原発や火力新技術にさらなる支援?!長期脱炭素電源オークション

新設・リプレース途中のコスト増分も回収可能に

長期脱炭素電源オークションが2023年にスタートし、2025年、第3回目の入札を前に、制度の見直しが行われています。
制度の概要と、今回の見直しについてまとめました。

長期脱炭素電源オークションとは

「脱炭素電源」およびLNG火力の新設・リプレースや既設の改修に対し、長期(20年以上)の固定収入を確保するしくみです。
容量市場の一部として2023年にスタート。その費用は、容量市場と同様にすべての小売電気事業者から拠出金として徴収。つまり、消費者負担となります。そのお金が「容量確保契約金」として落札した電源に支払われます。

ただし、支払いが発生するのはその電源が発電を開始してからです。


●対象電源(赤字は今回追加)
<新設・リプレース>
バイオマス、原子力、LNG火力に水素混焼(10%以上)、水素専焼(90%以上
アンモニア専焼(90%以上)、LNG火力
太陽光、陸上風力、洋上風力、水力、揚水、地熱、蓄電池、長期エネルギー貯蔵システム

<既設の改修>

原子力(既設の安全対策投資)

LNG火力の水素混焼(10%以上)への改修
石炭火力のアンモニア混焼(20%以上)への改修
バイオマス専焼への改修
CCS付火力への改修(CO2を20%以上回収)

●これまで落札した電源の例
<2023年度>
・島根原発3号機(新設)
・苫東厚真石炭火力(アンモニア混焼への改修)
・神戸石炭火力1・2号機(アンモニア混焼への改修)
・碧南石炭火力4・5号機(アンモニア混焼への改修)
・千葉袖ヶ浦パワーステーションLNG火力(新設)
・知多LNG火力7・8号機(新設)
・ほかLNG火力新設、揚水発電、蓄電池など

240426_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_besshi_ousatsu2023.pdf
<2024年度>
・東海第二原発(安全対策投資)、泊原発3号機(同)、柏崎刈羽原発6号機(同)
・西条石炭火力1号機(アンモニア混焼への改修)
・石狩湾親港LNG火力(新設)
・ゼロワットパワー市原LNG火力(新設) 
・ほか、揚水発電、蓄電池など

250428_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_besshi_ousatsu2024.pdf

問題点

2023年度から実施されている長期脱炭素電源オークションは様々な問題点をかかえています。
・大規模な火力発電や原発が維持される。
バイオマスも石炭火力からの改修は大規模・輸入燃料のもので問題。
結果、太陽光や風力など変動する再エネの導入が妨げられ、エネルギーシフトのブレーキに。

・「脱炭素化」といっても10%、20%など一部のみで、CO2削減への貢献はごくわずか)

・現状、化石燃料由来の水素・アンモニアも認められている。「2050年までに脱炭素化するロードマップ」があればよいこととなっているが、道のりは遠く不透明。

・脱炭素ではないLNG火力の新設も対象となっている。

・今回の変更で、途中でのコストアップ分を補正できることとなる。
・消費者全体の負担増だが、特に再エネを重視する新電力の消費者への負担が大きい。

2025年度の変更案とパブリックコメント

6月23日、電力システム改革検証後の制度の詳細を議論する審議会で、2025年度の入札に向けた変更案の議論が行われました。
第104回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会(METI/経済産業省)


そして、以下の変更が提案され、実施されようとしています。(7月24日までパブリックコメント中!)
電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第二十二次中間とりまとめ(案)等に対する意見募集について|e-Govパブリック・コメント
(ページは「第二十二次中間とりまとめ(案)」のページ数)

・今回から火力発電にCCSを付加する改修が対象に(7ページ)
 (第2回までは応札案件が想定されなかったため対象外だった)

・その場合、改修前と比べ、CCSにより20%以上のCO2回収 (8ページ)

・アンモニア・水素の新設・リプレース、改修は「90%以上の混焼」で「専焼案件」とみなす(13ページ)
え・脱炭素ではないLNG専焼火力を引き続き募集(19ページ)

・事後的な費用増加があった場合、落札価格を修正できることとする(28ページ)
供給力提供開始期限が10年以上となり、かつ、(建設費の多くが千億円 以上となる水準である)30万kW以上の大型電源。建設費については1.5倍まで、運転維持費は年間費用の1.5倍まで。

・入札上限価格をこれまでの10万円から20万円に引き上げ。

 特に水素・アンモニア・CCS付火力については20万円に関わらず導入が可能な水準まで引き上げる。(32ページ)
・その代わり、「需要家負担を考慮し」募集容量は50万kWとする。(33、13ページ)

さらなる改悪の方向・・

さらに、今後(来年度以降)に向けて、以下のような方向性がすでに示されています。
・今回の改定案では新設リプレースのみを対象としているが、審議会では特に原子力について既設改修にも適用すべきという意見が複数あがり、次回(来年度)の検討対象となった。

・また、「本制度では、落札案件の固定費全体に対して常に支援する一方で、他市場収益の大半(約9割)の還付を求めることとしている。」ところを、発電事業者から要望があり「事業期間中の費用・収入の変動に セーフティネット的に対応する投資回収の仕組みについて」も、次回(来年度)以降検討することとなった。

まとめ

原子力の安全対策投資や火力脱炭素新技術(水素・アンモニア、CCSなど)が高コストであることはすでに明らかで、事業者も「国の支援がなければできない」と言っていることです。
さらに、建設費や燃料費、安全対策費など事後のコストアップの可能性が大いにあります。

今回、そのようなリスクも含めて、支援していこうということが決まろうとしています。
あまりに高コストの場合「方向転換する」という選択肢が見えてくることはないのしょうか。
消費者負担になることもわかっていながら、絶対に方向転換せずに、このまま突き進む・・残念ながらその方向しか見えてきません。
FoE Japanからもパブリックコメントを提出予定です。

 

関連するプロジェクト