お知らせ
開催報告 エネルギー政策転換に向けた議員セミナー第3回
密室で決められるエネルギー政策 ~議論の公開を求めて~
2011年6月21日、参議院議員会館101会議室にて「第3回 エネルギー政策転換に向けた議員セミナー」を開催しました(>開催案内)。この連続セミナーは、3.11原発震災を機に、脱原発・エネルギー政策転換を実現するための開かれた議論を巻き起こしていくことを目的に、FoE JapanなどのNGOが主催するものです。
>第1回セミナー開催報告
>第2回セミナー開催報告
第3回は、エネルギー政策の決定過程に焦点を絞って行われました。これは、国家戦略室の中に新成長戦略実現会議の分科会「エネルギー・環境会議」が立ち上げられ、国民の民意の反映もされない密室で、かつ経済産業省主導の下で、大事なエネルギー政策の行方が決められてしまう情勢に危惧を抱き、急遽当初の内容を変更して開催しました。
動画報告はこちら
報告1:密室で決められるエネルギー政策
まず始めに、気候ネットワーク東京事務所長の平田仁子さんから、今まさに進行中のエネルギー政策策定のプロセスについての問題提起がなされました。
これまでも「エネルギー基本計画」や「長期エネルギー需給見通し」といったエネルギー政策は、企業・業界団体の代表や経産省、資源エネルギー庁の関係者を中心に検討され、市民やNGOの代表者は入っていませんでした。今回、原発事故により、多くの市民が原発や化石燃料に頼らず、省エネや自然エネルギーに移行していくことを求めています。
しかし、今まさに行われているエネルギー政策の見直しは、国家戦略室の新成長戦略実現会議の下につくられた、「エネルギー・環境会議」で閣僚をメンバーとして非公開で行われようとしています。7月には方向性を決め年末までに基本原則を具現化、来年には戦略を決定予定で、その内容は従来と大差なく、原子力を続ける前提となっています。このようにプロセスが既に足固めされ、非公開で土台は官僚がつくり、オープン懇談会を開催するなど再生可能エネルギー促進法成立に意欲的な菅首相との連携も不明確であるといった数々の問題が指摘されました。
これに対し、「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現させる会)は、透明性確保・情報公開・国民参加の民主的なプロセスの実現を要請しています。
>6月10日eシフトプレスリリース
>6月17日eシフト要請書
>平田仁子氏講演資料[PDF]
報告2:エネルギー政策転換に必要とされるプロセスとは ~ドイツ・脱原発計画の最新情報から
次に環境エネルギー政策研究所(ISEP)の山下紀明さんから、ドイツの検討過程についての報告がなされました。
福島第一原発事故後にメルケル首相を中心にエネルギー政策に関する諮問機関としての倫理委員会が発足しました。メンバーは政治家・学識者中心で、推進派と反対派が半々です。また、日本の密室で決まるエネルギー政策とはアプローチが異なり、まず、基礎となる哲学的・倫理的な議論があり、原子力が必要かは社会が決めるという考えがありました。委員と各界専門家を加えて討論し、観客席の市民をリスク・環境・経済とグループ分けして、専門家と市民が対話する場も設けられ、議論のテレビ中継も実施されました。
そこから日本が学ぶべき事として、国民参加・透明性の高い議論をする、国のトップを議長とする、内外の専門家を集めて議論する、政策の体制を白紙から見直す、という4点を挙げられました。
質疑応答では、参加者から「原子力にこだわる背景に政治献金や利権がからんでいるからか」という質問に対し、国会議員からも以下のような率直な意見が述べられました。
「飯のタネになっており、これは原子力に限らず、公共事業も同じ。誰が考えても間違っていることがたくさんある。倫理や哲学が日本に欠けている」
「政権が代わっても治らないのは利権構造が変わらないから。世論を喚起して、官僚の利権体質を直していく運動が必要だ」
>山下紀明氏講演資料[PDF]
報告3:現行エネルギー政策の現状と課題
WWFジャパンの山岸尚之さんからは、現行エネルギー政策の概要と課題が話されました。
エネルギー基本計画について、発電電力量では、再生可能エネルギーの割合が2007年では8%、2030年に19%になるという推計であり、原子力の割合は2007年に26%から2030年に52%になる推計で、原子力に対する過度な依存が見られます。全電力の半分以上が原子力になり、しかも設備利用率が90%に上がる事になっていますが、定期点検が短くなる事になり、本当に安全で安定したものなのか大いに疑問です。
電力供給の体制についても、どの電気を使うか選べない、自然エネルギー業者が入ろうとすると参入障壁がある、地域間のやり取りができない等の問題があると指摘されました。
課題のまとめとして、原子力に依存しすぎ、自然エネルギーのポテンシャル無視、現行の電力体制を維持している、二酸化炭素抑制に制約がかかっていない、という4点が挙げられました。
>山岸尚之氏講演資料[PDF]
報告4:エネルギー政策転換の展望
