日本政府が支援を行なわないよう要請します。

私たちは、国際協力機構(JICA)が2009年から2010年にかけて同計画の協力準備調査を実施したこと、また現在、エンジニアリング・サービス(E/S)借款のスキームの下、基本設計などコンサルティング・サービスのためインドネシア国有電力会社(PLN)に対する貸付を行なっていると理解しています。E/S借款の融資契約は2013年に締結されたものです(17億2,700万円。現在の為替レートで約2,415億ルピア)。そして、同計画の本体工事のため、JICAは18億4,500万ドル(約27兆2,000億ルピア。約1,943億円)の借款供与を期待されています。[2]

しかし、同計画の本体工事は依然始まっていません。したがって、両政府が以下に示す事項を考慮しながら同計画の必要性を見直し、中止を決定することは決して遅きに失したことではありません。同石炭火力発電所が建設されるべきでない理由は主に5つあります。

(1) 同計画は、ジャワ・バリ電力系統が電力の供給過剰の状態にあるため、エネルギー安全保障の観点から必要ないものです。インドネシア政府の電力供給事業計画(RUPTL)(2019-2028)では、同電力系統の2028年までの電力供給予備率は30~45%で推移することが示されています。また、つい先日、インドネシア国営企業省(BUMN)がエネルギー鉱物資源省(ESDM)及び投資調整庁(BKPM)に宛てた書簡(2020年9月18日付)のなかでも、ジャワ・バリ電力系統における電力の供給過剰状態が明らかにされました。[3] さらに、新型コロナウイルスによる経済への甚大な影響を考慮すれば、電力需要の伸びも鈍化するでしょう。現在の電力供給過剰と継続的な景気後退を考えれば、電力需要の過去の成長予測に基づき同計画をこのまま推進していくことは賢明とは言えません。インドネシア政府による35 GWプログラム、そして同計画の必要性が再検討されるべきです。

(2) 同計画は、JICAの借款で本体工事が推進されれば、財務的な問題が指摘されてきた[4] PLNに追加的な負担を課すことになります。PLNやインドネシア政府は上記で述べたような必要のない発電所のため、数十年も返済しなければなりません。この負担は、国有会社の財務的困窮を救済するため、将来世代を含むインドネシアの消費者、もしくは、納税者に容易に転嫁されうるものです。そのような理不尽な負担がインドネシア市民に課せられるべきではありません。

(3) 同計画は、座礁資産になるリスクを抱えています。パリ協定の長期目標を達成するためには、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の稼働を完全に停止する必要があるからです。[5] 同発電所の建設は、高効率と言われる超々臨界圧(USC)の技術を利用するにせよ、将来の温室効果ガスの排出を長期にわたりロックインしてしまうため、パリ協定の目標と整合しないことは明らかです。同計画は、気候危機に対処し、脱炭素社会に向けた信頼のおける移行を実現していくため、許容されるべきではありません。

(4) 同計画は、環境社会に係る懸念のため、インドラマユの現地コミュニティーによる強い反対に直面してきました。
(i) 同計画は、発電所を農地の中であり、かつ漁場に沿った場所に建設するため、現地の何千人もの農家や漁師の生計手段を奪う、あるいは、悪影響を及ぼします。小作農や日雇い農業労働者は、先祖代々、年間を通してコメや野菜、果実を育ててきました。零細漁民は季節が来ると、「レボン」と呼ばれる小エビを沿岸で獲ってきました。金銭補償、また、家畜の飼育や技術トレーニングなど生計回復計画は、提供されたとしても、住民の生計手段を回復するには不十分であり、したがって、真の解決策にはなりません。
(ii) 同計画によって、現地コミュニティーが健康被害を受けるリスクはより高いものになります。2011年に商業運転を開始した既存の石炭火力発電所(330 MW × 3基)によって、現地コミュニティー、特に子どもたちの中には、すでに咳や呼吸器系疾患などの健康被害に苦しんできた住民がいます。新規の発電所は硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、PM2.5を含む大気汚染物質を排出するにもかかわらず、日本の石炭火力発電所のほとんどで備えられているBAT(利用可能な最良の技術)を一切使用しない予定です。[6]
(iii) 同計画は、現地の農家と漁師に対する適切な協議や十分な情報公開を確保できていません。彼らは同計画によって甚大な影響を受けるにもかかわらず、環境アセスメント(EIA)報告書の策定にあたり、協議会への招待を一切受けませんでした。同様に、土地収用・移転行動計画(LARAP)の策定にあたっても、影響を受ける小作農らの参加は一切ありませんでした。こうしたプロセスにおける不備は、明らかにインドネシア法に照らして違法なものです。

