COP19・CMP9(ポーランド・ワルシャワ会合)
緊急プレスリリース
安倍政権は日本の温室効果ガスの2020年排出削減目標を再検討すべき
安倍政権は民主党政権下で提出した90年比25%の温室効果ガス排出削減目標を撤回し、2020年で温室効果ガス2005年比3.8%減、90年比換算では3.1%増加となる排出目標を発表しました。これは京都議定書の2012年までに6%の削減からも大きく後退するものです。
世界第五位の温室効果ガス排出国で先進国である日本が一転して排出量の増加を求めるということは 今ワルシャワで行われている国連交渉において2020年以降の将来枠組みづくりに取り組む他の先進国、途上国の排出削減・抑制努力に冷や水を浴びせ、交渉を後退させる先例となります。FoE Japanは、この目標の撤回と科学的知見を考慮した目標の再考を強く求めます。
今年9月に出された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書第一作業部会報告は、気候変動による熱波や巨大台風など深刻な気象変化に警鐘を鳴らしています。今世紀末までの地球平均気温の上昇を2℃未満に抑える国連目標達成のためには、いま真に先進国が排出量増加を抑え削減へと向かわねばなりません。
安倍政権のこの決定は気候変動の被害に直面し危機感を募らせている途上国の不信と反発を呼び、二年後のパリでの国連会合(COP21)で目指している2020年以後の将来枠組み合意や今世紀末地球平均気温上昇を2℃未満に抑える国連目標に深刻な障害をもたらすことになります。
現在の2020年までの国連条約下の体制では、提出した削減目標に縛られず後で積み上げることが可能であり、現在政府で議論されている基本エネルギー計画の改訂を待たずに出した安倍政権トップの政治決断であることから排出量を下げる目標へ直ちに再検討を行うべきです。
東日本大震災と福島事故後、日本はエネルギー政策の抜本的な改革を迫られています。国民生活全般に影響を与えるものであることから、前政権はエネルギーや温暖化対策の国民的議論を行いました。その結果を政権が変わったことでまるでなかったことのように扱い、政権トップの政治決断だけで変えようとすることは民意を犯すものです。原発や80年代から増やし続けている石炭火力発電など大規模集約型のエネルギーシステムからの脱去、自然エネルギー普及の加速や省エネ策強化を通じて日本の排出量を削減できることは政府自身のデータからも明らかです。
しかし安倍政権は発足早々攻めの温暖化外交を掲げながら、国内対策より二国間クレジットによる国際オフセットや高効率化石炭火力発電の導入を気候変動対策の柱に据えています。
日本は目標発表とともに2015年まで総額160億ドルの気候資金支援を表明しましたが、世界の排出量を早急に削減に向かわせなければ途上国支援をいくら行っても被害は増え続け、更なる支援が必要になります。日本自身が排出量を増加しながら他の先進国や経済成長による貧困脱却を求める途上国に排出を抑えることを求めることは不可能であり、改めて安倍内閣の再考を求めるものです。
●関連資料
>FoEIプレスリリース"Japan's Climate Inaction Strongly Denounced"(英語) (2013.11.15)
>プレスブリーフィング「COP19始まる - 石炭COPで終わらせないために」 (2013.11.11)
>FoE JapanによるIPCC第五次評価報告第一作業部会要約の紹介
>COP19の詳細はFoE Japanの11/5イベント資料