国会審議:日本の石炭火力輸出支援は止めるべき―「輸出前提ではない議論を」

気候危機を回避するため、世界で脱石炭の動きが加速するなか、国内外で石炭火力発電所の建設を依然として推進している日本には、国際社会から厳しい批判の声があげられてきました。

このうち、海外の石炭火力に対する日本の公的支援については、COP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)などの国際会議の場で海外の批判を直に浴びた小泉環境大臣が国内で問題提起したことを契機に「見直し」の議論が行なわれることになりました。今年6月までに関係省庁で議論し、インフラ輸出戦略の骨子において一定の結論を得、エネルギー基本計画とも関連づけていくとの方針が示されています。

3月19日、この「見直し」議論が始まる前に、参議院「政府開発援助(ODA)等に関する特別委員会」で、井上哲士 議員(日本共産党)は、「輸出前提の見直しでは、パリ協定の目標達成はできない。」とし、日本政府が石炭火力の輸出に対する公的支援を止めるよう求めました。また、国際協力機構(JICA)が援助を続けているインドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業に言及しながら、日本が途上国の温室効果ガス排出削減の足を引っ張らぬよう、根本的な見直しが必要と正しました。

現在も、国際協力銀行(JBIC。日本政府が全株式保有)がベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業(三菱商事、中国電力が出資)に対する新規融資を検討するなど、日本政府の方針転換は見られません。環境省が4月1日から「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」を開催することを公表しましたが、関係省庁間で、「輸出前提」ではない根本的な見直しに向けた議論が行なわれるべきです。

以下、2019年3月19日の参議院・ODA等に関する特別委員会での質疑内容全文です。
後半に石炭火力輸出の公的支援に関する質疑がなされています。前半は、インドラマユ石炭火力発電事業における住民へのJICAの回答状況、人権侵害、エンジニアリング・サービス借款中の環境社会配慮の問題などが取り上げられ、JICAの環境社会配慮ガイドラインの改訂の必要性について質疑がなされました。


参議院・政府開発援助(ODA)等に関する特別委員会(2020年3月19日)

>インターネット審議中継の映像はこちら  [発言部分 1:48:30~]
  https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

●井上哲士 議員(日本共産党):
ODA事業を進めるJICAの環境社会配慮ガイドラインについての改定について質問します。現行のガイドラインは、社会経済の開発を支援するための事業であっても、大気や水、土壌、生態系など自然への望ましくない影響や、非自発的な住民移転や先住民族に対する権利侵害といった社会への影響を及ぼす可能性があるという認識の下に、環境社会配慮に必要なJICAの責務と手続き、相手国等に対する要件を示した指針として、2010年4月に、それ以前のガイドラインに代えて施行されています。現在、施行10年以内に行なうとしたレビューを経て、1月に最終報告書が出されて、ガイドライン改訂に向けて、レビュー結果に基づく包括的な検討作業が行なわれていると承知しています。
この改訂は、これまでのJICAの事業で起きた問題の経験や、そして地球環境、人権に関する今日の世界の認識の大きな発展、これを活かすべきだと考えますが、その点どう考えるか、この包括的な検討の論点と合わせてご答弁いただきたいと思います。

●JICA本清理事(総務部、情報システム室(CIO)、広報室、人事部、企画部):
 日本政府は、昨年6月、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略を閣議決定されました。また、ビジネスと人権に関する国連指導原則について、国別行動計画を策定中と承知しています。
 JICAとしては、そうした国際潮流の重要性を認識し、日本政府の方針を踏まえながら、環境社会配慮ガイドラインの見直しを行なっていく所存です。
 また、2018年2月から、現行ガイドラインの運用状況やJICAを取り巻く外部環境変化などのレビュー調査を実施し、パブリックコメントを募集し、理念、気候変動、対象事業、情報公開、人権、ステークホルダー協議など、8つの論点に整理致しました。
 現在、ご指摘の点も含め、環境社会配慮助言委員会から助言を得ながら改訂の論点について包括的な検討を行なっており、引き続き丁寧に検討プロセスを進めていく考えです。

