第6次エネルギー基本計画(案)にパブリックコメントを!
今後のエネルギー政策を決めていく上での指針となる「エネルギー基本計画」。私たちの生活や社会のあり方にもかかわる重要な計画です。 その「第6次エネルギー基本計画」の案が公開され、9月3日(金)から10月4日(月)23:59までパブリックコメント(一般からの意見の募集)が呼びかけられています。
政府の審議会(基本政策分科会)での議論は、エネルギー政策に既得権益を持つ産業界の声が大きく、結局、原子力も石炭火力も温存するという方向が強く打ち出されました。 市民参加の機会は、事実上このパブリックコメントのみです。気候変動による被害をこれ以上広げないために、 核の脅威のない未来のために、 今、たくさんの声をパブリックコメントで届けましょう!
●FoE Japanからも意見を提出しました! NEW!
●連続オンラインセミナー「エネルギー基本計画案を読む」
https://www.foejapan.org/event/supt/6thenergyplan.html
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●概要や関連資料
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/opinion/public.html ・こちらのページには、「本文」のほかに「概要」「関連資料」も掲載されています。
●提出ページ
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620221018&Mode=0
*「意見公募要領」のPDFを一度開き、
一番下の「意見募集要領(提出先を含む)を確認しました。」にチェックを入れると、
「意見提出」に進むことができます。
「第6次エネルギー基本計画(案)」の問題点とポイント
●限られたメンバーによる市民参加のないプロセス
<問題点とポイント>
- 市民参加なし:気候変動の影響を大きく受ける若い世代を含め、市民が参加する機会がほとんどないまま、限られたメンバーによる審議会での議論で、素案がまとめられた。
- 市民意見の反映なし:最終段階のパブリックコメントのみでは、市民の意見の反映に不十分。各地での公聴会や抽選で選ばれた市民による討論会(討論型世論調査)など、複数のしくみが必要。
<本文(案)の記載>
" (p.126)審議会や有識者会合等を通じた政策立案プロセスは、最大限オープンにし、透明性を高めていく。”
●このままでは気候危機を回避できないおそれ
<問題点とポイント>
- 気候危機に向き合うものではない:エネルギー基本計画(案)は、「既存の技術を最大限活用」「使える技術はすべて使うとの発想」、つまり2030年にも石炭火力を含めた化石燃料も(もちろん原発も)使い続けるというもので、、気候危機やパリ協定の1.5℃目標に向き合うものではない。
- 不十分な削減目標:2030年までの温室効果ガス排出削減目標は、2013年比で46~50%削減となっているが、この目標も不十分で、先進国としての責任も放棄するもの。
<本文(案)の記載>
“(p.6)2030年度の新たな削減目標に向けては、既存の技術を最大限活用し、この野心的な目標の実現を目指し、そのうえで、2050年カーボンニュートラルに向けては、2030年度の目標に向けた取り組みを更に拡大・深化させエネルギーの脱炭素化を進めつつ、現時点では社会実装されていない脱炭素技術について、これを開発・普及させていくこととなる。”
●原子力を維持、再稼働を拡大
<問題点とポイント>
- 倫理に反する:原発事故の教訓と将来にわたる放射能汚染や核廃棄物処分の観点から、原子力発電の継続は倫理に反し、使用済み核燃料の処理など問題を将来世代に押し付けることになる。
- 現実性がない:2030年に原子力を20~22%利用し続けることは、50年超の老朽原発や震災などで被災した原発、まだ建設途上の原発も含めて稼動させることを意味し、まったく現実的ではない。
- 長期運転は高リスク:原発の「40年運転ルール」を反故にし、長期運転を認めることはあってはならない。60年以上の運転も意図されているが、世界でも例がない。
- 新増設・リプレース:計画案には書き込まれなかったものの、審議会の議論のなかでは原発の新増設やリプレースも明記すべきと指摘されていた。今後新たに原発を建設することはあってはならない。次世代炉の開発もふくめ、中止すべき。
<本文(案)の記載>
“(p.34) 原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで精算が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。”
“(p.105) 原子力発電については、CO2の排出削減に貢献する電源として、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進め、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組み、電源構成ではこれまでのエネルギーミックスで示した20~22%程度を見込む。”
●石炭火力をゼロにする議論はなし
<問題点とポイント>
- 2030年にも石炭火力:計画案では、石炭火力発電を2030年に19%使うこととなっている。石炭火力発電は、CO2排出が大きく大気汚染の原因ともなるため、新規建設は中止し、2030年にはゼロにしなければならない。
<本文 (案)の記載>
“(p.36)(石炭)現時点の技術・制度を前提とすれば、化石燃料の中でも最もCO2排出量が大きいが、調達にかかる地政学リスクが最も低く、熱量当たりの単価も低廉であることに加え、保管が容易であることから、現状において安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源である。” 今後、石炭火力は、再生可能エネルギーを最大限導入する中で、調整電源としての役割が期待されるが、電源構成における比率は、安定供給の確保を大前提に低減させる。”
