プレスリリース:住民および環境団体ら、事故を繰り返す首都圏CCS事業に申し入れと公開質問

気候変動

千葉県で進む首都圏CCS事業をめぐり、7月の試掘工事開始依頼、複数の事故が発生しており、地元住民等の間で不安が広がっている。この事態を受けて、地元の住民らが参加する「九十九里の海を守る会」や、「気候変動を考える東京湾の会」環境NGOである「FoE Japan」と「気候ネットワーク」の4団体は、事業を進める首都圏CCS会社に対し、申し入れと公開質問を行った。

首都圏CCS事業は、千葉県の内房エリアで発生したCO2を80キロメートルのパイプラインで輸送し、九十九里沖に貯留するというもので、現在事業の前段階である試掘調査が行われている。

2026年7月6日、九十九里沖約5kmの地点において、CCSの貯留適地を確認するためのJ-1試掘作業を開始されたが、事業者発表によると、8月22日には、作業支援船上で給油ホースが破断し、A重油約37リットルが海域に流出。8月29日には、掘削リグ発電設備内のエアフィルターが発火し、焼け焦げる事案が発生した。

試掘作業が開始されてから短期間のうちに複数の事故・事案が発生している以上、そもそもの計画や体制に問題があったのではないかと疑わざるを得ず、それぞれの事故を単発の事故として片付けるべき問題ではない。作業前の環境と市民生活の現況の把握、並びにこれから使おうとする機械の確認と改善を行った上で、現在の作業体制、安全管理体制、緊急時対応体制および環境保全措置が十分であるのか、根本から検証する必要がある。

事業者には、これまでに発生したすべての 事故・事案について、原因、経緯、責任の所在および再発防止策を、第三者の検証を交えて明らかにすることや、海洋環境、漁業、観光、景観および地域住民の生活への影響を改めて評価すること、評価結果と再発防止策について、地域住民に十分な説明を行い、意見を聴くこと、これらの検証・説明・協議が完了するまで、掘削作業を停止することなどを要請している。

詳しく下記をご覧ください。

九十九里沖におけるCCSのための試掘作業の停止を求める申し入れおよび公開質問

2026年9月7日
首都圏CCS株式会社 代表取締役社長 屋義昭 様


九十九里の海をまもる会
気候変動を考える東京湾の会
FoE Japan
気候ネットワーク

九十九里沖での試掘作業の即時停止と、CCS事業の抜本的な見直しを求めます

私たち九十九里地域の住民および環境団体は、貴社が九十九里沖で実施している首都圏CCS事業の試掘作業を直ちに停止し、事故・事案の原因究明、安全性の再検証、環境・地域社会への影響評価、ならびに十分な住民参加を経たうえで、試掘およびCCS事業そのものの是非を改めて見直すことを強く要請します。

貴社は2026年7月6日、九十九里沖約5kmの地点において、CCSの貯留適地を確認するためのJ-1試掘作業を開始しました。しかし、その後わずか1か月余りの間に、J-1掘削現場において複数の事故・事案が発生しています。

8月22日には、作業支援船上で給油ホースが破断し、A重油約37リットルが海域に流出したと述べています。8月29日には、掘削リグ発電設備内のエアフィルターが発火し、焼け焦げる事案が発生しました。

試掘作業そのものが開始されてから短期間のうちに複数の事故・事案が発生している以上、そもそもの計画や体制に問題があったのではないかと疑わざるを得ず、それぞれの事故を単発の事故として片付けるべき問題ではありません。作業前の環境と市民生活の現況の把握、並びにこれから使おうとする機械の確認と改善を行った上で、現在の作業体制、安全管理体制、緊急時対応体制および環境保全措置が十分であるのか、根本から検証する必要があります。

私たちは、少なくとも以下の事項が明らかになるまで、試掘作業を継続すべきではないと考えます。

  1. これまでに発生したすべての 事故・事案について、原因、経緯、責任の所在および再発防止策を、第三者の検証を交えて明らかにすること。
  2. 許認可事項、届け出事項を公開し、手続きに落ち度のないことを第三者も確認できるようにして進めること
  3. 今回の事案で、充分な情報公開がされず、住民に不安を与えたことから、地域経済に配慮し、海洋環境、漁業、観光、景観および地域住民の生活への影響を改めて評価すること。
  4. 評価結果と再発防止策について、地域住民に十分な説明を行い、意見を聴くこと。

「安全最優先で掘削作業を遂行する」との説明だけでは、地域住民の不安を払拭することはできません。実際に事故・事案が発生している以上、御社の信頼性、行政との協議内容、安全性について客観的に確認できる具体的な資料と検証結果を示してください。それまで、掘削作業を停止してください。

