【横須賀石炭訴訟報告 vol.2】再び傍聴者超満員。処分性と原告適格について主張

脱化石燃料2024.7.5

12月23日、第2回目の横須賀石炭火力訴訟裁判が開廷されました。法廷定員が96名の中、128名が傍聴のために東京地方裁判所に駆けつけ、超満員となりました。

今回は、前回裁判で提出された被告(国)の「横須賀石炭火力行政訴訟の提訴(以下「本件」)は不適法だから却下すべき」という答弁書への反論が主な内容でした。

(訴訟の概要についてはこちら

(第一回目期日の報告はこちら

国が本件を不適法と述べる理由としてあげたのは、

(1)本件は取消訴訟の対象となる処分ではない(処分性がない)

(2)原告らに本件通知の取り消しを求める法律上の利益がない(原告適格がない)

の2点です。上記に対し、原告は以下のように反論しました。

(1)本件は取消訴訟となりうるか?

取消訴訟としてみなされるには、「国・公共団体の行為により、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」である(=「処分性がある」)必要があります。

今回の裁判に当てはめた場合、環境影響評価書の確定通知がないと発電所の操業や建設工事に着手できる権利が発生しないこと、また、電気事業法においても工事の届出をしないと工事することはできないと定められている通り、法律上の手続きを経ないと事業が進まないことから、被告の申立ては通用しないことが言えます。

(2)確定通知の取り消しを求めることで、原告らに法律上の利益はあるか?

原告適格について、国は「個々人の一般的利益を保護しようとすることではなく、一般的利益としての環境の保全を図ろうとしている」と言って、原告らに環境影響評価の確定通知取消を求めても利益がないと主張しましたが、もしこのまま建設が進んでしまった場合の原告の被害は、

(1)排出されるCO2によって気候変動が進行して生じる被害

(2)排出される大気汚染物質によって生じる身体健康被害

(3)排出される温排水によって漁業資源が失われる等の生業喪失

の3点あるとして、原告側は原告適格を主張しました。

実際、気候変動によって、すでに大型台風等異常気象による損失と被害は起きており、熱中症等の搬送者数も今年は最高記録を更新しています。

また、大気汚染の影響を被る範囲について、神奈川県環境影響評価条例では、一定規模以上の火力発電所については「対象事業の実施区域又は当該法対象事業の実施されるべき区域の周囲から3kmの区域」を関係地域として指定しており、発電所アセス省令においても、火力発電所の周囲20kmの範囲を影響調査の対象地域としています。

温排水による環境の影響についても、近年の調査によって、海水温の上昇に伴う藻場植生の変化が見られる等、影響があることが認められています。

提訴時の45人の原告は発電所の20km圏内に住んでいる方が多く、20km圏外に住む原告であっても熱中症になりやすい年少者や高齢者です。また、新たに3名が原告に加わりましたが、いずれも漁業等関係者です。

以上のように、本件には処分性も原告適格もあることは明らかです。

求められる脱石炭

また、裁判後の報告会では、第二回期日の内容の報告のほか、気候ネットワーク平田仁子さんより、石炭火力をめぐる国際動向についての説明がありました。

パリ協定締結以来、世界の国々は脱石炭に舵を切っています。また、昨年秋からのFridaysForFutureの運動の影響もあり、今年春には欧州で環境派の緑の党が大きな躍進を見せました。そして、9月の気候行動サミットを呼びかけたアントニオ・グテーレス国連事務総長は、1.5度に気温上昇を抑えるために、

・2020までに新規の石炭火力発電を中止

・2050年に実質ゼロ

・2030年までに温室効果ガスを45%削減

を各国に呼びかけました。

一方、日本はCOP25においてもこの要請に応えず、国際的な批判を浴び続けています。

日本がすべきことは、グレーテス国連事務総長の要請を国策に反映すること、そして、それらに伴う仕事・雇用の公正な移行のための戦略を策定することが何より求められます。

本件が早く本審議に移行することとともに、日本の政策が脱石炭へと大きく方向転換されることを望みます。

次回期日は3月23日(月)14:00~、場所は東京地方裁判所(東京・霞ヶ関)です。
今回同様、裁判後は同裁判に係る報告会を、日比谷図書館にて開催します。
法廷に入廷できなかった場合も、裁判の様子はこちらの会にて裁判の報告をさせていただきますので、ぜひご参加ください。
申し込みフォームは後日、下記webサイトに掲載の予定です。
https://yokosukaclimatecase.jp/

FoE Japanは、引き続き、原告および訴訟サポーターのみなさまとともに、石炭火力の新設計画中止を求めて活動してまいります。

(高橋 英恵)

*横須賀石炭火力訴訟では、同裁判を支援するサポーターを募集しています。サポーターに登録いただいた方には次回期日の詳細、また、関連情報をお届けしています。ぜひ、皆様の知人、ご家族もお誘いの上、横須賀訴訟サポーターにご登録ください!

登録はこちらから↓

https://yokosukaclimatecase.jp/support_us/

 

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