●井上議員:
 NGOの皆さんからは、これまでの事業の中で生じた事柄を踏まえて様々な見直し意見が出されています。その一つが、現地住民などのステークホルダーから指摘があった場合の対応です。現行のガイドラインは、住民などからの指摘があった場合は回答すると定めています。ところが、例えばミャンマーのティラワ経済特別区開発事業では、影響を受ける住民グループからJICAに対して環境社会配慮に関わる懸念や要請に関する書簡が何度も出されて、2010年4月には面談が要請されました。にもかかわらず、JICAからの返答がないままに、その年の4月23日に一部の出資が決定されたということです。
 私は、この委員会でも外交防衛委員会でも、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業も質問してきましたが、ここでも同様なことが起きています。住民から事業の問題点の指摘や反対の意思、融資の拒否を求める書簡が度々出されたにもかかわらず、その都度の対応がない。4回目の書簡を提出後にようやくJICA現地事務所が面談に応じましたが、その後、住民から提出された書簡には返答していないと聞いています。
 ステークホルダーとの対話はJICAも重視しているはずで、異議申立て手続きにおいては事前の対話が異議申立ての要件とされています。しかし、今述べたように、そもそもJICAが住民の指摘に適時に返答しなければ、これは対話にならないんですね。対話がないということになると、異議申立て制度を使えるかどうか。使えないわけです、対話がなければ。そうなると、この制度を使えるかどうかはJICAの対応次第ということになりかねないわけです。  ですから、私は、改訂にあたって、JICA側からの迅速な回答、対応と、これをきちっと要件として盛り込むべきだと思いますが、この問題は包括的な検討で議論をされるのでしょうか。

●JICA本清理事:
 お答え致します。JICAの環境社会配慮ガイドラインにつきましては、環境社会配慮の基本方針として、JICAは、ステークホルダーの意味ある参加を確保し、ステークホルダーからの指摘があった場合は回答するというふうに定めているのはご承知のとおりです。JICAとしては、この趣旨に則り、ステークホルダーの指摘に迅速に回答すべく務めているところです。
 一方、異議申立手続要綱におきましては、異議申立てが行なわれた場合、異議申立て審査役は原則として5営業日以内に受理の通知を行なうことと定めており、それに基づいた対応が行なわれております。また、同要綱では、申立人に対し異議申立てを行なう前にJICAの事業担当部署との対話を行なうことを求めており、これに関連して、「JICAの広報部署は、事業担当部署との対話が迅速かつ適切に行なわれるよう外部から問い合わせがあった場合には、迅速に当該事業担当部署を紹介しなければならない。」というふうに定めています。
 引き続き、迅速かつ適切な対応に努めてまいりたいと思いますが、これまでの異議申立ての手続き上については、これまできちんとした対応をしてきたというふうに我々としては考えていますが、ご指摘のようなことがあるということでありましたら、今後、関連する質問の扱いにつきましては、対応策について検討させていただきたいと思いますし、ガイドラインの見直しにおいては、ご指摘の点はまさにNGOから指摘されている点でございますので、丁寧に検討していきたいと、このように思っています。

●井上議員:
 しっかり是非盛り込んでいただきたいと思います。
 それから、改訂で、事業の対象となる現地の人権状況のJICAによる把握の在り方も見直しが求められています。現行ガイドラインは、協力事業の情報公開を行ない人権の状況を把握するとしていますが、実際には、NGOからは、さまざまな表現の自由など基本的人権が脅かされている場合でも、JICAが実施機関からの報告を重視すると。そうなると、この基本的人権等の権利が制限されていると認識していなというケースが散見されるという指摘がされています。
 先ほど挙げたインドラマユの石炭火力発電事業についても、一昨年当委員会で質問しましたが、この反対派住民が生業が続けられなくなると。こういうリーダーに対して、軍や警察等の様々な干渉が行なわれた。逮捕、勾留も行なわれた。大量の警察、軍を動員して反対派住民を押さえ付けて建設作業が進められた。色んなことが起きました。
 こういう公権力による弾圧、人権侵害が起きる場合に、相手国の警察とかに照会をしても、人権侵害を認めるとは非常に考えにくいんですね。やはり、こういう回答をもって把握できたとは言えないわけで、こういう人権侵害の把握の方法については、相手国の当局や実施機関だけではなく、影響を受ける住民や専門家、人権NGOなどからしっかりヒアリングをすると、こういうことも盛り込んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

●JICA本清理事:
 現行のJICA環境社会配慮ガイドラインにおきましては、事業の影響を受ける個人や団体及び現地で活動しているNGO、協力事業に知見もしくは意見を有する個人や団体をステークホルダーと位置付けています。意味ある参加を確保し、ステークホルダーの意見を意思決定に十分反映するとしているところです。
 現行ガイドラインの助言委員会が行なっている包括的検討において、この部分の重要性が指摘されているところです。いただいた助言等を踏まえて、丁寧に検討していきたいと思っています。

●井上議員:
 現に起きている事態をしっかり見て対応していただきたいと思うのですが。
 もう一点、今指摘したインドラマユの事業に関する反対派現地住民への不当逮捕をはじめとする公権力による弾圧、人権侵害は、JICAの調査・設計などのエンジニアリング・サービス、E/S借款による貸付けに係る事業の中で発生しています。JICAは、この借款に係るインドネシア政府からの正式要請が依然なされていないということを理由に、正式要請後の環境レビューにおいて詳細を確認するとして、E/S借款は引き続き続けているわけです。
 私は、以前の質疑においても、もう貸付けは停止するとともに、このE/S借款の段階であっても、JICAが現地の人権状況をしっかり把握をして、ガイドラインの要件を確認するということを見直すべきだと申し上げましたが、この点はどのような対応になるでしょうか。

