【プレスリリース】モザンビークの治安部隊が天然ガス事業地で犯したとされる深刻な人権侵害の疑惑を調査するよう国連に要請

日本の官民が関わるアフリカ最大のガス開発事業であるモザンビークLNG事業に関連し、モザンビークの治安部隊が深刻な人権侵害に関わっていた可能性が指摘されています。地元の住民らおよびモザンビーク国内外の環境・人権NGOは、国連人権高等弁務官(OHCHR)に対し、本件に関した独立調査を行うよう求める書簡(原文英語)を提出いたしました。詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください。

プレスリリース原文はこちら:https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/2025/07/Press-Release-Call-for-Investigation-OHCHR-on-Mozambique-LNG-July-2025.pdf

モザンビークの治安部隊が天然ガス事業地で犯したとされる
深刻な人権侵害の疑惑を調査するよう国連に要請

モザンビーク現地の住民リーダーやモザンビーク国内外の国際NGO等は、現在進行中の調査は独立性を欠き、正義と被害者の保護を保証していないと警告している。彼らは、公正、公平、安全、そして被害者を中心に据えた調査プロセスを確保する唯一の方法として、国連人権高等弁務官が主導する調査を求めている。調査は、トタル・エナジーズ社のモザンビークLNG事業の現場警備を担当していた統合任務部隊(JTF)についても行うべきである。

モザンビーク北部のパルマと周辺15村の伝統的指導者である地元のリーダーらは、66の人権・環境団体の支援を受け、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対し、2021年にモザンビーク治安部隊(カーボ・デルガード州にあるトタル・エナジーズのモザンビークLNG事業を警護する統合任務部隊のメンバーを含む)が犯したとされる深刻な人権侵害について、独立した調査を開始するよう正式に要請した。

書簡には次のように記されている。

現在進行中のいかなる取り組みも、完全に独立、かつ透明性のある調査を確保するには不十分であると考えている。公正、公平、安全、かつ被害者を中心に据えたプロセスを保証するためには、OHCHRによる調査が必要であると強く信じている」。さらに、「他の取り組みとは異なり、国連による調査は被害者や影響を受けたコミュニティから、正義を実現し、説明責任を果たす能力があると信頼されている」としている。

2024年9月下旬、ニュースメディアPoliticoが掲載した記事は、2021年7月から9月にかけて、モザンビーク治安部隊は、村民の大規模な集団を反乱勢力に関与したと非難。部隊は男性を女性や子供から引き離した。部隊は、トタル・エナジーズのモザンビークLNG施設の入り口付近の輸送コンテナに180人から250人の男性を拘束したとされ、拘束された者は非人道的な扱いを受け、拷問を受け、行方不明になったり殺害されるなどし、生存者はわずか26人であった。女性たちは釈放される前に、屈辱、性的暴行、レイプを受けたとされている。これらの疑惑は、その後、SourceMaterialLe Mondeによって裏付けられている。

様々な関係者(モザンビーク国家人権委員会、モザンビーク司法長官、英国輸出信用保証局やオランダ政府などの資金提供者)によって調査が行われているが、要請書の署名者は、国連高等弁務官への要請の中で、武力紛争中の国家治安部隊による違反事例も含め、過去モザンビークでは、違反行為等に対する説明責任と正義のが十分に果たされていないことも協調している。

さらに署名団体らは、「被害者、遺族、影響を受けたコミュニティは、自分たちが信頼していない調査に協力した場合、報復を受けるのではないかという真の恐怖を抱いている」と強調している。

書簡ではさらに、
「安全上の懸念、そして金銭的・政治的利益が絡んでいることを考慮し、モザンビーク当局から完全に切り離された、独立した国際調査を立ち上げるためにOHCHRの支援を申し出るよう強く求めますと記されている。

トタル・エナジーズは最近、今年の夏に事業を再開すると発表しており、公的および民間の出資者は事業への支援について再び決定を下すよう求められているが、その前に独立した信頼できる国際調査が行われることが極めて重要である。

これらの背景をふまえ、書簡ではOHCHRの調査に以下のことを要請している:
・あらゆる人権侵害及び/または犯罪の疑惑について、事実、状況、根本原因を明らかにする
・ジェンダーに配慮し、被害者中心主義のアプローチを採用し、機密性と保護を確保する
・法的手続きの可能性に備えて証拠を収集・保管する
モザンビーク及びその他の治安部隊、そしてトタル・エナジーズ及びモザンビークLNG事業の役割と責任を特定する
・違反の根本原因に対処し、被害者のために正義を確保するための提言を行う

なお、モザンビークLNG社は深刻な虐待や拷問の申し立てを裏付ける情報や証拠を見つけられなかったと、タルエナジーズは主張している。

署名者はOHCHRに緊急の対応を促し、この要請についてさらに議論するために高等弁務官との会談を要請している。

詳細につきましてはこちらにお問い合わせください。
国際環境NGO FoE Japan メール:info@foejapan.org

注釈

アムネスティ・インターナショナルは、政府が徹底的かつ迅速で公平かつ効果的な調査を実施せず、容疑者を裁判にかけることができなかった、国家および非国家主体による深刻な人権侵害および虐待の事例をいくつか記録している。https://www.amnesty.org/en/wp-content/uploads/2023/06/AFR4135702021ENGLISH.pdf

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、武力紛争中のモザンビーク国家治安部隊による最近および過去の違反行為と虐待に対する不処罰に関する問題に焦点を当てた報告書を提出した。https://www.hrw.org/news/2020/12/11/submission-universal-periodic-review-mozambique

 

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