FITバイオマス発電事業者にアンケート実施~伐採地までの「追跡可能性」に課題

FoE Japanは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の認定を受けた主なバイオマス発電事業者およびバイオマス燃料を混焼している石炭火力発電事業者に対し、バイオマス燃料の持続可能性に関するアンケートを実施しました。
アンケートは、発電出力1万kW以上のバイオマス発電事業所およびバイオマス燃料を混焼する石炭火力発電所のうちFIT認定を得ている計150の施設を対象に、2026年1月28日から3月2日にかけて実施し、46の施設から回答を得ました(回答率約31%)。うち、バイオマス専焼は31件、バイオマス混焼は15件でした。主な結果は以下の通りです。

前回(2024年)調査結果

<主な結果>

  1. 輸入燃料を利用する発電所が多かった。
  2. 輸入燃料は、ほとんどが木質ペレットもしくはPKS(パームやし殻)であり、パーム油、パームトランクなどを用いているという回答はなかった。
  3. 木質ペレット/木質チップの輸入先(燃料の原産国)で最も多かったのはベトナム、次いでカナダ、アメリカであった。持続可能性の確認方法として、最も多かったのは「森林認証制度」であった。
  4. 輸入木質ペレット/木質チップのトレーサビリティ(追跡可能性)については、得られた回答のすべてが「確認している」というものであったが、「伐採された森林の位置まで確認できる」という回答はわずかだった。トレーサビリティの確認の重要性は認識しつつも、伐採地までのトレーサビリティは確立できていない実態をうかがわせた。持続可能性の確認には、伐採地までのトレーサビリティの確保は欠かせない。企業側の対応および事業計画策定ガイドライン等の明確化が求められる。
  5. 輸入木質ペレット/木質チップの燃料の持続可能性確認の上で重要な情報である生産地情報について、情報公開を行っているという回答は、前回調査時よりはわずかに増加したものの、一部にとどまった。FIT事業計画策定ガイドラインでは、輸入木質ペレット等について、「発電所で使用した 認証燃料の量及びその 認証燃料固有の識別番号」をホームページ上での公開を求めているが、公開しているという回答はわずかであった
  6. PKSについては、ほとんどがインドネシアとマレーシアからの輸入であった。持続可能性の確認方法は、得られた回答のすべてが「認証」という回答であった。前回の調査時(2024年)から、認証制度活用の進展が見られた。
  7. PKSの情報公開について、得られた回答のすべてが、「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開している」を選択した。ガイドライン上求められている「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号」を公開しているという回答はわずかであった。また、持続可能性確認の上で重要となる、生産地情報の公開については、一部にとどまった。前回調査時のような「搾油工場リストをHP上で公開」「PKS調達量およびPKS発生地点一覧をHPで公表している」といった独自の踏み込んだ取り組みはみられなかった。認証制度の名称を公開すれば十分とする意識の表れかと考えられる。
  8. バイオマス燃料のライフサイクルGHGに関しては、回答の約8割が「算定している」で、前回調査時よりやや増加している。また、算定結果をウェブサイト上で公開しているという回答は約8割であり、前回調査時よりも大幅に増加した
  9. 「森林の減少・劣化に伴う炭素排出についてカウントしているか」という問いに関しては、すべての回答が「カウントしていない」であった。

<詳細>

1.輸入燃料利用が多く、木質ペレットとPKSが主体

燃料について尋ねたところ、輸入燃料のみを使用している施設は24件、輸入燃料と国産燃料を使用しているのが16件であり、40件がなんらかの輸入バイオマス燃料を使用していた。国産のみを使用しているのは3件にとどまった。

燃料の種類について尋ねたところ、最も多かったのが輸入木質ペレット(31件)、次いで輸入PKS(パームやし殻)(26件)、国産木質チップ(19件)、輸入木質チップ(4件)であった。パーム油、パームトランク、その他の輸入バイオマス燃料を使用しているという回答はなかった。これらの調査結果は、ほぼ前回と同様であった。

2.輸入木質ペレット/チップ

1)原産国

「輸入木質ペレット/チップを使用している」と回答した施設の主な輸入先(原産国)は、最も多かったのがベトナム(11件)で、次いでカナダ(2件)、アメリカ(2件)と続いた。木質ペレット/チップを使用している35施設のうち21施設が原産国・地域について何らかの回答をしており、回答率は前回とほぼ同じであったが、アジア(7件)、北米(10件)といった国名を限定しない回答も多かった。

2)持続可能性の確認手法

「輸入木質ペレット/チップを使用している」とした施設に対して燃料の持続可能性の確認手法について尋ねたところ、「森林認証制度」とする回答が最も多く25件であった。次いで「独自の取組」(8件)で、「森林・林業・木材産業関係団体の認定による証明」とする回答は3件にとどまった。独自の取組の内容としては、第三者機関の活用などが挙げられた。「森林認証制度」と回答した25件中、具体的な森林認証制度の名称としてFSCと回答したのが最も多く(20件)、次いでPEFCで(16件)、その他の認証名を挙げる回答はなかった。「森林認証制度」と回答した25施設に対して、確認方法の詳細を尋ねたところ、なんらかの回答があったのは7件にとどまり、うち、「100%認証製品であることを確認している」としたのは3件、「認証ミックス品であることを確認している」としたのは4件、「インボイス、パッキングリストで認証であるクレーム(表示)を確認している」としたのは6件、「サプライヤーが CoC 認証を取得していることを確認している」としたのは7件だった。