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)の上園昌武さんからは、原子力発電に依拠せずに25%削減は可能であるという、シミュレーション結果を紹介していただきました。
まず温暖化問題と原子力に誤解があります。ひとつはCO2削減のためには原子力を増やすべきという主張、2つ目は温暖化対策を進めると経済を阻害するのではないかという主張です。その為にシミュレーションでは3つのモデルを使い、CO2を削減しながら経済発展は可能であるという事が指摘されました。
産業連関表を用いて計算し、追加的に13兆円かかるが30兆円の波及効果が見られ、180万人の雇用効果があり、温暖化対策はグリーンジョブ増加につながる可能性があります。結論として、脱原発と脱石炭を段階的に行いながら再生可能エネルギーを増やしていくことで、CO2の25%削減も可能であると述べられました。また、エネルギー政策について国民的議論を行うべきだと訴えられました。
>上園昌武氏講演資料[PDF]
>資料:CASA提言「原子力発電に依拠せずに25%削減は可能」 [PDF]
各報告の間でも、参加した議員から、以下のような発言をいただきました。
「福島原発事故の先が見えないなかで、再稼働の話が出た。再生可能エネルギー法案をバックアップしたい。原子力村に負けないよう脱原発したい。」
「慣性の法則みたいに原子力に戻っている。きちんとウォッチしていきたい。」
(報告:長谷新悟)
6月21日現在219名の国会議員が再生可能エネルギー促進法案の支持を表明、また上述のように、FoE Japanも参加している「eシフト」としても要望書を「エネルギー・環境会議」メンバーの事務所および全国会議員事務所に提出する等の活動をしています。今後も皆様にご協力いただきながら、一刻も早い議論の公開を求めていきます。
エネルギー政策転換に向けた議員セミナー 第3回
「 密室で決められるエネルギー政策~議論の公開を求めて~ 」 <要申込み>
>開催報告はこちら
福島第一原子力発電所の事故は、日本のエネルギー政策の根本を揺るがすものとなりました。いままで原発に依存してきたエネルギー基本計画や温暖化対策の抜本的見直しが必要となってきています。
政府は、「革新的エネルギー・環境戦略」を検討することを決定し、官邸の新成長戦略実現会議の下に「エネルギー・環境会議」を立ち上げました。しかし、議論は非公開で、国民の意見が反映される余地のない「密室」で
行われています。
これからの日本、そして国民一人ひとりにとってきわめて大切な議論が、このような密室の議論で、事故を経験した国民の民意の反映もなく進められようとすることは、民主性を欠く、たいへん大きな問題です。 エネルギー政策のあり方は、国民の参加を得て、 公開の場でしっかりと議論した上で決定するべきではないでしょうか。
(情勢を踏まえ、内容を少々変更しております。)
日 時 | 2011年6月21日(火)13:30~15:30 ※議員会館の外からお越しの参加者には、13:00から13:45頃まで、参議院議員会館の入口で入館証を配布します。大幅に遅れる場合は、予めご連絡ください。 |
会 場 | 参議院議員会館 101会議室(定員:107人) >地図 東京都千代田区永田町2-1-1 最寄駅東京メトロ 永田町または国会議事堂前 |
内 容 | 1.
密室で決められるエネルギー政策 4.
エネルギー政策転換の展望 |
資料代 | 1,000円 |
定 員 | 107名 |
主 催 | 国際環境NGO FoE Japan、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、原子力資料情報室 グリーン・アクション、グリーンピース・ジャパン、気候ネットワーク、WWFジャパン、 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、原水爆禁止日本国民会議 |
協 力 | 脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)、環境市民、 市民がつくる政策調査会、地球・人間環境フォーラム、メコン・ウォッチ |
申込み | 必ずお申込み下さい 申込みフォームよりお申込みください > 申込みフォーム |
問合せ | 国際環境NGO FoE Japan(吉田) Tel: 03-6907-7217 Fax: 03-6907-7219 Email: finance@foejapan.org |
※eシフト:「エネルギー基本計画」見直しに向けた活動方針
https://e-shift.org/?p=773
【参考】これまでのテーマ
第1回:原発のコスト、再生可能エネルギーの可能性 >詳細はこちら
原発の本当のコスト
3.11後の原子力・エネルギー政策の方向性
エネルギー消費を拡大する原発、小さくする自然エネルギー
第2回:原発依存の構造、福島の現実を見つめる >詳細はこちら
原発依存・電力多消費社会をつくりだした人々
原発は、地域社会をどう変えたか?
子ども20ミリシーベルト問題について
飯舘村報告