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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
G7サミット直前
39ヶ国80団体、石炭火力など化石燃料への投融資を停止するよう求める要請書を日本政府に提出
5月19日、80団体は、東京で発表された要請書(英語/和訳)のなかで、あらゆる化石燃料への投融資を2017年までに停止することをG7首脳会議で公約するよう、日本に要請しました。こうした公約は、気候変動による最悪の影響を回避する可能性を50%にしたいのであれば、新規の化石燃料発電所の建設は2017年以降許されないということを示した最近の科学的調査に沿ったものです。
(写真)要請書の提出前には、財務省と国際協力銀行(JBIC)前で、「No More 石炭」アクションも敢行。JBICに対し、深刻な人権侵害が続くバタン石炭火力発電事業などへの融資を拒否するよう訴えました。
同要請書は、人権侵害が指摘されているインドネシア・バタン石炭火力発電所のような汚染を引き起こすエネルギー事業に対し、NGOが融資をしないよう日本に求めたこの3月と4月の国際的な抗議アクションから始まっています。こうした抗議アクションは、国内で49基の新規石炭火力発電所を建設し、海外でも多くの石炭火力発電所に融資を行なおうとしている(世界の)実態を把握していない日本の計画を止めさせようと、今月も継続して行なわれます。
日本政府は国内外で化石燃料事業を支援し、後退し続けています。日本の再生可能エネルギー源が豊富であるにもかかわらずです。日本の投融資は、アメリカやインドネシアなど、世界中の液化天然ガス(LNG)事業に対するものも含んでいます。加えて、日本は2007年から2014年にかけて海外の石炭事業に対し、200億ドル以上もの投融資を供与してきました。これをもって、海外における石炭関連事業への融資額は日本が世界一となっています。
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)プログラムコーディネーターの田辺有輝は、「今こそ、G7の公的資金の流れをパリで合意された1.5-2℃目標と整合性のあるものにするときである。G7首脳会議の議長国として、安倍首相はこの劇的な変革に向けて強いリーダーシップを示していくべきだ。」と述べました。
「日本政府自身の調査において、同国にクリーンかつ再生可能なエネルギー源が豊富にあることが示されている。」Friends of the Earth U.S.の国際政策アナリストであるケイト・デアンゲリスは述べました。「こうしたエネルギー源を利用したり、海外での再生可能エネルギーへの移行を奨励するのではなく、日本は汚染をもたらす石炭やガスを推し進めている。G7議長国であることは、日本が方向性を転換し、危険な化石燃料への投融資を再生可能エネルギー源に切り替えることを公約するよい機会だ。」
「インドネシアにいる私たちは、気候変動の影響に大変苦しんでいる。気候問題を一層悪化させるばかりでなく、土地や海に生活を依存している小規模農民・漁民の生計手段を奪ってしまう石炭火力発電所は、私たちにはもはや必要のないものだ。私たちは、インドネシア住民の犠牲の下に利益を得ることを止め、バタン石炭火力発電所に対する融資から手を引き、また、再生可能エネルギーへの投資に切り替えていくよう、日本政府に要求する。」と、インドネシア環境フォーラム(WALHI:Friends of the Earthインドネシア)の事務局長ヌル・ヒダヤティは述べました。
「クリーン・エネルギー100%の経済に向けた勢いが、パリ協定の採択以降の数ヶ月間で加速し続けていることは議論の余地のないことだ。また、2016年アースデイに日本を含む175ヶ国が同協定に署名したことは、世界が気候変動による危機に取り組んでいく準備ができていることを再確認するものである。」と、シエラ・クラブ国際気候エネルギーキャンペーン副所長マウラ・カウリーは述べました。「日本、そして、いかなる他の先進国も、風力や太陽光のような、より安価かつ安全で、より現代的なエネルギー源が、文字どおり至るところにある今日において、世界で最も汚染を引き起こすエネルギー源を推進し続ける言い訳を有さない。」