3)トレーサビリティの確認

「輸入木質ペレット/チップを使用している」とした施設に対して、トレーサビリティに関して尋ねたところ、回答を得られた17の設備のすべてが「トレーサビリティを確認している」と回答した。トレーサビリティの確認方法としては、「サプライヤーへの問い合わせ」が10件、「その他」が2件であった。「その他」の内容としては、ヒアリングや現地訪問が挙げられた。「トレーサビリティをどこまで遡って確認しているか」という問いに対しては、回答を得られた10件中、「加工された工場まで確認できる」が最も多く7件であった。「伐採された森林の位置まで確認できる」は2件にとどまった。トレーサビリティの確認の重要性は認識しつつも、伐採地までのトレーサビリティは確立できていない実態をうかがわせた。

4)情報公開

「輸入木質ペレット/チップを使用している」とした施設に対して、情報公開について尋ねたところ、回答を得られた23件のうち、もっとも多かったのが、「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開している」で23件、「生産地情報を自社サイトで公開している」は5件、「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号を自社サイトで公開している」は3件にとどまった。
FIT事業計画策定ガイドラインにおいては、「第三者認証スキーム等の名称」のみならず「発電所で使用した 認証燃料の量及びその 認証燃料固有の識別番号について、自社のホームページ等で情報公開すること」としており、ほとんどの施設においてガイドラインの要求事項が満たされていないこととなる。
また、ガイドライン上の記載はないが、燃料の持続可能性確認の上で重要な情報である生産地情報については、ほとんどが情報公開を行っておらず、当該企業の燃料生産における持続可能性確保について第三者による検証が困難な状況になっている。ガイドラインの強化が期待される。

3.輸入PKS(パームやし殻)

1)原産国

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、輸入したPKSの原産国を尋ねたところ、回答を得られた18件のうち、最も多かったのがインドネシア(9件)で、次いでマレーシア(5件)であった。国名を特定せず、アジアという回答が8件あった。

2)持続可能性の確認方法

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、持続可能性の確認方法について尋ねたところ、得られた23件の回答のすべてが「認証制度」であった。前回は22件中19件であったので、認証制度の整備または取得が進んだものと思われる。
認証制度の名称は、回答した22件すべてが「GGL」であった。

3)トレーサビリティの確認

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、トレーサビリティを確認しているか尋ねたところ、回答した12件すべてが「確認している」という回答であった。
一方、トレーサビリティをどこまで確認しているかという問いについては、回答は5件しか得られなかった。うち、「加工された工場まで確認できる」が3件、「生産国まで確認できる」が2件であった。

4)情報公開

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、情報公開について尋ねたところ、回答を得られた20件のうち、「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開している」が17件で最も多く、次いで「生産地情報を自社サイトで公開している」が5件、「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号を自社サイトで公開している」が2件であった。ガイドライン上、「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号の公開」はガイドライン上の要求事項であるが、必ずしも守られていないことが明らかとなった。
一方で、持続可能性確認の上で重要となる、生産地情報の公開については、一部にとどまった。前回調査時のような「搾油工場リストをHP上で公開」「PKS調達量およびPKS発生地点一覧をHPで公表している」といった独自の踏み込んだ取り組みはみられなかった。情報公開は内容面ではむしろ後退しており、認証制度の名称を公開すれば十分とする意識の表れかと考えられる。生産地情報の公開については、企業の主体的な取り組みとともに、ガイドラインの強化が期待される。

4.バイオマス発電事業のライフサイクルGHG

バイオマス燃料のライフサイクルGHGを算定しているか尋ねたところ、回答が得られた40件のうち、「算定している」が32件、「今後、算定予定」が6件、「算定の予定はない」という回答が2件であった。前回と比して、「算定している」という回答が微増している。

また、算定結果をウェブサイトで公開しているかという問いに対しては、得られた33の回答のうち、「公開している」が27件、「公開しておらず、公開の予定はない」が3件、「今後、公開予定」が3件であった。前回と比して、「公開している」という回答の割合が大幅に増加した。

算定方法については、回答数22のうち、すべてが「「FIT/FIP制度におけるバイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量の規定値」に基づき算定」とし、「その他」とした2件も「FIT/FIP制度におけるバイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量の規定値」に加え、サプライヤーからデータを取得し個別計算と組み合わせて算定しているという回答であった。

「森林の減少・劣化に伴う炭素排出についてカウントしているか」という問いに関しては、回答を得られた8件のうち、すべてが「カウントしていない」という回答であった。

「燃焼におけるCO2排出についてカウントしているか」という問いに関しては、回答を得られた8件中、「カウントしていない」が6件、「カウントし、事業のライフサイクルGHGに含めている」が2件であった。

バイオマス燃料の燃焼に関するGHG排出に関しては、森林の減少・劣化によるCO2排出もしくは燃焼におけるCO2排出のどちらかが評価されるべきである。前者は、その状況の把握や評価が難しいが、現実には、生産地では、森林の皆伐も含む森林減少・劣化の事例も報告されている。森林減少・劣化の事例も報告されている。

以上

 

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