インドネシア・ドンギ・スノロLNG事業:生計被害を受ける現地住民らが三菱商事・JBICへ再要請書を提出――直接協議と実効性ある救済措置、新規投融資の停止を要求

 今年6月、インドネシア・スラウェシ島で操業を続ける「ドンギ・スノロLNG事業(DSLNG)」に関し、現地住民グループと日・インドネシアの環境団体は、周辺住民の漁業や農業など生計手段に甚大な被害が生じていることを指摘する書簡を日本の官民関係者に提出しました。しかし、これに対する三菱商事および国際協力銀行(JBIC。日本政府全株式保有)からの回答は「現地での問題を認識していない」という内容にとどまり、問題解決に向けた具体的な措置は一切示されませんでした。 

 これを受け、2026年9月23日、同団体らは両者に対し、同事業による被害実態の十分な把握および実効性ある問題解決措置の確保に取り組むよう求める要請書を改めて提出しました。

 DSLNGは2015年に操業を開始し、生産されるLNGの約65%を日本企業が購入しています。(同事業の概要はこちらをご覧ください。)

 今回の要請書では、同事業の最大株主である三菱商事(約45%出資)および最大の融資提供者であるJBICが長年にわたり被害実態を把握できていない現状について、両者の人権・環境デューデリジェンス(DD)およびモニタリング体制の重大な不備・欠陥を指摘しています。 

 各要請書の主な要求事項は以下の通りです。

  • 三菱商事に対しては国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」が求める「企業の人権尊重責任」と「救済へのアクセス」の履行を、JBICに対しては『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』運用上の重大な過失に対する自らの責任を果たすこと。
  • 被害を受けている地域コミュニティとの直接協議の場を速やかに設け、実効性ある問題解決措置の確保に向けて誠心誠意取り組むこと。
  • DSLNGにおける既存の問題が解決されない限り、同周辺地域で計画・推進されている新たなガス関連事業に対して、両者が一切の投融資を行わないこと。

詳細は、以下の各要請書をご覧下さい。

三菱商事宛て要請書(PDF:原文インドネシア語和訳英訳

国際協力銀行(JBIC)宛て要請書(PDF:原文インドネシア語和訳英訳

インドネシア中スラウェシ州ドンギ・スノロLNG事業により悪影響を受けた住民との協議および実効性ある救済措置の確保に関する要請

(原文はインドネシア語。以下は、FoE Japanによる和訳)

2026年9月23日

三菱商事株式会社 代表取締役 社長 中西 勝也 様

 私たちは2026年6月24日付の書簡において、ドンギ・スノロLNG事業(DSLNG)が10年以上にわたり引き起こしてきた地域住民の生計手段や健康への影響を指摘しました。同時に、これらの問題を確実に解決するため、実効性ある措置(影響を受けてきたすべての地域住民への適切かつ十分な補償を含む)の策定・実施・モニタリングが透明性のある形で行われる必要性を訴えました。地域住民が受けてきた長期にわたる被害は人権侵害に他ならず、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)が掲げる「企業の人権尊重責任」に基づき、「救済へのアクセス」が確実に確保されるべきものです。

 この度は、貴社の人権方針[1]においてUNGP等の「国際規範の支持・尊重」を明確に掲げる貴社に対し、以下2点を具体的に要請します。

(1)地域住民が受けてきた10年以上にわたる深刻な被害状況、および、必要としている問題解決策を十分に理解・把握するため、影響を受けた漁民・農家との協議の機会を早急に設けること。

(2)上記協議を踏まえ、実効性ある救済措置/問題解決措置を確保するため、PT Donggi-Senoro LNG(PT DSLNG)に対してあらゆる働きかけを行うこと。

 DSLNGに係る環境・社会面での配慮に関して、現時点で貴社が特段の問題はないという認識をお持ちであるならば、貴社の人権・環境デューデリジェンス(DD)およびモニタリングは極めて不十分であると言わざるを得ません。貴社が一義的にPT DSLNGからの報告のみに依存し、同社の関与がない形での独立かつ適切な確認・精査を怠ってきた可能性を私たちは強く懸念します。

 貴社が長年にわたり地域住民が受けてきた被害の実態を把握できていない現状は、UNGPが求める「企業の人権尊重責任」や「救済へのアクセス」の原則を履行するための貴社の体制に根本的な不備があるからに他ならないと私たちは考えます。同事業における最大出資者として、貴社の責任は他の関係者よりも極めて重く、地域住民の人権尊重および救済アクセスの確保において、より主体的な役割と説明責任を果たすべき立場にあります。

 したがって、貴社が自らの責任を果たし、まずは上記(1)に掲げた地域コミュニティとの直接協議の機会を設けること、そして(2)の実効性ある問題解決措置の確保に向けて誠心誠意取り組むことを強く求めます。貴社は「現地における操業運営面の対応について、情報発信の一貫性を確保する観点から単独で意見交換を行う立場にない」と説明されていますが、そうであれば、貴社が主導してPT DSLNGも同席する形での協議の場を設定すべきです。

 最後に、DSLNG周辺で計画・推進されている新たなガス関連事業について、これら新規事業への投資機会があったとしても、DSLNGの既存の問題が解決されない限り、貴社が一切の投資を行なうべきではないことを強調します。

以上

署名:
Serikat Nelayan Uso (SNU)(ウソ漁業組合)
Serikat Petani Uso (SPU)(ウソ農民組合)
Masyarakat Nelayan Sinorang Pantai(シノラン沿岸の漁業コミュニティ)
WALHI中スラウェシ
インドネシア環境フォーラム(WALHI)
FoE Japan

