【緊急声明】英蘭政府がモザンビークLNG事業への支援中止を発表ー日本の公的機関も同事業への支援を中止すべき

脱化石燃料2025.12.2

【緊急声明】英蘭政府がモザンビークLNG事業への支援中止を発表ー日本の公的機関も同事業への支援を中止すべき

2025年12月2日

国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター（JACSES）
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
オイル・チェンジ・インターナショナル（Oil Change International）
マーケット・フォース（Market Forces）

2025年12月1日、英国の輸出信用機関である英国輸出信用保証局（UKEF）が、モザンビークLNG事業に対する支援を中止することを明らかにした。2020年から事業を取り巻くリスクは上昇しており、事業への参画は英国の利益に資さないと判断したためだ¹。また同日、オランダ政府も同国の輸出信用機関であるアトラディウス信用保険会社（ADSB）が、同事業への支援を行わないことを発表した。オランダ政府が公表した文書によれば、すでに同事業に係る様々なリスク評価を行い、支援の見直しに係る意思決定プロセスの最終段階にあったものの、2025年11月24日にADSBが事業実施者であるトタルエナジーズ社から、金融支援を放棄する旨の通知を受け取ったとのことだ²。
モザンビークLNG事業は、2021年に治安情勢の悪化により開発が中断されていたが、今年10月に入ってから複数のメディア³がトタルエナジーズ社による「不可抗力宣言」の解除と事業の再開を報じていた⁴。
同事業への公的支援者としては日本が最も大きく、国際協力銀行（JBIC）と日本貿易保険（NEXI）がそれぞれ事業への支援を決定している。また三井物産と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構（JOGMEC）が事業に出資し、民間金融機関も協調融資を決めている⁵。
モザンビークLNG事業は、移転を強いられた住民への補償が適切に行われていないことや深刻な人権侵害の疑惑⁶等、様々な問題が指摘されてきた。2024年9月下旬、ニュースメディアPoliticoは、2021年にLNG事業に関連するモザンビーク治安部隊が住民の虐殺に関わった疑いを報道⁷。今年11月には、欧州に拠点を置く非営利団体であるEuropean Center for Constitutional and Human Rights（ECCHR）が、トタルエナジーズ社の戦争犯罪や拷問への加担を問い、フランス国家テロ対策検察庁（PNAT: Parquet National Antiterroriste）に対し告発を行った⁸。
深刻な人権侵害の疑いや、住民への補償が不十分であること、また気候危機を加速させるなどの懸念から、国内外の市民社会団体は、モザンビークLNG事業に関与する金融機関等に対し事業からの撤退を求めてきた。日本政府も、改めてモザンビークLNGを取り巻くリスクを直視すべきである。英蘭の輸出信用機関が抜けた穴をJBICやNEXIが埋めるようなことは当然あってはならない。
私たちは改めて日本の官民に対し、事業からの撤退を求める。