脱原発・エネルギーシフトに向けて
Q&A 原発事故被害者のいのちと暮らしを守る立法
今国会で、与野党それぞれから、原発事故被害者の生活支援、事故被害から子どもを守る法案が提出され、審議が行われています。原発事故により被害を受けている当事者、法律家・支援団体・市民などが、国会議員とタッグを組んで、「支援法」の早期制定を求めています。
Q.なぜいま「支援法」? |
A: 被害者に適切な支援が届いていないからです。
そもそも避難政策が不十分といわざるをえません。政府の避難指示は年間20mSvが基準です。
したがって、避難区域外の多くの人が自主的に避難しています。避難したいけれどできないという人も、帰りたいけれど帰れないという人もたくさんいます。避難した人も、住み続けている人も、どちらも経済的・精神的な負担を強いられています。
・「子ども20mSv問題」は続いている |
Q.年間20mSvがとても高い基準なんだね |
A:定説のない低線量の放射能影響、「微量でも、それに応じてリスクがある」
低線量の放射能による健康影響については、専門家の間でも意見が分かれています。発ガンリスクについては、「直線閾値(しきいち)なしモデル」、つまり、「放射線は微量でも、その線量に応じてリスクがある」というモデルが、ICRP(国際放射線防護委員会)などで採用されています。ICRPは、低線量被ばくの健康影響、とりわけがん以外の影響や内部被ばく(体内に取り込まれた放射性物質による被ばく)の影響を小さく見積もりすぎているという批判もあります。
日本で311以前から適用されていた以下の基準をみても、年20mSvの高さが伺えます。
・法令による公衆の年間の線量限度は1mSvである(原子炉等規制法)
・放射線管理区域は年5.2mSv:放射性管理区域では18才未満の労働は禁じられている。放射能マークを掲示し、子どもを含む一般人の立ち入りは禁じられ、厳格な放射線管理が行われ、事前に訓練を受けた者だけが立ち入ることのできる区域である(電離放射線障害防止規則など)
Q.国や東電からの賠償はどうなっているの? |
A:被害をカバーするものとして到底十分とは言えないわ。
国の原子力損害賠償紛争審査会(賠償指針を定める文科省に設置された委員会)は、福島県の一部地域(県北・県中・いわき・相双)を対象として、「自主」避難者にも残る人にも一律の賠償(妊婦・子ども40万円、それ以外8万円)としました(※)。
これらの金額は実質的に生じている被害をカバーするものではないばかりか、原発事故が収束しておらず、放射能被害が今後も長期に渡って続くことを考えれば、将来に渡る被害をカバーするものとして到底十分とは言えません。
※2011年12月までの分。直接請求や紛争解決センター(ADR)への申し立てにより、個別のケースごとに
賠償されることもあります。 また、東京電力は後に、自主避難 の妊婦・子どもに20万円上乗せを発表、
福島県南部の9つの市町村にも妊婦・子どもに20万円を支払うことを発表しました。
Q.ふぉえー、避難基準が高いうえに補償も不十分なんて! |
A:日本版チェルノブイリ法が必要です。
チェルノブイリ原発事故の後、原発周辺国では、汚染状況に応じた区域設定が行われました。
移住義務区域が設けられたほか、自己決定権が尊重される「移住の権利」区域が設けられました。
【チェルノブイリ原発周辺国の避難基準】
土壌汚染レベル セシウム137(kBq/m2) |
積算線量 | |
特別規制ゾーン | 1480以上 | |
移住の義務ゾーン | 555以上 | 年5mSv以上 |
移住の権利ゾーン | 185~555 | 年1~5mSv |
徹底的なモニタリングゾーン | 37~185 |
汚染地域に居住している人々は、住み続けるか移住するかについて、汚染状況、被ばく量、起こりうる危険性について客観的な情報を提供され、自ら判断する権利を有するとされました。また、移住した人にも住み続ける人にも、医療や生活支援などが提供されたといいます。
Q.国会で提出された法案の中身は? |
A: 与党案・野党案それぞれに利点と懸念点が見られます
被災者・避難者の生活支援は喫緊の課題です。まずは、与党案をベースに野党案の良いところを取り入れながら、与野党が協力して一刻も早く立法を成立させることが望まれます。また、今回の法律を基本理念法と位置づけ、今後、それに基づく個別施策の具体化と実施が期待されます。
【与党案】(※2)
○ 国が原子力災害から国民を保護する責任を負っていることを認めている
○ 原発被災者全般を対象としている
○ 「支援対象地域」を定め、その区域からの、またはその区域への移動を自らの意思で行うことができるよう支援することを定めている
× 基本理念で健康被害の未然防止が明示されていない
× 避難者への医療支援、子どもの就学等の支援などが欠けている
× 健康被害への医療給付の条件として「当該放射線による被ばくに起因する」との文言が加えられている。これにより被災者が、被ばくの証明責任を負うことになってしまう。
× 生活再建支援制度における被災者に対する生活給付金の支給や健康管理手帳の交付など、具体的な措置が盛り込まれていない
【野党案】(※3)
○ 基本理念として、「健康被害を未然に防止する」観点から「被ばく放射線量の低減に万全を期する」ことがうたわれている
○ 給食の検査や生涯にわたる健康診断など、子どもや妊婦への踏み込んだ支援策があげられている
× 子ども・妊婦に限定している
※2 原発事故被災者の生活支援のための法案(民主党)
※3 原子力事故による被害からの子どもの保護の推進に関する法律(案)
(自民、公明、みんな、共産、社民、たちあがれ日本、新党改革の野党7党)
このほかに、公明党など野党6党が、「東京電力原子力事故に係る健康調査等事業の実施等に関する法律案」を提出。いずれも2012年3月
Q.早く成立させてほしいわ。私たちにもできることある? |
A: 法律の早期成立を求める声をたくさん集めて、国会議員や野田首相に届けましょう。
FoE Japan ほか複数の市民団体署名を集めています。
1.署名はこちらから
>「原発事故被害者のいのちと暮らしを守る立法と施策実現を求める署名」
2.ブログやツイッターなどでの発信
ぜひ署名をご家族やお友達に広めてください!
3)地元選出の国家議員への呼びかけ
国会議員は、国民の代表です。
「法案の早期成立を!」と電話やFAX、Emailなどでメッセージを送ることも有効です。
「いのちと暮らしを守る署名」 |