COP19
プレスブリーフィング
「COP19始まる - 石炭COPで終わらせないために」
ポーランドの首都ワルシャワで 国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)と京都議定書第9回会合が始まりました。ポーランドは国内エネルギーの9割を石炭に頼り、欧州連合(EU)28ヶ国(今年クロアチアが加盟)の中でも、最も温暖化対策に否定的な国です。先月のCOP準備会合で初めて大規模エネルギー産業を中心とした産業界を招き、COP期間中の週末には、世界石炭協会主催の石炭サミットにポーランド閣僚も参加すると見られています。欧州では4年ぶりとなる今回のCOP開催には、FoEヨーロッパのメンバーをはじめ多くの地元市民団体が参加しており、公平なエネルギー革命と化石燃料からの脱却を求めるマーチなど会議場内外で公平で実効ある行動を呼びかけています。
EUが昨年ドーハ会合で採択された京都議定書第二約束期間の批准の準備が整ったことを表明するなか、今回のCOPは2015年にパリで開催されるCOP21での合意を目指す「ポスト2020年の将来枠組み」の交渉が本格する大切な通過点と見られています。9月末に発表された国連気候変動政府間パネル(IPCC)による第五次評価報告の第一作業部会(物理化学編)では、ますます深刻化する気候変動の現状と今世紀末に最大で4℃にのぼる地球平均気温の上昇、あと30年ほどでもさらに最低1℃の気温上昇が見込まれると述べています。産業革命前と比べ今日までに地球平均0.8℃の気温上昇があり、とりわけ高地や極地では、すでに年平均気温が6℃も上がっていると述べています。日本もすでに熱波増大などの異常気象に見舞われています。しかし、現在90ヶ国から国連に提出されている2020年の削減目標・行動は、3年前メキシコ・カンクン会合で採択された今世紀末までに気温上昇を2℃未満に抑える目標に必要な削減量には至らず、削減量をいかに上乗せするかが今回の会合のひとつの焦点となっています。
また、今回の会合期間中に安倍政権は民主党政権下の目標に代わる日本の2020年削減量を発表する可能性があり、途上国の方が先進国より多くの削減量を約束している中での日本の発表は先進国の責任を問うものとして将来枠組みの交渉にも影響を与えるでしょう。
ワルシャワではこの将来枠組み交渉の今後のタイムテーブルづくり、とりわけ2020年の次の目標を各国がどの時点で提出するかが焦点です。
また、今回の会合は「資金COP」とも呼ばれており、第二週の閣僚級では気候資金がテーマになります。4年前のコペンハーゲン会合で、先進国は2020年までに途上国への支援を年間1000億ドル、現在のODA1300億ドルに追加上乗せすると約束しました。そのロードマップが話し合われ、とりわけ民間資金の活用を先進国は強調しています。「緑の気候基金」など、カンクン合意で設けられた新機関設置の進捗状況が報告されますが、公的資金の役割を民間に代替えさせるだけにならないよう注意しなければなりません。特に、商業利益を得られにくい適応支援の資金調達が懸念され、海面上昇や気象の変化など緩やかに起こる不可逆な気候変動の影響への対応を支援する国際体制の整備(損失と損害)も今回の重要な議題です。また今回決定を予定している途上国の森林減少劣化への対策(REDDプラス)の資金の問題でも民間資金が争点になります。将来、森林保全が先進国向けの巨大なオフセット市場になってしまう懸念が強くあるからです。
ワルシャワ会合では、日本の二国間クレジットなど国連の内外に広がっている国際炭素市場に対し国際ルールを設けようとしていますが、FoEグループや多くの市民団体がオフセットでない実行ある排出削減対策を求めています。
*関連資料
・ FoE JapanによるIPCC第五次評価報告第一作業部会要約の紹介
・ COP19の詳細はFoE Japanの11/5イベント資料