日本の資金支援が与える影響

開発と人権2024.7.10

「ダムができて農地が奪われ、そのうえ川で砂金採りもできなくなってしまった。もう生計手段がない」
――フィリピン・サンロケダムの地域住民は言いました。

日本の融資で建設されたダムによって、多くの住民から自然環境や生活が悪化したことへの怒りや不安の声があがっています。

経済大国化を遂げ、日本は途上国向けに多額の援助をおこなってきました。それらが途上国の社会基盤整備に貢献したという側面もあるでしょう。しかし、援助の多くはダムや道路、発電所など大規模インフラ開発に重点を置いたものであり、時に深刻な環境破壊や社会問題を引き起してきました。また、日本企業の海外進出を後押しし融資される民間プロジェクトでも同様の問題が指摘されています。

FoE Japan は、日本の公的支援による開発事業が及ぼす環境・社会問題に長く取り組んできました。
現在は以下の活動に焦点を当てています。

現地住民の視点で開発事業をチェック――個別事業のモニタリング

日本が支援する開発事業には、サンロケダムのように多くの人びとの強制移転・生計手段の喪失を伴う大規模ダム開発のほか、森林保護地区や先住民族の土地での環境破壊を伴うエネルギー・鉱物資源の開発、地球に残された豊かな自然に影響を及ぼすものもあります。

影響を受ける住民への聞き取り調査
(マレーシア導水事業)
パイプライン敷設による森林伐採
(サハリン石油ガス開発)

開発事業による現地での環境社会問題の解決をめざし、現地で、そして国際社会で、市民の運動が繰り広げられています。
FoE Japanも国際的な市民のネットワークと連携してこうした問題に取り組んでいます。

1980年代後半、世界銀行や日本のODAにより計画されたナルマダダム建設(インド)では、インドで激しい反対運動がありました。当時FoE Japanは、国内で問題を知ってもらう様々な働きかけを試み、また海外の環境保護や人権擁護に取り組む団体にも働きかけました。運動は国際的なキャンペーンに発展し、その結果、世界銀行と日本のODAはこのプロジェクトから撤退しました。

市民・NGOが声をあげ、問題が解決・改善された例はいくつもあります。しかし同じような問題は後を絶ちません。私たち市民は事業をモニタリングし、問題を知らせ、融資機関や政府、企業に改善を働きかけていくことが必要ではないでしょうか。

個別事業のモニタリング

被害を繰り返さないために――政府系機関への政策提言

同じ問題をこれ以上繰り返さないようにするには、個別事業への対応だけでなく、政策や制度の改善が必要です

日本の輸出信用機関や開発援助機関には、社会・環境面に配慮する仕組みや実施体制が十分に備わっているとは言えませんでした。そこで、FoE Japanは個別事業の調査・分析を踏まえ、高い水準の環境ガイドラインの設置を政府系機関に求めてきました。

国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)の環境ガイドライン策定時には委員会メンバーとして参加、問題が繰り返されないよう、予防策を取り入れる提案をおこないました。ガイドライン制定後には、実際の事業の課題に即して実効性のあるものとなるよう、運用面の改善を求めています。

JBIC環境ガイドライン
政府開発援助(ODA)
JBIC原発指針

また、世界銀行やアジア開発銀行などの国際金融機関への政策提言、輸出信用機関(ECA)の改革に向けた国際キャンペーンに、海外のNGOと協力して取り組んでいます。

輸出信用機関キャンペーン
国際金融機関への政策提言

住民のニーズに合った支援を――コミュニティ支援

マングローブを植える住民

政府系機関や国際金融機関による大規模開発プロジェクトでは、大きな利害関係を生みやすく、事業の必要性が十分検討されないままトップダウンで実施されることも少なくありません。

そうした開発支援は途上国の地域の人びとのためになるのでしょうか?途上国支援は、コミュニティのニーズに応え、コミュニティが主体となって実施することが重要だと考えます。FoE Japanでは、パイロットプロジェクトとして、インドネシアで、マングローブ再生とアグロフォレストリープロジェクトを支援しています。

いま途上国では、海面上昇、洪水・旱魃の多発など気候変動の影響に対応すること(=適応)の重要性が高まっています。適応事業というと、公共工事としての堤防やダム建設を連想する方が多いかもしれませんが、FoE Japanが支援するこれらのプロジェクトは、現地のコミュニティが適応の重要性について理解を深め、自主的に事業を進めることをめざしています。

気候変動と途上国開発

 

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