(5) 同計画は、現地で深刻な人権侵害を引き起こし、また、表現の自由を脅かしてきました。同計画に反対の声をあげてきた複数の農民が冤罪の犠牲者となりました。つまり、でっちあげの罪状で起訴され、5、6ヶ月間、刑務所に収監されました。インドネシア法、すなわち、環境保護管理に関する2009年法律第32号に基づけば、インドネシア政府は環境を守ろうとする農民らを保護しなくてはなりませんが、それを怠っています。同様に、日本政府も、「開発協力の適正性確保のための原則」として、「当該国における民主化、法の支配及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う」ことが明記されている開発協力大綱を遵守できていません。

したがって、私たちは、インドネシア及び日本の両政府が上述したリスクや懸念事項を精査し、同計画を取消すという賢明な決断を下すよう強く要求します。現地コミュニティーの生活や環境を犠牲にして、また、将来世代の機会や選択、そして地球規模の気候と引き換えに、同計画が推進されるべきではありません。

本件についてご配慮いただき、両政府の真摯なご対応を宜しくお願い致します。

以上

インドネシア環境フォーラム(WALHI/FoEインドネシア)
インドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワ
国際環境NGO 350.org Indonesia
Bersihkan Indonesia Coalition(クリーンなインドネシアのための連合)
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク

Cc: 財務大臣 麻生 太郎 様
外務大臣 茂木 敏充 様
経済産業大臣 梶山 弘志 様
環境大臣 小泉 進次郎 様
国際協力機構 理事長 北岡 伸一 様
駐インドネシア日本国大使 石井 正文 様
インドネシア 財務大臣 Sri Mulyani 様
インドネシア エネルギー鉱物資源大臣 Arifin Tasrif 様
インドネシア 国家開発企画庁長官 Suharso Monoarfa 様
インドネシア 環境林業大臣 Siti Nurbaya 様
インドネシア国有電力会社(PLN)社長 Zulkifli Zaini 様

【連絡先】
WALHI西ジャワ
 Jl. Pecah Kopi No.14, Bandung
 Tel : +62 (0)22-20458503

国際環境NGO FoE Japan
 Tel:+81 (0)3-6909-5983 Fax:+81 (0)3-6909-5986

脚注:
[1] https://www.jica.go.jp/english/our_work/evaluation/oda_loan/economic_cooperation/c8h0vm000001rdjt-att/indonesia130328_02.pdf
[2] https://www.bappenas.go.id/files/bluebook_dan_greenbook/DRPLN%20-%20JM%202015-2019%20Revisi%202019/2019-06-26%20-%20Draft%20Blue%20Book%20Revisi%202019%20Final%20Edition.pdf
[3] https://money.kompas.com/read/2020/10/02/074542126/terlalu-banyak-pembangkit-listrik-pln-oversupply
[4] https://ieefa.org/ieefa-report-in-a-deepening-debt-hole-of-34-billion-indonesias-pln-must-stop-digging/
[5] https://climateanalytics.org/publications/2019/coal-phase-out-insights-from-the-ipcc-special-report-on-15c-and-global-trends-since-2015/
[6] https://sekitan.jp/jbic/wp-content/uploads/2014/01/Comparison-of-pollution-control-tech-v11_en.pdf
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
200万kW(100万kW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(100万kW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を締結(2013年3月)。現在もE/S借款の支払いを続けている。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

 

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