温暖化の影響
海面上昇
100cm | 700億人と70カ国が過去100年間の高潮の水位以下になる モルジブの首都マーレの85%が浸水 海抜0m以下の土地が2.7倍に広がり、410万人が被害を受ける |
90cm | マーシャル諸島とキリバス共和国の65%が浸水 |
80cm | カリブ海に臨む国ベリーズの6%が浸水、セネガル共和国の2%が失われる |
70cm | 日本の土地1400k㎡の海抜が満潮水位以下に |
60cm | バングラデシュの10%、オランダの3%が失われる |
50cm | エジプト北部の都市アレキサンドリアにある砂浜のほとんどが失われる |
40cm | アメリカ湿地帯の20~40%が侵食あるいは浸水する |
30cm | 毎年高潮の被害を受ける人の数が1800万人増加する |
地球の気温が上がると、氷河や海氷が溶け、また海水が熱で膨張するため海面が上昇します。このことはいったい何を意味しているのでしょうか?
海面上昇が起こると、沿岸地域に住む多くの人々が高潮による浸水や海岸の浸食といった災害が起こりやすくなります。実際に国自体が消滅してしまう危険性に直面しているところもあるのです。
19世紀から20世紀にかけての100年間で平均海面水位は17cm上昇していて、主に地球温暖化による海水の膨張、氷河と氷帽の減少、南極とグリーンランドの氷床の減少が原因と見られています。現在では、年間1000万人に高潮による浸水の被害が及ぶ危険性があり、この数は2080年には9400万人に達するという予測もあります。しかも、これらの数字は経済成長によって生じる所得の上昇で洪水対策が進むことも考慮に入っているため、極めて控えめなものと言っていいでしょう。
被害を受けると思われる人々は海抜の低い地域に住む人々です。大部分はパキスタンからインド、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマーまで南アジアの沿岸地域に住む人達、20%はタイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンを含む東南アジアに住む人々です。さらに、南アフリカ共和国から、スーダン、マダガスカル共和国を含む東アフリカ地域、トルコからアルジェリアを含む地中海地域、モロッコからナミビアにかけての西アフリカなど、実に多くの人々が影響を受けることになります。毎年洪水の被害を受ける人々のうち90%以上が上記5つの地域の住民なのです。
先進国では、都市機能と社会インフラが沿岸地域に集中しているため、高潮が発生するとこうした産業の基盤に大きな影響が出ると見られています。予防措置や補償制度がある程度機能することも考えられますが、その不十分さは否めません。
開発途上国を見ると、熱帯の島国である小島嶼国や海抜の低いデルタ地帯は特に海面上昇の影響を受けやすくなります。然るべき方策が取られず、もし海面が1m上昇するとバングラデシュだけでも数千万人の環境難民が発生すが環境難民になることも考えられます。
何らかの対策をとることができる地域も多くあります。しかし、そのためには長期的な計画を要し、コストも膨大なものになります。適応コストの対GDP比率が低い国やオランダのように洪水対策をすでに行なっている国々にとっては可能なことかもしれません。しかし、対策費用がGDPの実に数%以上を占める国々もあるのです。多くの小島嶼国において、対策費用は法外な額となり、モルジブ共和国を例にとっても、対策にかかる費用はGDPの34%にも達してしまいます。海面上昇は気候変動がもたらす最も深刻な被害のひとつです。