「G7諸国のなかで、また、世界中で、化石燃料からのダイベストメントが勢いを増している。危険な気候変動を回避すべく、私たちは化石燃料を地中に留める必要がある。石炭や化石燃料への投資を続けることは、リスクを伴うビジネスだ。日本の金融機関は、化石燃料からのダイベストメントをすべきであり、持続可能な未来への再投資をすべきだ。」と、350.org Japanダイベストメントキャンペーン担当の古野真は述べました。
連絡先:国際環境NGO FoE Japan 担当:波多江
Tel: 03-6909-5983 Email:hatae@foejapan.org
>以下、要請書本文の和訳です。(原文は英語になります。)
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内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
外務大臣 岸田 文雄 様
経済産業大臣 林 幹雄 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様
国際協力機構 理事長 北岡 伸一 様
日本貿易保険 理事長 板東 一彦 様
拝啓
以下の署名団体は、日本がG7会合で、化石燃料への投融資停止を公約することを要請します。こうした公約により、日本政府機関は新規の化石燃料、および、原子力発電事業への投融資について早急に段階的削減を始め、そして、科学者らが気候変動による最悪の影響を回避するために新規の化石燃料発電所の建設が許されなくなるとする2017年まで には、削減するという明確なマンデートを与えられるはずです。これは、日本のパリ協定への署名が書面上のものだけではなく、日本は気候問題への取り組みについて公正な負担 をいとわないという姿勢を世界に示すために極めて重要なことです。
日本は、化石燃料、および、原子力発電から、コミュニティーの自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)を取得した上でのクリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー(風力や太陽光など)への転換を早急に始めなくてはなりません。日本は国内において、化石燃料からの移行に利用すべき豊富な再生可能エネルギー源を有しており、自身の調査において、風力によるエネルギー源だけで1,900 GWを有していることを示しています。 日本は、中国など、彼ら自身の再生可能エネルギーの容量を大幅に増加してきている他国よりも遅れています。
国際的には、気候変動に関する科学や気候変動による致命的な影響が、地中に化石燃料をとどめておく緊急的な必要性を示してきたにもかかわらず、日本は化石燃料への依存の継続を奨励してきた経緯があります。こうしたものには、日本がアメリカやインドネシアなど、世界中で投融資を行なっている液化天然ガス(LNG)事業が含まれます。 また、アメリカやフランスが海外での石炭事業に対する融資を規制した一方で、日本は2007年から2014年にかけて海外の石炭事業に対し、200億ドル以上もの投融資を供与してきました。これをもって、海外における石炭関連事業への融資額は日本が世界一となっています。日本は石炭関連の融資を規制したOECD合意をしっかり実施するとともに、その改善に向けて支援を行ない、また、他の化石燃料に対する規制を提言したり、最新のクリーンかつ持続可能な代替エネルギーを大いに支援するときです。
G7主催国として、日本は気候問題について遅れをとるのではなく、リーダーとなる義務を有しています。日本はまず、海外の化石燃料補助金を停止しなくてはなりません。安倍首相は、地元を荒廃させ、遊牧民から土地を奪うことになるヤマルLNG事業や、人権侵害が多発しているインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電所、および、インド・オリッサ州ダリパリ石炭火力発電所の両事業を含む、危険な化石燃料事業に対する支援を拒否すべきです。国内でも、日本は、化石燃料や原子力発電といった前世紀の技術利用を拒否し、代わりにクリーンかつ持続可能なエネルギーを利用する未来を育んでいくことで、世界の技術を再びリードする日本となるときです。2016年において化石燃料事業に着手すれば、何十年にもわたる有害な炭素汚染に縛りつけられるリスクを冒すことになります。日本がホスト国を務める今年のG7サミットの日も迫るなか、世界は視線を注いでいます。日本は(他国を)リードする、あるいは、少なくとも日本の排出量について責任をとるときです。
敬具
(以下、39ヵ国80団体署名)
(翻訳:FoE Japan)
>バタン石炭火力発電事業の詳細については、こちら