“(p.106)(2030年度の)電源構成では、・・・石炭火力は約19%程度・・・”
●化石燃料産業を温存
<問題点とポイント>
- 2050年にも「脱炭素化」化石燃料を活用:化石燃料の「脱炭素化」は、不確実・高リスク。化石燃料産業の温存に他ならない。
- 水素・アンモニアも化石燃料から:水素やアンモニアを活用して「ゼロエミッション火力」をめざすと書かれているが、水素もアンモニアも、大部分を化石燃料から生成する想定である。生成過程で出るCO2を回収貯留(CCS)して初めて「ゼロエミッション」となるが、その回収貯留技術の見通しは立たない。化石燃料産業を温存することになり、大量の温室効果ガスを排出し続けることになる。
- 不確実・高リスクな新技術:二酸化炭素回収貯留・利用(CCUS)は、実現のめどが立っておらず高コスト、さらに漏出リスクなど新たな環境・社会影響が懸念される技術である。これらに頼ってカーボンニュートラルの辻褄をあわせことは許されない。
<本文(案)の記述>
”(p.35)化石エネルギーについては、現時点でエネルギー供給の大宗を担っており、今後も重要なエネルギー源である。一方で、脱炭素化の観点から対応が求められており、CCUS技術や合成燃料・合成メタンなどの脱炭素技術を確立し、コストを低減することを目指しながら活用していく。”
“(p.36)水素は、電力分野の脱炭素化を可能とするだけでなく、運輸部門や電化が困難な産業部門等の脱炭素化も可能とする、カーボンニュートラルに不可欠な二次エネルギーである。アンモニアについては現在、石炭火力への混焼に向けた実証が進んでいるが、それにとどまらず、専焼化や船舶への活用も検討されている。
・・・ また、水素・アンモニアは、多様なエネルギー源から製造することが可能であるため、国内資源の活用を含むエネルギー調達先の多様化を通じ、エネルギー安全保障の強化にも寄与する。余剰の再生可能エネルギー電力等から水素・アンモニアを製造することで、脱炭素電源のポテンシャルを最大限活用することを可能とするだけでなく、CCUSと組み合わせることで、化石燃料をクリーンな形で有効活用することも可能とする。”
●不十分な需要削減・省エネ
<問題点とポイント>
- 需要の大幅削減が必要:2030年のエネルギーミックスを考える上で、まずは建物の断熱などにより、エネルギーの大幅な需要削減を打ち出すべきである。今考えうる削減の積み上げにとどまらず、気候危機に向き合う大幅な削減目標を掲げるべきである。現状では、最終エネルギー消費(280百万kl)は、2019年度(334百万kl)に比べて約16%の削減にとどまる。
- 電力の大幅削減が必要:電力についても、2019年度から1割弱の削減に過ぎず、全く不十分である。日本の電力消費量は、2007年度の10613億kWhがピーク、震災後は減少傾向が続き、震災前2010年度の10354億kWhに比べ、2019年度は9273億kWhと、1割以上減少している。電化などを見込んだとしても、機器等の効率化や無駄の削減、需要削減などにより更なる電力需要削減を行うべき。
<本文(案)の記述>
“(p.104) 議論の前提となる2030年度のエネルギーの需要については、経済成長等による足元からのエネルギー需要の増加を見込む中、徹底した省エネルギーの推進により、石油危機後の水準を超える大幅なエネルギー効率の改善を見込む。
具体的には・・(中略)・・2030年度のエネルギー需要は約280百万kl程度を見込む。”
“(p.105) 電力の需給構造については、経済成長や電化率の向上などによる電力需要の増加要因が予想されるが、徹底した省エネルギー(節電)の推進により、2030年度の電力需要は約8,600~8700億kWh程度、総発電電力量は9,300~9,400億kWh程度を見込む。”
●再エネ社会への転換が必須
<問題点とポイント>
- 2030年に再エネ50%以上に:再生可能エネルギーは2030年に少なくとも50%以上、2050年には100%にする必要があり、それが可能であるという研究結果も複数ある。2030年に36~38%という目標では不十分である。需要を削減することで、同じ導入量でも割合を高めるという観点も必要。
- 持続可能で地域に根ざした形で:建物の上や休耕田での太陽光発電などを最大限進めた上で、その他の再エネの拡大にあたっては、山林等を保護したうえで、持続可能で地域に根ざしたかたちで、地域と対話しながら進めていくことが必要。
- バイオマスは熱利用で:特に海外から燃料を輸入する大規模バイオマス発電は、カーボンニュートラルとは言えない。
- 鉱物資源利用は最小限に:鉱物資源の際限ない採掘からの脱却を。可能な限りの需要削減が大前提。
<本文(案)の記述>
“ (p.105)再生可能エネルギーについては、足元の導入状況や認定状況を踏まえつつ、各省の施策強化による最大限の新規案件形成を見込むことにより、約3,120億kWhの実現を目指す。その上で、2030年度の温室効果ガス46%削減に向けては、もう一段の施策強化等に取り組むこととし、その施策強化等の効果が実現した場合の野心的なものとして、合計約3,300~3,500億kWh程度の導入、電源構成では約36~38%程度を見込む。なお、この水準はキャップではなく、今後、現時点で想定できないような取組が進み、早期にこれらの水準に到達し、再生可能エネルギーの導入量が増える場合には、更なる高みを目指す。”
“(p.84)鉱物資源は、・・・カーボンニュートラルに向けて需要の増加が見込まれる再生可能エネルギー関連機器や電気自動車等の製造に不可欠である。”
こちらのブログ記事もぜひ参考に:シリーズ「エネルギー基本計画素案を読む」
(1)「カーボンニュートラル」は現状追認?!
(2)原発20~22%とは?
(3)バイオマス発電は大丈夫?
(4)鉱物資源の需要拡大の先には?
(5)需要削減の本気度は?
「あと4年、未来を守れるのは今」でも、下記の特設ページを作っています。
http://ato4nen.com/public-comment/
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