【アンケート結果】クーデター後のミャンマー産木材の調達・販売ついて企業アンケートを実施しました
ミャンマーで2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生してから1年7カ月が経過しましたが、ミャンマー国軍による市民への非人道的な虐殺や暴力は今も続いています。政治囚支援協会(AAPP)によれば、クーデター以降、少なくとも2,262名以上の市民が治安部隊によって殺害され、依然として12,219名以上が不当に拘束されたままです(2022年9月1日時点)。国軍による空爆や焼き討ちなど民間人に対する故意の攻撃も繰り返され、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の8月の報告によれば、クーデター以降の国内避難民は90万人を超えています。
FoE Japanはこれまで、他の市民団体とともに「#ミャンマー国軍の資金源を断て」と題したキャンペーンを立ち上げ、ミャンマーで巨額の経済支援やビジネスを行ってきた日本政府や企業に対し、ミャンマー市民への非人道的な行為を続ける国軍を利する可能性のある資金の流れをしっかりと断つよう、求めてきました。
今回、ミャンマー国軍の資金源の一つとなっていることが国際的にも指摘されてきた、また日本市場で重宝されている天然木チーク製品をはじめとするミャンマー産木材に着目し、ミャンマー国軍によるクーデター以降の日本国内におけるミャンマー材の流通状況を把握すべく、アンケート調査を実施しました。
調査対象はミャンマー材、特に代表的な樹種であるチークが採用されることの多いフローリングや家具を取り扱っている製造、卸、小売事業者、および住宅、非住宅、商業施設などの建築・建設事業者、258社とし、14社(5.4%)の回答が得られました。回答数が限られており仮説の域を出ませんが、近年、企業活動に対してSDGsやESG投資など様々な環境社会配慮が求められるようになる中で、大手企業においてはミャンマー材をリスク材として捉える傾向が見受けられました。他方、中小企業においては、クーデター以降も従来どおりの調達や販売を継続し、一部では購入することでミャンマーの林産業に寄与しているという、国軍によるミャンマー市民への弾圧という状況を許容・軽視するものもありました。
以下に結果の概要を示します。
結果概要
回答からは、近年、ミャンマーとの二国間で取引されている木材について、樹種はチーク、ピンカドー、タウンサィェットなど、製品は無垢、複合フローリング、造作、家具であること、取引量としては各製品で100㎥前後と、小規模な取引に留まっていること、2014年の丸太輸出禁止措置以降は調達をやめた企業もあること、などが確認されました。しかしながらミャンマーから中国やタイなど第三国を経由したミャンマー産材の国内流通に関しては、十分な回答が得られなかったため、課題として残されました。他方、FAOSTATおよび貿易統計に基づく分析では、ミャンマー材は第三国を経由、または加工されて日本市場に流通している可能性が高いこともわかりました。
したがって、ミャンマーで生産される主要樹種製品(チーク、ピンカドー、パドウク、カリン、タウンサィェットなど)を取扱う事業者は説明責任を果たす意味で、自社の責任において適切にトレーサビリティを確認し、その樹種の合法性や持続可能性を担保することが求められます。
各社の木材調達にかかる環境社会配慮に関して、合法性の確認においては、国がクリーンウッド・ナビで提供する情報が一定レベル活用されていることが確認されました。持続可能性の確認においては、一部では現行法の要求水準に捉われることなく配慮、確認する姿勢が見られることが確認されました。地域社会への影響への配慮に関しては、依然として持続可能性の一環として捉えられ、合法性確認の範疇にないとの考えが見られるものの、一部では確認する姿勢も見られました。また購入することでミャンマーの林産業に寄与しているという、国軍によるミャンマー市民への弾圧という状況を許容・軽視するものもありました。
今後の取引を継続する理由には、クーデター前の調達材ゆえ販売することに問題はない、というものと、国軍の市民への武力弾圧を是認し、国軍の資金源に寄与することを認識した上で、ビジネスを継続するというものが確認されました。
最後に、現状のミャンマー材は「紛争木材」に極めて近い状態だと考えられます。「紛争木材」と国連が認定したわけではないため、ミャンマー材の商取引は違法行為ではありませんが、近年、国際的にも重要視されているビジネスと人権の理念に照らして、容認され難いものです。「国軍に資金が流れることを回避することで、人権侵害と民主主義の弾圧に加担しない」という企業が果たすべき社会的責任に照らし、現在の状況下においてミャンマー材に係るビジネスは停止すべきです。