【プレスリリース】インドネシアの市民団体がチレボン石炭火力の環境・人権・汚職問題でオランダのING銀行に苦情申立てを提出

Fair Finance Guide Japan
国際環境NGO FoE Japan

2020年3月 すでに稼働している1号機の隣接地で進められている2号機の建設工事。住民の生活の糧である多くの塩田が奪われた。
2019年10月 ジャカルタにあるインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)のビル前で、「汚染/汚職にまみれたチレボン石炭火力2号機」「Hyundaiの汚職に関するKPKによる徹底調査を支持する」と書かれた横断幕を持ち、KPKの調査を呼びかける現地グループ

※本リリースはインドネシアのResponsiBank Indonesiaが作成したものに、日本語への翻訳にあたって一部追記を行っています。

2021年4月26日 ― インドネシアの市民団体の連合体であるResponsiBank Indonesiaが、オランダのING銀行に対し、インドネシアのチレボン石炭火力発電事業への融資について、環境被害、人権侵害、汚職問題を引き起こしていることから、苦情申立書を提出しました。INGグループの株主総会は本リリース発表日(4月26日)に開催されます(※1)。

ING銀行は、チレボン石炭火力発電所2号機の建設に対し、5億9,200万米ドルの民間金融機関による協調融資に参画しています。ING銀行はチレボン1号機への融資にも関与しており、同じく2号機建設に関与する丸紅等に対する1億8,200万米ドルの協調融資(民間銀行分)に参加しています。

(訳者注)なお、両事業に対しては、日本から国際協力銀行(JBIC)、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行が融資を行い、日本貿易保険(NEXI)が付保を行っています。

Responsibank IndonesiaのコーディネーターであるAh Maftuchanは、「ING銀行は有害物質の排出、農家や漁業者への被害、そして大気汚染による健康被害について責任を負っています。インドネシアにおいて、新規の石炭火力発電所はそれぞれ毎年平均600人もの死亡の原因となっています。ING銀行は、新規の石炭火力発電所建設による汚職や人権侵害に関するインドネシアの地域住民の懸念を真剣に受け止め、それらの問題に対処することが重要です。もしING銀行が状況を改善させる気がない、もしくはできないのであれば、責任を取ってインドネシアの石炭火力発電所に対する融資を中止するべきです。」と述べています。

WALHI (インドネシア環境フォーラム)西ジャワの事務局長であるMeiki W. Paendongは、「ING銀行が融資するチレボン2号機は環境を損ない、塩田で塩づくりに従事していた何百人もの地域住民の生計手段を奪い、また彼らの漁場も狭めてしまいました。ING銀行はチレボン石炭火力発電所1号機及び2号機によるいずれの悪影響に関しても責任を取っていません。ING銀行は石炭関連事業、特に石炭火力発電所への支援を中止し、今後も関与しない決断をするべきです。」と述べています。

ING銀行に対する苦情申立ては、13のインドネシア市民団体の連合であるResponsibank Indonesia(Fair Finance Internationalのメンバー)によって行われました。ING銀行CEO、Van Rijswijk氏宛ての同苦情申立書の中で、これらの団体は、以下3点の具体的な措置を取ることを要請しています。

・チレボン石炭火力発電所1号機の建設・操業及び2号機の建設による環境破壊と人権侵害の回避のためにING銀行が取ってきた措置を公に説明すること。
・ING銀行が汚職防止のために取ってきた措置と、2号機の環境許認可取得において贈収賄が行われていたことが明らかになった後にどのような措置を取ったかについて公に説明すること。
・ING銀行が上記の質問に対して具体的な回答をしようとしない、またはできないのであれば、チレボン2号機に対するこれ以上の融資を中止すること。

2017年と2018年に、インドネシアの市民団体はすでにING銀行に対し、インドネシアの石炭火力発電所への融資に対する彼らの懸念について書簡を送付していました。ING銀行は、最初の書簡に対しては非常に一般論的な回答をしましたが、2回目の書簡に対しては一切回答をしませんでした。その結果として、今回初めてインドネシアの市民団体は公式な苦情申立手続(※2)を取ることとしました。本苦情申立ては、オランダの財務大臣、外国貿易・開発協力大臣及び国会にも共有されています。

ResponsiBank Indonesiaは、Fair Financeアジア及びFair Financeインターナショナルのメンバー団体で、金融機関の投融資決定が地域住民の環境・社会的な福利を尊重するよう働きかける活動を行っています。ResponsiBank Indonesiaのメンバー13団体の活動目標は、インドネシアで投資活動を行う銀行に対し、パリ協定の目標、国連の持続可能な開発目標(SDGs)及び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に銀行業務方針とその実施を整合させるよう促すことです。

本件に関する問合せ先

<日本での問い合わせ先>
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺
メール:tanabe@jacses.org

国際環境NGO FoE Japan、担当:波多江
電話:+81 3 6909 5983 メール:hatae@foejapan.org

<インドネシアでの問い合わせ先>
WALHI、担当:Sawung
電話:+62 815 6104606 | WhatsApp:+63 999 412 0029
メール:sawung@walhi.or.id

<オランダでの問い合わせ先>
Oxfam Novib、担当:Jules van Os
電話:+31 6 51573683
メール:jules.van.Os@oxfamnovib.nl

Responsibank Indonesiaに関する詳細については、こちらを参照:https://responsibank.id/

脚注: ※1: https://www.ing.com/Investor-relations/Shareholders-meeting/Annual-General-Meeting/2021-Annual-General-Meeting-ING-Groep-N.V.-Agenda.htm
※2: https://www.ing.com/About-us/Compliance/Complaints.htm (日本語版リリース追記)ING銀行は犯罪または非倫理的であると疑われる不正行為または行動に対する苦情申立ての制度を設けています。ING銀行では汚職問題を始めとして人権侵害を引き起こす投融資事業も苦情申立ての対象としています。

(★)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団(三菱UFJ、三井住友、みずほ、ING)が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では、アクセス道路の整備や土地造成作業などが終わり、本格的な工事が続けられている。2022年に運転開始見込み。

 

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