COP26に向け、新政権に海外石炭火力支援の完全停止を求める要請書を提出
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「国際協力の日」である10月6日、今月末から開催される国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向け、日本の新政権が海外の石炭火力支援に完全な終止符を打つよう求めるアクションを総理官邸前で行いました。また、岸田首相宛てに共同声明「日本がG7首脳宣言を骨抜きにすることは許されない」(25ヶ国120団体賛同)及び要請書「日本政府はインドネシア西ジャワ州のインドラマユ石炭火力発電所・拡張計画を支援しないでください」(114ヶ国10,860個人・34ヶ国114団体署名)を提出しました。
去る9月の国連総会で中国の習近平国家主席が海外の新規の石炭火力発電への支援停止を表明した中、日本では依然として国際協力機構(JICA)による新規の石炭火力支援に向けた準備が行われています。インドラマユ石炭火力発電事業(インドネシア)及びマタバリ石炭火力発電事業フェーズ2(バングラデシュ)に対して新規の円借款供与が見込まれているのです。しかし、これはパリ協定の長期目標達成に向けた世界の取組みを蔑ろにするばかりか、「年内に海外の石炭火力への公的支援を完全停止する」としたG7コーンウォール・サミット首脳宣言のコミットメントにも反しています。
今回の官邸前アクションは、こうした日本政府の化石燃料支援に反対する国内外のNGOが10月1日~6日にかけて共同実施した国際的なアクションの一環として行われたものです。日本以外にも、ワシントンDC、ロンドン、ジャカルタなど世界各地でアクションが行われています。また、アクションの皮切りに、10月1日付New York Times紙にも日本政府の石炭火力支援に反対する全面広告が掲載されました。
※国際協力の日とは?
1954年10月6日に日本が開発途上国に対する政府開発援助(ODA)を開始した日。日本政府は閣議了解で同日を「国際協力の日」と定めている。
(以下、要請書本文)
>脚注を含む要請書全文はこちら(PDF)
内閣総理大臣 岸田 文雄 様
外務大臣 茂木 敏充 様
国際協力機構 理事長 北岡 伸一 様
日本政府はインドネシア西ジャワ州の
インドラマユ石炭火力発電所・拡張計画を支援しないでください
私たちは日本政府と国際協力機構(JICA)に対し、インドネシア西ジャワ州のインドラマユ石炭火力発電所・拡張計画(1,000 MW)(以下、同事業)を支援しないよう要請します。【1】 現地コミュニティー【2】 と国際市民社会【3】 は、かねてより同事業に対する懸念と強い反対【4】 を表明してきました。この石炭火力発電所を建設してはならない理由は、以下のとおり、主に6点あります。
(1) 同事業は、発電所を農地の中、且つ漁場に沿った場所に建設するため、現地の何千人もの農民や漁民の生計手段を奪う、あるいは、悪影響を及ぼします。【5】 小作農や日雇い農業労働者は、先祖代々、年間を通してこの農地でコメやさまざまな野菜、果実を育て、生活を営んできました。零細漁民は季節が来ると、「レボン」と呼ばれる小エビを沿岸で獲ってきました。金銭補償、また、家畜の飼育や技術トレーニングなど生計回復計画は、提供されたとしても、住民の生計手段を回復するには不十分であり、したがって、真の解決策ではありません。【6】
(2) 同事業によって、現地コミュニティーが健康被害を受けるリスクはより高くなります。【7】 同発電所は硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、PM2.5を含む大気汚染物質を排出するにもかかわらず、日本の石炭火力発電所のほとんどで大気汚染対策として備えられているBAT(利用可能な最良の技術)を一切使用しないからです。【8】
(3) 同事業は、現地の農民と漁民に対する適切な協議や十分な情報公開を確保できていません。彼らは同事業によって甚大な影響を受けるにもかかわらず、環境アセスメント(EIA)報告書の策定にあたり、協議会への招待を一切受けませんでした。【9】 同様に、土地収用・移転行動計画(LARAP)の策定にあたっても、影響を受ける小作農らの参加は一切ありませんでした。【10】 こうしたプロセスにおける不備は、明らかにインドネシア法に照らして違法なものです。【11】 【12】
(4) 同事業は、現地で深刻な人権侵害を引き起こし、また、表現の自由を脅かしてきました。同事業に反対の声をあげてきた複数の農民が冤罪の犠牲者となりました。つまり、でっちあげの罪状で起訴され、5、6ヶ月間、刑務所に収監されました。【13】 インドネシア法【14】 に基づけば、インドネシア政府は環境を守ろうとする農民らを保護しなくてはなりませんが、それを怠っています。【15】
(5) 同事業は、電力の供給過剰が指摘されているジャワ・バリ電力系統には必要ありません。インドネシア政府の計画【16】 でも、同電力系統の2028年までの電力供給予備率は30~45%で推移することが示されています。新型コロナウイルスによる経済への甚大な影響を考慮すれば、電力需要の伸びも鈍化するでしょう。同事業がJICAの円借款を受けて推進されれば、インドネシア国有電力会社(PLN)乃至インドネシア政府は、そうした不必要な発電所のために、数十年もかけて借金を返済しなくてはならないでしょう。これは、将来世代に対する理不尽な負担を意味します。
(6) 同事業は、座礁資産になるリスクを抱えています。【17】 パリ協定の長期目標を達成するためには、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の稼働を完全に停止する必要があるからです。【18】 同発電所の建設は、高効率と言われる超々臨界圧(USC)の技術を利用するにせよ、パリ協定の目標と整合しないことは明らかです。【19】 気候危機に対処し、脱炭素社会に向けた信頼のおける移行を実現していくためにも、許容されるべきではありません。また、同事業がJICAの円借款を受けて推進されれば、PLN乃至インドネシア政府は、そうした座礁資産のために、数十年もかけて借金を返済しなくてはならないでしょう。これもまた、将来世代に対する理不尽な負担を意味します。
現地コミュニティーの生活や環境を犠牲にして、また、将来世代の機会や選択、そして地球規模の気候と引き換えに、同事業が推進されてはなりません。また、同事業は、脚注で詳述したように、日本政府の複数の方針と整合しておらず、JICAの環境社会配慮ガイドライン(脚注では「ガイドライン」と表記)も遵守していません。私たちは、インドラマユ現地のコミュニティー、また、インドネシアと世界の将来世代のために、日本政府とJICAが同石炭火力発電所に対して融資を行なわないと決断するよう強く要請します。
Cc: 財務大臣 鈴木 俊一 様
経産大臣 萩生田 光一 様
環境大臣 山口 壯 様
官房長官 松野 博一 様
外務副大臣 小田原 潔 様
外務副大臣 鈴木 貴子 様
財務副大臣 伊藤 渉 様
財務副大臣 大家 敏志 様
経済産業副大臣 細田 健一 様
経済産業副大臣 石井 正弘 様
環境副大臣 大岡 敏孝 様
環境副大臣 務台 俊介 様
駐インドネシア日本国大使 金杉 憲治 様
呼びかけ団体:
インドネシア環境フォーラム(WALHI/FoEインドネシア)
インドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワ
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
【個人署名114ヶ国10,860名】
(略)
【団体署名34ヶ国114団体/上記呼びかけ団体含む】
(略)
【連絡先】
国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
200万kW(100万kW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(100万kW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を締結(2013年3月)。現在もE/S借款の支払いを続けている。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。