「ミャンマー材の調達・販売に関する実態把握アンケート」へのご協力のお願い

森林2022.6.6

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、その動向が世界的な注目を集めている一方、ミャンマーにおける悲惨な現状が顧みられる機会は減る傾向にあります。そもそも、クーデターが発生して以降、日本政府をはじめミャンマーでビジネスを展開する多くの企業は積極的な関与をせず、事態を「静観」する姿勢を崩してきませんでした。しかし、事態を「静観」することによって、国軍による非人道的な行為のリスクは増大していきます。

ミャンマーで2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生してから1年4カ月が経過しましたが、ミャンマー国軍による市民への非人道的な虐殺や暴力が続いています。政治囚支援協会(AAPP)によれば、クーデター以降、少なくとも1,860名以上の市民が治安部隊によって殺害され、依然として10,800名以上が不当に拘束されたままです(2022年5月27時点)。国軍による空爆や焼き討ちなど民間人に対する故意の攻撃も繰り返され、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の5月の報告によれば、クーデター以降の国内避難民は59万人に上っています。これに対し、ミャンマー市民や国際社会から強い非難の声が相次いで出されていますが、市民が直面する苦境は一向に改善の兆しが見られません。

ミャンマーで巨額の経済支援やビジネスを行ってきた日本の官民は、ミャンマー国軍を利する可能性のある資金の流れをしっかりと断つ責任があります。ミャンマー市民の犠牲をこれ以上増やさないために、そして何よりも民主主義と自由を求めて闘い続けているミャンマー市民の皆さんのために、私たちの責任ある行動が、今求められています。

FoE Japanでは、これまでもミャンマー材の違法伐採リスクについて警鐘を鳴らしてきましたが、クーデター以降、ミャンマー材はもはや紛争木材[1]と化したと言っても過言ではありません。そこで、国内におけるミャンマー材の流通状況の把握を目的として、本アンケート調査を実施することにいたしました。

大変お忙しいところ誠に恐縮ですが、本アンケートの主旨をご理解いただき、回答にご協力をいただけますよう、お願い申し上げます。

本アンケートにご記入いただいた回答については全体の傾向をとりまとめた上で結果をウェブサイト等で公表する予定です。なお個別の組織・個人等が特定される情報は公開せず、回答内容に関して当方から問合せをさせていただく場合のみ使用いたします。

記入上の注意
(1)      アンケート票の回答欄に直接ご記入ください。
(2)      回答に当たっては、特段の指定のない限り2022年5月末の状況にてお願いいたします。
(3)      アンケートの回答には、オンラインまたは電子ファイルを利用することも可能です。以下のURLからダウンロードください。オンライン回答以外の場合は、回答されたファイルを下記の返信先にメール添付にてお送りください。

【アンケート票ダウンロード】https://foejapan.org/myanmar_question.docm

【アンケート提出締め切り】 2022年6月24日(金)
【返送先】 国際環境NGO FoE Japan ミャンマー材流通実態把握調査アンケート係
【Eメール/FAX】 forest(アット)foejapan.org / 03-6909-5986

※アンケートはEメールまたはFAXにてご返信ください。

【問合先】 上記返送先のEメールまでお願いします。テレワーク実施中のため、対応できるスタッフが事務所にいないことがあります。
      国際環境NGO FoE Japan(担当:三柴)


[1] 「紛争木材」とは国連安全保障理事会が2003年、内戦状態にあるリベリアにおいて、木材貿易が反政府勢力への資金源となっていることが明らかとなり、リベリア産の丸太や木材製品の国際取引に制裁を課した際に用いられた概念で、その後も環境社会配慮において重要なキーワードになっています。


ミャンマー材の国際取引と国軍との関連について

以下は、米国NGOの環境調査エージェンシー(Environmental Investigation Agency, EIA)による報告書や公表資料などにおけるミャンマー材の国際取引と国軍との関連についての記述の一部を紹介するものです。なお、原文は英語でFoE Japanが仮訳、抜粋しました。