質問事項

私たちは貴社に対し、以下を質問し回答を求めます。

  1. 九十九里沖J-1の試掘作業は現在も停止しているのか。いつ再開を予定しているか。再開の基準は何か。
  2. 2026年8月22日の燃料油流出事故および8月29日に発生した事案について、原因、経緯、被害・影響、対応状況および再発防止策を独立した第三者を含む形で検証するか。その際その内容を全面的に公開するか。
  3. そもそも事故対応策はどのように計画されていたのか。安全管理体制の責任者は誰か。台風、地震、津波など、緊急時への対策計画は取られているのか。
  4. 事故の際に、住民や周辺産業への連絡体制はどうなっているのか。また、今回どのように行ったのか。
  5. 7月以来ハマグリの不漁が続き、8月22日の事故後には試掘現場に近い海岸のみで、ほかの生物も含めた大量死があった。これらの事象と試掘との関係についてどう考えるか。試掘や事故と関係がないというならその根拠は何か。
  6. 試掘前に、海洋環境のベースライン調査は行っているのか。海洋環境、漁業、観光、景観、地域住民の生活等に対する試掘の影響について、環境影響評価を行うべきと考えるが、いかがか。
  7. 試掘に関する環境・社会面の評価資料、リスク評価、事故対応計画、緊急時対応計画その他の安全関連資料を、地域住民が検証できる形で全面的に公開するべきと考えるが、計画はあるか。
  8. 作業再開を前提とした一方的な説明会ではなく、地域住民が質問・意見を述べ、その意見に対して貴社が具体的に回答する公開の協議の場を設けるべきであると考えるが、計画はあるか。
  9. 上記の検証、情報公開、住民との協議が十分に行われるまで、試掘を再開すべきでないと考えるが、現状のスケジュールはどうなっているのか。今後の掘削や圧入計画の見直しはあるのか。
  10. J-1試掘だけでなく、今後予定される二つ目の調査井(J-2)の試掘および首都圏CCS事業全体について、地域住民の参加を保障したうえで、その必要性・安全性・環境影響を改めて検証すべきと考えるが、計画はあるか。
  11. 試掘現場からは、常時100人分にもおよぶ生活雑排水が流されている。7月以降海水が汚れているという指摘が相次いでいるのに、理由は住民に知らされていない。さらに事故後には重油の洗浄等に大量に界面活性剤が使われたと想定される。それらによる周辺海域への影響は試算されているのか。

試掘開始以前から地域住民は明確に懸念を示していた

今回の問題は、事故が発生して初めて地域から懸念が示されたものではありません。

経済産業省が試掘許可に際して実施した利害関係者からの意見募集について、FoE Japanが情報公開請求を行ったところ、提出された意見は123件に上り、そのほぼすべてが試掘・事業への懸念または試掘そのものへの反対を示す内容でした。安全性、地震、環境、地元産業、説明不足など、地域住民が持つ問題意識は多岐にわたっています。それにもかかわらず、試掘許可にあたり、試掘に対して寄せられた意見を経済産業省はたった「6件」と整理し、多くの意見が無視されました。

また、CCS事業本体や試掘に関して、環境影響評価が実施されていません。地域への環境・社会的配慮について、情報はほとんど公開されていません。7月14日には、地域住民および環境団体が経済産業大臣に対して試掘許可の見直しを求める行政不服審査請求を行っています。

今回の事故・事案の発生を踏まえれば、これまで地域から示されてきた懸念を正面から受け止めてこなかった、経済産業省や事業者の姿勢、そして許認可のプロセスにも問題があったと言わざるを得ません。

「試掘」をCCS事業全体と切り離して扱うべきではありません

貴社は試掘について、CO₂貯留に適した地層の存在を確認するための調査であると説明しています。これまでの住民説明会においても、事業者は幾度も試掘と本体事業は別であることを強調していました。首都圏CCS事業は京葉臨海工業地帯の事業者からCO₂を回収し、パイプラインで輸送したうえで、九十九里沖に地下貯留することを目指すものです。2030年代初頭までの貯留開始を目標として調査・検討が進められています。そのための試掘作業である以上、今回の試掘を単なる「基礎調査」として、将来のCCS事業本体から切り離して考えることはできません。80キロメートルに及ぶパイプラインの敷設は、地域社会や環境に甚大な影響を与えます。パイプラインからの漏洩や、事故のリスクへの懸念の声が上がっているにもかかわらず、事業者は十分な情報公開と説明を行っていません。

九十九里の海と地域社会を、将来にわたりCCS事業の貯留地として利用することについて、地域住民が判断できるだけの情報を全面的に公開し、十分な議論を行う必要があります。

気候変動対策は待ったなしです。この間にも、千葉県をはじめ、北陸、ネパールなど各地で甚大な災害が相次ぎ、気候危機によって多くの命と暮らしが脅かされています。だからこそ、私たちは実効性のある脱炭素化を一刻も早く進めなければなりません。しかし、CO₂の排出削減効果が限定的である一方、多大なコストや環境・安全上のリスクを伴うCCSに依存することは、再生可能エネルギーへの転換や省エネルギー、そして化石燃料からの脱却を遅らせ、結果として脱炭素化そのものを遠ざけることになりかねません。

申し入れ内容および質問について、9月18日までにご回答をいただけますようお願いします。

以上

CC:
株式会社INPEX 代表取締役社長 上田隆之 様
関東天然瓦斯開発株式会社 代表取締役社長 石渡直尚 様
日本製鉄株式会社 代表取締役社長 今井正 様
経済産業大臣 赤沢亮正 様
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC) 理事長 髙原一郎様
資源エネルギー庁 燃料環境適合利用推進課御中

 

関連する記事

首都圏CCS予想図

九十九里沖に巨大建造物?多額の税金が投入される「首都圏CCS事業」とは

気候変動

【プレスリリース】千葉県沖でのCCS試掘事業に対し、地域住民らが不服申立 – 住民の懸念の声にも関わらず経産省は試掘を許可

気候変動
【プレスリリース】千葉県沖CCS試掘への意見123件、ほぼすべてが懸念・反対

【プレスリリース】千葉県沖CCS試掘への意見123件、ほぼすべてが懸念・反対

気候変動
外房の海

九十九里沖でのCCS事業のための掘削許可に抗議ー国と事業者はさらなる説明を

気候変動

関連するプロジェクト