九十九里沖でのCCS事業のための掘削許可に抗議ー国と事業者はさらなる説明を

気候変動

4月15日、経済産業大臣は、二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)に基づき、千葉県九十九里沖の特定区域における試掘を許可しました。私たちはこの許可決定に対し、強く抗議するとともに、本決定の撤回を求めます。

CCS(炭素回収貯留)とは工場や発電所から排出される二酸化炭素を分離回収し、地中に埋めることを指します。現在、INPEX等を中心に、房総半島で「首都圏CCS事業」が進められています。「首都圏CCS事業」とは、日本製鉄君津製鉄所から発生するCO2を、パイプラインを通して木更津市、袖ヶ浦市、市原市、長柄町、茂原市、白子町、九十九里町と千葉県を横断して運び、九十九里町沖の海底地下に貯蔵するというものです。将来的には製鉄所だけでなく、広く京葉臨海工業地帯からCO2を回収する計画です。これほどの大規模な事業の実施有無が、地元といってもパイプラインの通るごく狭い地域への説明のみで、2026年度末までに決められようとしています。

詳しくは抗議声明をご覧ください。

外房の海
外房の海

千葉県沖におけるCCS試掘の許可決定に対する抗議および撤回要請

経済産業大臣 赤澤 亮正殿
CC:資源エネルギー庁

2026年4月21日
気候変動を考える東京湾の会
九十九里の海をまもる会
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク

4月15日、経済産業大臣は、二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)に基づき、千葉県九十九里沖の特定区域における試掘を許可しました1。私たちはこの許可決定に対し、強く抗議するとともに、本決定の撤回を求めます。今回の許可は、九十九里での試掘が環境および社会への重大な影響が懸念されるにもかかわらず、それらの懸念に対する十分な説明や検討が行われないまま決定されたものであり、手続きの正当性や政策判断の妥当性において重大な問題があると考えます。

第一に、意見募集に提出された意見において、CCS事業による環境影響や社会影響に関する懸念が具体的に示されたにもかかわらず、国の回答はそれらに十分に応えていません2。特に、試掘と「首都圏CCS事業」3をそれぞれ独立したものとして扱い、「試掘の実施は首都圏CCS事業の実施を意味しない」かのような説明をしていますが、それは実態に反します。試掘は、首都圏CCS事業の実施を前提としたものであり、その適地評価および実施可能性の確認を目的として行われるものである以上、両者を切り離して評価することはできません。将来的な事業の是非について別途意見聴取を行うとしても、試掘段階での判断が事業実施の方向性を事実上規定することは明らかであり、今回寄せられた事業全体に対する懸念に対する回答にはなっていません。

第二に、試掘は海域に海上高さ100メートルを超えるような巨大掘削リグを建設するなど大規模な工事を伴うものであり4、海洋生態系、漁業、沿岸環境等への影響が懸念されます。しかしながら、国の回答では「試掘を実施する事業者には、周辺環境への十分な配慮も含め、あらかじめ具体的な計画を定めるよう求める」としているのみであり、その具体的内容は一切示されていません。環境影響への配慮を担保するというのであれば、試掘事業者に求める具体的な試掘計画、環境保全措置、調査方法、モニタリング手法等を事前に市民および利害関係者に公開し、意見を求めるべきでした。意見募集前に公開された情報はPDF5ページのみで5、詳細にまったく欠けていました。計画の内容を影響地域および住民に示さないまま許可を出すことは、透明性と説明責任を欠くものです。

第三に、対象海域が「CO₂を安定的に貯留できる地層が存在する可能性があり、海洋環境の保全にも留意した上で、国が特定区域に指定した区域」であり、「農業、漁業その他の産業の利益を損じず、公共の福祉に反しないことを含め、国の基準に適合するかを審査した」と説明されていますが、その審査の具体的内容は明らかにされていません6。どのようなデータに基づき、どのような評価手法で、どのような影響を想定し、どのように判断したのかについて、詳細な情報公開と説明が不可欠です。とりわけ、漁業や沿岸地域の観光等その他産業、および住民の生活への影響評価の方法、地震・漏出リスクの評価、長期的な環境影響の見通しなどについて、透明性ある情報開示が求められます。

そもそも、CCSは長期的な漏出リスクや責任の所在、海洋環境への影響、地域社会への影響など多くの不確実性を伴う技術です。また、高コストで温室効果ガスの削減効果もほとんどなく、気候変動対策として推進すべきではありません。さらに、CCS事業法は環境影響評価を不要として住民の合意も求めておらず、このような体制のまま、試掘も含めたCCS事業を推し進めることは、環境と社会、経済に重大な悪影響をもたらしかねません。今回の決定は、地域住民や関係者の懸念が解消されないまま拙速に進められたものであり、民主的手続きの観点からも問題があります。

以上、抗議するとともに、許認可の取り消しをを求めます。

出典

  1. 経済産業省 「CCS事業法に基づき、千葉県九十九里沖の特定区域における試掘を許可しました」2026年4月15日, https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260415001/20260415001.html
  2. 「二酸化炭素の貯留事業に関する法律第4条第1項の規定に基づく試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧において寄せられた御意見の概要と考え方」https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/carbondioxidecaptureandstorage/kujukuri260415_260107publicnoticeandinspectionresponse.pdf
  3. 「首都圏CCS事業」事業者ウェブサイト, https://mccs.inpex.co.jp/
  4. 住民説明会資料より
  5. 経済産業省「二酸化炭素の貯留事業に関する法律第4条第1項の規定に基づく試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧について」2026年1月7日https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/carbondioxidecaptureandstorage/kujukuri260107_exploratorydrillingpublicnoticeandinspection.pdf
  6. 「第4回 二酸化炭素地中貯留評価検討会」2025年12月23日, https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_dioxide/004.html

声明に関する連絡先:
FoE Japan
info@foejapan.org

 

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