プレスリリース:最終投資決定が行われたにもかかわらず コーラル・ノースFLNG事業の資金調達は依然不透明

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2025年10月、イタリアの石油企業ENIは、ENIが主導するコーラル・ノースFLNG事業への最終投資決定を発表しましたが、資金調達の詳細は不透明です。複数の銀行が、同事業への支援の可能性を否定する中、モザンビークのガス開発問題に取り組む複数のNGOは以下のプレスリリースを発表しました。原文はこちら

最終投資決定が行われたにもかかわらず コーラル・ノースFLNG事業の資金調達は依然不透明

2025年11月13日13時(中央ヨーロッパ時間発表)

Justiça Ambiental! 
ReCommon
BankTrack 
Reclaim Finance 
urgewald
Les Amis de la Terre France 
Friends of the Earth Japan

コーラル・ノース浮体式液化天然ガス生産設備(コーラル・ノースFLNG)計画を主導するイタリアの石油企業エニ(Eni)による最終投資決定(FID)の発表から数週間が経過したにもかかわらず、同社のコーラル・ノースFLNG計画における資金調達の完了は依然として不透明なままであり、さらに多くの金融機関が、この事業への融資を行わないことを明らかにしている

10月2日、モザンビーク北部のロブマ盆地に位置するコーラルノースFLNG事業への最終投資決定が行われ、エニがリードするコンソーシアムにとって資金調達の最終段階としてこの数週間が極めて重要となっている。事業は、4年以上不可抗力宣言が出されていたトタル・エナジーズ社によるモザンビークLNG事業よりも先に完成する可能性がある。しかし、世界各地の市民社会団体からなるネットワーク「モザンビークのガスにノー!を言おう(Say No! to Gas in Mozambique)」は、これまでに幾度となく、金融機関に対して、物議を醸しているコーラル・ノースFLNGや、モザンビークにおける他のガス事業に対して支援しないよう強く求めてきた。その呼びかけに応じる形で、ここ数か月の間に、複数の銀行が同計画を支援しないという方針を固めた

イタリアのウニクレディト銀行、オランダのABNアムロ銀行、そしてフランスのBNPパリバ、クレディ・アグリコル、ソシエテ・ジェネラルの3行は、いずれも現在稼働中の姉妹事業であるコーラル・サウスFLNGに融資しているが、それぞれ石油・ガス分野への融資を制限する方針、また新規計画への融資を行わない事業戦略方針を固めた。さらに最近では、南アフリカのランド・マーチャント銀行を傘下に持つファーストランド・グループも、この浮体式生産設備への融資を行わないことを明らかにした

コーラル・ノースFLNGの浮体式生産設備の建設工事は、この計画の最終投資決定(FID)が発表される数か月も前から着々と進められていた。しかし、最終投資決定が締結されたにもかかわらず、資金調達の枠組みの詳細は公表されていないこれは、過去のLNG計画の資金構造の事例と比較すると異例のことだ。

「これは、エニがコーラル・サウスFLNGと比較し、出資比率を高め、市場からの借入を減らしている可能性を示唆している。しかし、こうした資金構造の変化は、経済的・財務的リスクをさらに生む可能性がある」とイタリアのNGO、ReCommonのSusanna De Guioは述べている。

コーラル・ノースFLNGは、過去の生産量を大きく上回る超深海での短期的な拡張計画の動向に関連している計画の1つである。GOGEL(Global Oil & Gas Exit List)2025年のデータによると、こうした計画は現在、世界の洋上LNG拡張の21%を占めている。

しかし、国際エネルギー機関(IEA)が2022年に発表したネット・ゼロ・エミッション2050年シナリオ(NZEシナリオによれば、このような動向は、地球温暖化を1.5℃に抑えるための緊急かつ実効的な行動に逆行するものであり、10年前にパリ協定で掲げられた目標、そして現在開催中のCOP30でも再び議論されている目的にも逆行している。

ReCommonが昨年3月に発表した調査によると、コーラル・サウスFLNG計画は2022年の稼働開始以来、多数のフレアリング事故を起こしており、エニはこれらを十分に報告していないことが明らかになった。もしこのコーラル・ノースFLNGがコーラル・サウス事業の複製として建設される場合、同様の温室効果ガス(GHG)排出やガス焼却の問題、そして深刻な環境・気候への影響を引き起こす可能性がある。報告書は、この事業を融資する金融機関も関連リスクに直面することになると指摘している。

FLNG生産設備は、年間360万トンのLNG生産を目標としているが、これまでのところ長期購入契約は一切公表されていない。さらに、トタル・エナジーズのCEOパトリック・プヤンネは、ミラノで開催されたガステックサミットにおいて、LNG生産は供給過剰に陥るリスクがあると認めている

さらに、契約文書、二国間協定、国際条約に関する独立分析によれば、ロブマ盆地のガス田で進められている全てのガス事業において、モザンビークは多大なリスクと関連コストの不公正な負担を背負わされていることが示されている。たとえば、モザンビークLNGの建設再開は、モザンビーク政府の合意にかかっているが、遅延によって発生した追加費用の45億ドルがモザンビーク側に転嫁されるのではないかという強い懸念がある。

Justiça AmbientalのKete Fumo氏は、「コーラル・ノース事業は、ロブマ盆地で進められている他の事業と同様に、モザンビークの人々に大きな経済的利益や発展の機会をもたらすものではないこれらの計画では、租税回避の仕組み、不公正な契約、投資家保護条項などが利用されており、モザンビークの歳入と交渉力を大きく抑制している。同時に、モザンビーク沿岸での軍事化が進行しており、この状況は地元の漁業コミュニティの安全と生計手段を脅かしている。軍の存在が、地域住民が従来利用してきた漁場へのアクセスを妨げ、生活環境を悪化させ、地域の社会的不平等をさらに深めている。」と述べている。

コーラル・ノースFLNGに融資する可能性のある銀行等に働きかけを行ってきた市民社会団体は、支援する可能性のある金融機関に対し、コーラル・ノースFLNG事業へ融資しないと表明することで、不透明感をなくすよう求めている。さらに広い観点から、銀行は新規LNG計画、関連するメタン運搬船、そしてLNG輸出事業者に対する全ての金融サービスを停止する包括的な方針を採用すべきである。

プレスリリースに関する連絡先:
Daniel Ribeiro, Justiça Ambiental / daniel.ja.mz@gmail.com
Susanna de Guio, ReCommon / sdeguio@recommon.org
Rieke Butijn, BankTrack / henrieke@banktrack.org
Justine Duclos-Gonda, Reclaim Finance / justine@reclaimfinance.org
Lorette Philippot, Friends of the Earth France / lorette.philippot@amisdelaterre.org 

 

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