生物多様性と森林
企業が社会に負う責任
近年、そこかしこでCSRという言葉を聞く機会が増えてきました。
「CSR」とは、「Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任」。読んで字の如く「会社が社会に対して負う責任」ですが、社会の何に対して責任を負うのでしょうか?
厳密には、この言葉は定義付けられておらず、国や人によってまちまちの様です。より良いサービスや製品を提供すること(顧客)、より多く雇用し失業者を減らすこと(雇用者)、より多く税金を納付すること(政府)、社会貢献活動をすることなど、「社会」を構成する「いろんな関係者」に対する責任が考えられます。
日本の法律で禁止されていなくとも、海外で害があると認定された薬物を商品にして良いものか。多くの雇用者を抱える企業が、人員を大量削減する方法が見つかったといって大量解雇に及べば、景気に波及するかもしれません。あまりにも悪質に脱法的な節税を行うのも、罪に問われないかもしれませんが、法人としての責任を果たしているかと言えば疑問です。
このように、範囲や対象は企業によってまちまちですが、「CSR」は色々なものに対して発生していると言えます。必ずしも人間だけではなく、環境や自然に対しても発生すると考えられています。
生物多様性とCSRの関係
「生物多様性」という固有のものを指さない「概念」も、「限りある資源」です。自然界から直接資源を得る第一次産業を担う企業は、その活動と生物多様性が密接な関わりを持つため、環境を損なってしまうというジレンマと昔から戦ってきました。
「日本の多くの企業は環境を損なうような業務を行う企業はあまりなく、生物多様性とはほとんど関係ないのでは」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところが、実際は必ずしもそうではないのです。
例えば外国と日本の間で商品をやりとりする輸出入業(商社)や、生産者と加工業・小売業の仲立ちをする卸売業などがただ安いだけで商品を選び、「安いけど環境を損なって生産された商品」ばかりを扱ってしまえば、普通の商品は市場から消えてゆくでしょう。一見何も消費しない卸売業も、「生物多様性を破壊した商品が出回るか、出回らないか」を操作する力を持っていて、そこには確かに「責任」が存在しています。
もちろん企業が気をつけるだけでなく、消費者もそういった目線でモノを選ぶ事が重要です。そのために必要な「この商品はどこから来たのか」などの情報を偽装せずに公開することも、企業が負う責任のひとつだと言えます。
そして、企業が取り扱う商品の原料となる木材の利用方法・量に配慮することで、現地では森林の状態を保ったまま木材を持続的に利用することができます。その結果、私たち消費者も継続的にモノを得る事が可能になります。
一方で、企業が環境に配慮せず木材を利用することによって、生物多様性が破壊されるという事態に陥ることも考えられます。また、生物多様性の破壊によって、これまで森林を生計の手段として利用してきた地域住民の収入が減少し、その生活自体が脅かされてしまいます。
このように、たくさんの生き物が絶滅の危機に瀕している場所から遠く離れた企業でも、間接的に生物多様性が失われたり、遠く離れた外国の地域住民の生活を脅かす事に加担してしまっているケースがたくさんあるのです。