Cc:
国際協力銀行 代表取締役総裁 天川 和彦 様
株式会社 日本貿易保険 代表取締役社長 黒田 篤郎 様
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役社長 グループCEO 中島 達 様
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 半沢 淳一 様
株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕 様

【連絡先】
インドネシア環境フォーラム(WALHI)中スラウェシ
住所: Jalan Tanjung Manimbaya Nomor 126, Kelurahan Tatura Utara, Kecamatan Palu Selatan, Kota Palu, Sulawesi Tengah
Email: sulteng@walhi.or.id
Tel: +62 822-1553-4058

WALHI National Executive
住所: Jl. Tegal parang Utara No. 14, RT.005/RW.004. Mampang Prapatan, Kota Jakarta Selatan – DKI Jakarta
Email: Faizalabdrahman@gmail.com
Tel: +62 822-9005-6503

国際環境NGO FoE Japan
住所: 1-21-9 Komone, Itabashi-ku, Tokyo, Japan 173-0037
Email: hatae@foejapan.org
Tel: +81 3 6909 5983


[1] https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/sustainability/social/humanrights/001.html

インドネシア中スラウェシ州ドンギ・スノロLNG事業により悪影響を受けた住民との協議および実効性ある救済措置の確保に関する要請

(原文はインドネシア語。以下は、FoE Japanによる和訳)

2026年9月23日

国際協力銀行 代表取締役総裁 天川 和彦 様

 私たちは2026年6月24日付の書簡において、ドンギ・スノロLNG事業(DSLNG)が10年以上にわたり引き起こしてきた地域住民の生計手段や健康への影響を指摘しました。同時に、これらの問題を確実に解決するため、実効性ある措置(影響を受けてきたすべての地域住民への適切かつ十分な補償を含む)の策定・実施・モニタリングが透明性のある形で行われる必要性を訴えました。

 この度は貴行に対し、以下2点を具体的に要請します。

(1)地域住民が受けてきた10年以上にわたる深刻な被害状況、および、必要としている問題解決策を十分に理解・把握するため、影響を受けた漁民・農家との協議の機会を早急に設けること。

(2)上記協議を踏まえ、実効性ある救済措置/問題解決措置を確保するため、事業者に対してあらゆる影響力を行使すること。

 去る8月17日の会合において、貴行からは『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』(ガイドライン)に基づく対応として、以下の説明を受けました。

(a)融資の意思決定前の環境レビュー期間中、2026年6月24日付書簡で指摘した諸問題を把握していなかった。

(b)融資の意思決定後のモニタリング期間中(償還完了まで)、事業者から年1回のモニタリング報告を受けていたが、同諸問題を把握していなかった。

(c)現在はガイドラインに基づくモニタリングを行っていない。(事業者からのモニタリング報告受領も終了している。)

 上記(a)および(b)は、貴行の環境レビューおよびモニタリングが極めて不十分であったことを如実に示しています。その根本的な要因の一つは、貴行が一義的に事業者からの報告のみに依存し、事業者の関与がない形での独立した審査や確認を怠ってきたからであると私たちは考えます。

 貴行が長年にわたり被害の実態を把握できていなかったことは、ガイドライン運用上の重大な過失に他なりません。DSLNGへの金融支援がなければ同事業は成立せず、地域住民が被害を受けることもありませんでした。また、モニタリン段階で適切な措置が講じられていれば、被害がここまで長期化・深刻化することもなかったはずです。同事業における最大の融資者であった貴行の責任は極めて重く、たとえ上記(c)のとおり、貴行がガイドラインに基づくモニタリングをすでに行っていないとしても、過去の過失に対する責任が免責されることはないと私たちは考えます。

 したがって、貴行が自らの責任を果たし、まずは上記(1)に掲げた地域コミュニティとの直接協議の機会を設けること、そして(2)の実効性ある問題解決措置の確保に向けて誠心誠意取り組むことを強く求めます。

 最後に、DSLNG周辺で計画・推進されている新たなガス関連事業について、そのような新規事業への金融支援の機会があったとしても、DSLNGの既存の問題が解決されない限り、貴行が一切の金融支援も行なうべきではないことを強調します。

以上

署名:
Serikat Nelayan Uso (SNU)(ウソ漁業組合)
Serikat Petani Uso (SPU)(ウソ農民組合)
Masyarakat Nelayan Sinorang Pantai(シノラン沿岸の漁業コミュニティ)
WALHI中スラウェシ
インドネシア環境フォーラム(WALHI)
FoE Japan

Cc:
財務大臣 片山 さつき 様
経済産業大臣 赤澤 亮正 様
株式会社 日本貿易保険 代表取締役社長 黒田 篤郎 様
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役社長 グループCEO 中島 達 様
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 半沢 淳一 様
株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕 様

【連絡先】
インドネシア環境フォーラム(WALHI)中スラウェシ
住所: Jalan Tanjung Manimbaya Nomor 126, Kelurahan Tatura Utara, Kecamatan Palu Selatan, Kota Palu, Sulawesi Tengah
Email: sulteng@walhi.or.id
Tel: +62 822-1553-4058

WALHI National Executive
住所: Jl. Tegal parang Utara No. 14, RT.005/RW.004. Mampang Prapatan, Kota Jakarta Selatan – DKI Jakarta
Email: Faizalabdrahman@gmail.com
Tel: +62 822-9005-6503

国際環境NGO FoE Japan
住所: 1-21-9 Komone, Itabashi-ku, Tokyo, Japan 173-0037
Email: hatae@foejapan.org
Tel: +81 3 6909 5983

 

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