お知らせ
セミナー開催報告
日本の違法伐採対策は熱帯林を守れるか?~人々の生活と森を守る木材調達とは?
5月9日、国立オリンピック記念青少年総合センターにて森林セミナーを開催、多くの方にご参加いただきました。ありがとうございました。 >開催案内はこちら
世界の違法伐採の現状と対策、日本の取り組み、また違法伐採が行われているマレーシア・サラワク州の現状について、講演者の方々にお話しいただきました。当日の講演内容を報告します。
1.違法伐採木材と日本市場 |
1.違法伐採木材と日本市場
ディビッド・ゲイル(環境調査エイジェンシー) :
日本は輸入木材の消費量が多い国であるにもかかわらず、違法木材に対する法的整備が遅れている国であるとの指摘がなされました。そのため、日本国内には様々な経路で違法木材が入ってきており、約600万立米、総輸入量の9%を違法木材が占めています。今後、違法木材に関する法制度を整備する際には、中国など違法木材の加工国からの違法木材流入についても考慮する重要性が示唆されました。
>発表資料[PDF]
2.世界が取り組む違法伐採対策の現状
~デューディリジェンスによる木材のサプライチェーンの管理
籾井まり(FoE Japan) :
違法木材への規制は政府調達に関する規制が主流でしたが、近年は民間調達に関する規制も行われるようになってきています。このセッションでは、民間調達に関する規制について、EUと米国から学ぶというテーマで報告がなされました。
EUおよび米国の民間調達においては、とくにデューディリジェンス(合法性の確認)の重要性が強調されています。デューディリジェンスとは、違法材の国内流入を防ぐため、情報の確認、樹種の把握、違法リスクが高い国の評価など、リスクを減らすための取り組みです。さらに、木材業者の負担を軽減させる措置が取られていることもその特徴であるとされました。
>発表資料[PDF]
3.オーストラリアの規制
ペグ・パット(米国NGOグローバル・ウィットネス):
オーストラリアでは現在、違法木材の輸入禁止法が審議されています。この法律の特徴として、企業や業界団体がNGO団体と共同でプロポーザルを提出したことが挙げられます。米国やEUと足並みをそろえるように調整されており、デューディリジェンスの義務化や小規模の輸入業者に配慮したルール制定がなされています。
これらの取り組みと比較すると、日本の違法伐採対策は遅れているとの指摘がなされました。そのため、違法木材業者にとって日本が抜け穴となることが危惧されます。日本においても、政府調達と民間調達への措置、法的拘束力をもつデューシリジェンスの導入、主要な木材生産国や加工国との2国間協議の実施が提言されました。
>発表資料1[PDF] >発表資料2[PDF]
4.サラワク熱帯林の聞きと先住民族の苦悩~サラワクで今何が起こっているのか
シャミラ・アリフィン(FoE マレーシア):
マレーシアの現状報告のひとつとして、サラワクの裁判所による先住民族の慣習法を認めた判例が紹介されました。具体的には、高裁において先住民族の伝統的な慣習地の、用益権、所有権、財産権が認められました。このような慣習的な土地が収用された場合には、先住民族に対する補償の必要性も認められました。しかし、マレーシアでは判例が政策に反映されることはなく現場で問題となっているということが報告されました。
>発表資料[PDF]
マティアス・ンガウ(プナン人コミュニティリーダー) :
判例が政策に反映されない問題の事例として、先住民族プナン人のコミュニティリーダーによってコミュニティの実情が報告されました。
コンセッションの取得の際に、伐採企業はコミュニティに対して住居建設などの利益供与を約束したにも関わらず、これらの約束が果たされることはなかったということが強く訴えられました。
今回、いろんな国や団体から問題解決のための支援を得ることを目的として、マティアスさんは来日されています。「正直にいうと、日本には来たくなかったが、プナン人のために日本に来た」という言葉がとても印象的な報告でした。
ジョク・ジャウ(FoEマレーシア) :
FoEマレーシアのカヤン人スタッフ、ジョク・ジャウにより、マレーシアにおける先住民コミュニティやその運動の実情について報告がなされました。現在までにプナン人の声を政府に届けようと様々な活動が行われてきましたが、政府からのリアクションは得られていません。また、先日の日本木材輸入協会との会合では「環境団体や先住民族はサラワク州の木材業界と交渉するつもりもなく、企業の意向を無視している」との批判がされましたが、これに対し、ジョク・ジャウさんは非常にショックを受けたとおっしゃいます。
なぜなら、先住民族側からは積極的に企業に対するアクションが行われているものの、企業側は交渉の場を持たないのが現実で、こういった実際の現場で起こっている問題が、政府や新聞などのメディアに表れず、いかに隠匿されているかが明らかになったからです。彼の落胆の表情は参加者にこういった事実を伝えるのに十分なものでした。
>発表資料[PDF]
5.日本の違法伐採対策の現状とその課題
三柴淳一(FoE Japan):
2006年のグリーン購入法の法改正後の日本の違法伐採対策の現状と課題について報告が行われました。法改正によって、間伐材や林地産材に加え、必須事項として合法性、配慮事項として持続可能性について明記されるようになりました。国内で合法材調達に取り組む団体や事業者も増加し、国内総生産量に占める合法材の量も増加してきています。
その一方で、合法性に関する定義に人権への配慮に言及されておらず、人権に配慮しない違法木材の問題が示唆されました。また、日中間での違法伐採に関する覚書が発行することが決まっています。しかし、日中間での違法材に関する基準をEUや米国の基準と揃えなければ、日本国内に合法性が疑われる材が流入する危険性について示唆されました。
>発表資料[PDF]
6.パネルディスカッション 「日本の違法伐採対策は熱帯林を守れるか?」
「米国やEUは木材生産国であるために国内の生産業者保護という側面があり、その結果として法律が促進されたのではないか」、「サラワクなど世界の違法伐採に対して、FoEは具体的にどのような取り組みができるのか」という質問がフロアから出され、積極的な議論が展開されました。