インターン体験報告「レアメタルと気候危機」

FoE Japan インターンの藤原瑞貴です。
インターンをさせていただいていく中で、脱原発や鉱物資源の開発に伴う人権問題の解決に取り組んでいる、FoE Japan スタッフの松本光さんにインタビューをさせていただきました。そのきっかけは、ドキュメンタリー『レアメタルと気候危機』を見たことでした。

ドキュメンタリー『レアメタルと気候危機』と私

みなさんが気候変動対策として思い浮かべるものは何でしょうか？おそらく、多くの方が「再生可能エネルギー」という言葉を思いつくのではないでしょうか。

私は、石油系の会社に勤める父親とときどき気候変動について話すのですが、その中で父親が「今、石油依存から完全に抜け出すことは、果たして環境にいいといえるのか」と言っていたことが印象的でした。その真意をわかりかねている中、縁があり松本さんとアジアや太平洋地域の社会問題についての情報発信を行うNPOアジア太平洋資料センター（PARC）が制作したドキュメンタリー『レアメタルと気候危機　「脱炭素」の裏で』を拝見したことで、大きな衝撃を受けました。日本の大企業が、フィリピンやインドネシアの先住民族や現地住民に対してお金を振りかざしながら進めてきた事業内容がとてもショッキングで、大きな学びとなりました。加えて、社会構造を変えることの重要性や、目先の対策方法に飛びつくのではなく、その裏側までみることの大切さ、そして、この先住民族一人ひとりのストーリーを「自分ごと」にすることの不可欠さを実感しました。

監督を務めた松本光さんについて

松本光さんは、2018年からフルタイムスタッフとしてFoE Japanで働いています。大学時代は映像を勉強し、ドキュメンタリー会社に入社しました。その後イギリスの大学院に進学し、メディア系の研究を進めました。高校の卒業式当日に東日本大震災が起きたことをきっかけに、原発に対して自分は何かできないかという意識が芽生えたといいます。

これらのバックグラウンドを強みに、FoE Japanに就職。その1か月後、ニッケル鉱山の調査に行った松本さんは現地で起きていることにとても驚いたそうです。以後、PARCと共に教育ビデオの作成に注力されています。今回紹介している『レアメタルと気候危機』の他にも、原発に関する『終わりのない原子力災害』などを手がけています。

鉱物資源問題の現実

ネタばれにならない程度に、このドキュメンタリーで扱われていた問題を述べたいと思います。

「気候変動に関する政府間パネル（IPCC）」などでの取り組みの結果、現代社会では脱炭素への転換が求められています。それを実現するために必要な鉱物資源をめぐる、日本企業・日本社会と鉱物原産地の先住民族や現地住民との間にある大きな人権・環境問題を扱う映像となっています。企業がいう「脱炭素への取り組み」は本当に世界のためになっているのか、私たちの日々の消費活動はこのままでいいのか、と問いかけてくる作品です。

『レアメタルと気候危機』制作裏話

松本さんいわく、こちらのドキュメンタリーでこだわった点はインタビューシーンだそうです。FoE Japanの特色でもある、「現地の声を届ける」「本音を可視化する」ことを目指したと言います。現代では、被害を受けている人の声は社会に広まりにくく、埋もれてしまいます。「住民はその地のプロ」なのだから、住民の声を掲げることが重要だと感じました。みなさんもぜひ、このドキュメンタリーを通じて彼らの「本音」は何なのか自分の目で確かめてみてください。

加えて、教育ビデオとして短めにすることも意識したそうです。入れすぎかなと思うくらいのメッセージを入れたそうなので、みなさんもいろいろな角度からそれを受け取ってみてください！

松本さんとこれからの社会

松本さんのメッセージは、「日本企業の事業はもっと改善されるべき」ということです。経済産業省の人権デュー・ディリジェンスなどを導入しアピールしている企業も多い一方、それを遵守できていないところが多いのが現状です。その基準自体も完璧ではないし、罰則もないのですが、まずはある基準を守っていくべきだと考えています。

究極、FoEがなくてもいい社会を松本さんは願っています。ただ、問題がなくなることはないので日々このような問題と戦っています。

今回のドキュメンタリー撮影を通じて、言語化できない学びをたくさんしたと言っていたのがとても印象的でした。地理的な感覚、住民一人ひとり、町の雰囲気など…。みなさんもそういったものを少しでも感じ取ってみてください。

今回のテーマとなっているレアメタル以外にも、様々な問題があります。松本さんのおすすめを以下に載せたので、よかったら見てみてください！

『スマホの真実　紛争鉱物と環境破壊とのつながり』（2015）
『甘いバナナの苦い現実』（2018）

最後に

こちらのブログが公開されたのとほぼ同時に、FoE Japan公式Instagramで鉱物資源に関する投稿がされました！よろしければそちらもチェックしてみてください✨

そしてさきほど述べたとおり、私は松本さんのドキュメンタリー『レアメタルと気候危機　「脱炭素」の裏で』から多くのことを学び、考えさせられました。こちらも、ぜひ見てみてください～

今回のドキュメンタリー視聴とインタビューを通じて、私は気候変動という大きくて複雑な問題を解決していくには、目先の対処法に飛びつくのではなく今の問題を生んでいる根本の社会構造に目を向けることの重要性を再実感しました。そしてそのためにはなるべく多くの人と関わって自分の目で情報を仕入れること、それが難しい場合はいろいろな視点の情報を手に入れることも必要です。

みなさんにとって、ドキュメンタリー『レアメタルと気候危機　「脱炭素」の裏で』が世界の新たな面を知るきっかけになったらいいなと思います。