※米国NGOの環境調査エージェンシー(EIA)は長年にわたり、違法伐採や密輸など森林にまつわる犯罪等を追っている犯罪調査の専門家で、その実績は国際社会も認めており、ミャンマー国軍のクーデターを受けて、米国、英国、EUがMyanmar Timber Enterprize(MTE)とミャンマー森林大臣Khin Maung Yiに制裁を課したのもEIAの提言に基づくものです。

(1)The Italian Job – How Myanmar timber is trafficked through Italy to the rest of Europe despite EU laws(2021), p22-25.
https://eia-international.org/wp-content/uploads/The-Italian-Job-2021-SPREADS.pdf

国営のMyanmar Timber Enterprize(MTE)は、国内のすべての「合法的な」木材販売に関与している。これはすべての輸出の規制当局であり、現在は軍事政権によって管理されている。2017~2018年度の輸出用木材販売からのMTEの収入は1億8,600万ドル以上である。さらに国は木材貿易に関連するロイヤルティと税金からほぼ1億ドルの収入を得ている。ミャンマーの木材貿易の重要性、そしてそれが軍事政権の収入源になっていることは、貿易制裁を行っているEU、英国、米国によって再認識されている。 軍は資金調達のため、木材を競売にかけ続けている。競売にかけられている木材は、押収された後、国際市場に流入する可能性のある違法木材になることが懸念されている。例えば、2020年に軍は、約2,000トンのチークを含む、合計約10,000トンの違法木材を押収した。これは約700万ドルに相当する。EIAの調査でも、軍が押収した木材がどのように処理されているのか確認できておらず、またクーデター以来、その調査・監視も不足しているため、国が押収した違法材に何が起こるか判断材料に不足している。

(2)EIAのWEBサイト, Environmental Investigation Agency (EIA) statement on political situation in Myanmar and related timber trade issues.
https://eia-international.org/press-releases/environmental-investigation-agency-eia-statement-on-political-situation-in-myanmar-and-related-timber-trade-issues/

EIAは決してミャンマー産の木材や木材製品の貿易を支持しない。EIAは過去10年間、ミャンマーの森林や森林資源のあからさまな窃盗行為や軍事政権のトップを含む政権高官らの汚職・腐敗など、ミャンマーの人々が安全と生活のために依存している森林が豊富な地域で行われた犯罪を暴露してきた。またその犯罪に関与するミャンマー、近隣諸国・地域、ヨーロッパ、米国の人々や組織を暴露してきた。これらの人々はミャンマーの森林窃盗を支援し続けている。2021年2月1日以前は、国際社会をはじめ市民社会、林業専門家、民間企業などによる支援を受けた、森林・林業セクター内のガバナンスと技術改革の機会は残されていたが、現在、国のあらゆる側面を支配し、政権にのみ利益をもたらす軍事政権下においては、もはやこのようなことはありえない。ミャンマー産の木材や木製品の購入を検討している購入者に注意喚起をする。2021年2月1日のミャンマー軍事クーデター以降、ミャンマー産木材を購入することは森林内や無実の民間人に対する暴力を支援し、ミャンマーの民主主義の破壊に貢献することであり、軍事政権を支持することになるだろう。

(3)EIAのWEBサイト, Myanmar’s tainted timber and the military coup.
https://eia-international.org/forests/myanmars-tainted-timber-and-the-military-coup/

軍事政権への資金流入を阻止するために、多くの国々がクーデターに関与した軍人個人を対象に制裁を課しているEU、英国、米国は国営のMyanmar Timber Enterprise(MTE)にも制裁を課している。EUはさらに一歩踏み込んで、ミャンマー国が過半数を所有するForest Products Joint Venture Corporation(FPJVC)に対して制裁措置を取った。EUと米国は過去にMTEに制裁を課したものの、第三国を介して間接的に取引することで制裁を回避することができた。2019年、ミャンマーは1億7,000万米ドル近くの木材製品を輸出し、その収入のかなりの額がMTEや軍と直接・間接的に関連する他の企業にわたっている。

 

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