●JICA本清理事:
 この点については、先般も先生からご質問をいただき、その際もお答えしましたが、現行ガイドライン上は、本体借款の環境レビューにおいて、環境社会配慮上の要件を満たすことを確認することを可としているので、これは、E/S借款の供与時には本体借款の供与は約束されていないということになる前提で、本体借款の環境レビューと併せて行なうほうが効率的と考えられているためです。
 また、E/S借款供与時には、必要な環境社会配慮関連文書が十分ではなく、E/S借款のなかで、または、並行して必要な環境社会配慮調査を実施した上で、本体借款供与前に環境レビューを行なわざるを得ないという場合が多いというのが実態です。
 現行ガイドラインの助言委員会が行なっている包括的検討において、まさにこの点に関する検討もなされていることなので、いただいた助言を踏まえて丁寧に検討していく考えです。

●井上議員:
 現行ガイドラインでやはり想定していないことが起きているわけです、インドラマユで。是非その点を対応できるように盛り込んでいただきたいと思います。
 次に、海外での石炭火力発電事業の推進そのものについてお聞きします。この間、パリ協定批准後も世界で石炭火力廃止を求める声が高まっています。その中で、昨年6月にJICAがバングラデシュの発電所事業への新規融資を決定したことなど、日本のこの石炭火力推進に対して世界の厳しい批判が浴びせられています。
 小泉環境大臣は、2月25日に、この石炭火力発電輸出を支援する要件の見直しについて、議論を始めると関係省庁と合意したと発表していますが、どういう観点からどういう見直しをするのか、その日程はどういうふうになるでしょうか。

●環境省 瀬川大臣官房審議官:
 お答え申し上げます。石炭火力輸出支援の4要件につきましては、関係省庁間で議論を行ない、結果、パリ協定の目標達成に向け、6月に予定される次期インフラシステム輸出戦略骨子策定において、この4要件の見直しについて関係省庁間で議論し、結論を得ることにしています。
 この関係省庁間での議論を前向きなものとするため、環境省としましても、パリ協定の目標を踏まえ、世界全体のカーボンニュートラルの達成に向け、環境省内に検討会を配置する予定です。検討会においては、ファクトを積み上げるとともに、有識者などからの提言を踏まえ、環境省としての4要件の考え方、これをまとめていく予定としています。

●井上議員:
 輸出前提の見直しで本当に今パリ協定などで言われたことが達成できるのかと。私は止めるべきときが来ていると思うんですね。
 外務省は、2018年に気候変動に関する有識者会合を設定し、その2月の提言では、二酸化炭素排出の多い石炭火力を進める政府方針を国際社会の批判を受け、日本外交の隘路となり始めていると、こういう指摘をし、新しいエネルギー外交を提言しています。
 国際的な民間研究機関であるクライメート・アナリティクスは、最近、パリ協定の気温上昇を1.5度に抑えるコミットメントを達成するためには、OECD諸国は石炭利用を2030年までに完全に止めなければならないと、すべての石炭火発はどんなに遅くとも2040年までに閉鎖しなければならないという提言をしています。
 インドラマユは2026年に完成と言われているんです。そうすると、もう2040年、14年しか動かないと、こういうことになるんです。今からこういうものを造るのかと。途上国であっても排出削減が迫られるなかで、日本の推進政策が足を引っ張ることになると思うんです。私は、これはもう根本的な見直しをし、推進を止めるべきだと考えますが、外務大臣、最後、いかがでしょうか。

●茂木 敏充 外務大臣:
 今後の支援の在り方については、先ほど環境省の方からもありましたように、エネ基の中の4条件、これから見直しの検討を行なうと、その結果を踏まえて決めていくということになるわけでありますが、我が国は、パリ協定を踏まえて世界の脱石炭化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素などを含めてCO2削減に、排出削減に資するさまざまな選択肢を相手国に提案して、相手国の選択に応じてODA等の公的な支援を行なっていく考えです。

●井上議員:
 時間なので終わりますが、COP25で、グレーテス国連事務総長は、石炭中毒を止めなければ、気候変動対策の努力がすべて水泡に帰すと、こう言いました。重く受け止めるべきだと思います。終わります。

(以上)
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
200万kW(100万kW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(100万kW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を締結(2013年3月)。現在もE/S借款の支払いを続けている。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

 

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