【プレスリリース】千葉県沖でのCCS試掘事業に対し、地域住民らが不服申立 - 住民の懸念の声にも関わらず経産省は試掘を許可

気候変動
九十九里沖に到着した、試掘のための掘削機(リグ)/写真:河野 正史

 2026年4月15日に、千葉県九十九里沖で行われるCCS(二酸化炭素回収・貯留)事業のための試掘事業を経済産業大臣が許可したことを受け、大網白里市や匝瑳市の地域住民ら5名とFoE Japanは、試掘許可を見直すよう求め、本日7月14日、行政不服審査法に基づく審査請求書を経済産業省に提出しました。

 試掘許可に先立ち、経済産業大臣は利害関係者からの意見募集を実施していましたが、4月15日に許可の発表と同時に「試掘に関する意見は6件、それ以外のCCS政策に関する意見は17件」と非常に限られた形で公表し、「公共上の支障はない」と結論づけ、試掘を許可しました(注1,2)。しかし、FoE Japanが行った情報開示請求の結果、意見は120件以上提出されており、さらにそれら意見のほぼすべてが、試掘や事業への懸念を示す、または試掘そのものに反対する内容で、試掘に賛成あるいは肯定的な意見は1件も確認されていませんでした。

 事業者のウェブサイトによると、7月6日に九十九里沖に試掘リグが到着し、作業を開始しています。九十九里浜からはっきりとリグの存在が確認できますが、試掘に関する環境影響評価は実施されておらず、事業者がどのような環境・社会配慮を行うかといった情報も一切公開されていません。このまま試掘が進めば、美しい九十九里の自然や景観が損なわれ、環境や漁業や観光業など地元の産業のみならず、住民生活に多大な影響を及ぼしかねません。

注1:経済産業省「CCS事業法に基づき、千葉県九十九里沖の特定区域における試掘を許可しました」 https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260415001/20260415001.html, 2026年4月15日
注2:「二酸化炭素の貯留事業に関する法律第4条第1項の規定に基づく試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧において寄せられた御意見の概要と考え方」https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/carbondioxidecaptureandstorage/kujukuri260415_260107publicnoticeandinspectionresponse.pdf

写真:到着したばかりの掘削リグ。サンライズ九十九里前の浜から6日11時頃撮影。住民提供

 CCSは、CO2の漏出リスクや、海洋環境への影響、地域社会への影響など多くの不確実性を伴う技術である上、高コストで温室効果ガスの削減効果もほとんどなく、気候変動対策として推進すべき技術ではありません。他の有効な気候変動対策を遅らせる可能性もあります。CCS事業は著しく大規模な工事を伴うものであり、かつ前記のとおりリスクを伴うものであるにもかかわらず、CCS事業法上、環境影響評価は不要とされており、また、住民の同意も求めておらず、同法が定める手続きには問題があります。試掘も含め、本事業は限られた財政から多額の公的資金を投入して行われるもので、全国民に関わる問題です。このまま市民への十分な説明を行わず、意思決定過程の透明性を欠いたまま試掘を開始すれば、将来にわたって禍根を残します。

 このような状況のまま、試掘も含めたCCS事業を推し進めることは、環境と社会、経済に重大な悪影響をもたらしかねません

 不服申し立てを行った佐久間久良さんは「子どもの頃から九十九里の海が好きでした。おやつ代わりに食べたナガラミ(ダンベイキサゴという巻貝)。ゼンナ(小さいハマグリ)のカレーライスは、本当においしかった。イシモチやスズキなど、浜での釣りも思い出のひとつです。地引き網もありました。たくさんの恵みを海は与えてくれています。しかしCCSやそのための試掘工事によって、海が変わろうとしています。思い出一杯の海が無くなろうとしています。自然は地球の財産です。未来に引き継がねばならないレガシーを私たちが壊してしまって良いはずがありません。いま声を上げなければ、次世代に顔向けできません。ひとりでも多くの方に知ってもらい、ご一緒に行動しましょう。未来のために」とコメントしました。

 同じく不服申し立てを行った品田知美さんは「掘削リグが建てられた海の姿が痛ましいです。夜の闇を煌々と照らす巨大建造物が九十九里浜のどこからでも見える状況を可能にした試掘許可が、住民の良識を無視し、なんの影響評価手続きもなく出されたことに憤りを感じています」とコメントしました。

 匝瑳市在住の申請人の一人は「貯留エリアに近い九十九里沿岸域で生活する者として、漏出リスクや海洋環境への悪影響を考えると、CCS事業は気候変動対策として進めるべき事業ではないと感じました。」とコメントしました。

 また、大網白里市在住の申請人は「試掘によって九十九里浜の景観が著しく害されています。そもそも、この事業によって本当にCO2が削減されるのか?長いパイプラインを敷いたり、海を掘ったり、それによって排出されるであろうCO2も含めた事業の効果が十分に説明されないまま、半ば工事を強行している様子に不信感と憤りをおぼえます。また、試掘だけでも多大な費用がかかっていることがうかがえますが、これは私たちの納めた税金で賄われています。もはや首都圏CCS事業は、一部地域住民だけの問題ではありません。全国の納税者一人ひとりに関わる問題です。こんな不誠実な行いは許されません。」とコメントしました。

 経済産業大臣は許可判断を取り消し、現在すでに進んでいる試掘作業は停止すべきです。

参考:

 

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