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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
日本の公的融資の拒否を求める国際要請書(42ヵ国230団体署名)を提出
国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)が約21億ドルという巨額融資を検討中のインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業(2,000メガワット。総事業費約45億ドル。伊藤忠商事・J-Power出資)について、4月1日、国際環境NGOFoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワークなど日本の市民団体は、JBIC前(東京)で緊急抗議アクションを行ない、JBICが『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(JBICガイドライン)に則り、人権侵害の繰り返される同事業への融資を拒否するよう求めました。
また、42ヵ国230市民団体が署名した国際要請書(英語/和訳)もJBICに手渡し、地元での社会的合意がなく、抑圧的な形でしか進めることのできないような同事業に対し、日本の巨額の公的融資が使われることのないよう要請しました。
3日という短期間で世界各国から多くの署名が寄せられた同要請書は、安倍首相が訪問中のアメリカ・ワシントンDCの日本大使館でも、3月31日(現地時間)、FoE USなどの米市民団体から提出されました。4月1日(現地時間)には、インドネシア・ジャカルタの日本大使館前でも、学生団体が抗議アクションを行ない、要請書を手渡そうとしましたが、こちらは大使館に受取りを拒否されたとのことです。
左:アメリカでの抗議アクション(FoE US提供)右:インドネシアでの抗議アクション(グリーンピース提供)
現在、同事業の現場では、事業者の融資調達期限が4月6日に迫るなか、土地収用の強制執行が行なわれています。先週には、土地の売却を5年間拒否してきた地権者・農民らが依然として耕作を続けるなか、農地へのアクセスがフェンスによって完全に封鎖されてしまいました。これは、農民が生計手段である農地にアクセスできず、生活ができなくなることを意味します。
同事業はこれまでにも、地元の軍・警察による反対派住民への脅迫・暴力・不当逮捕などが起こるなど、深刻な人権侵害が続いており、昨年12月には、インドネシア国家人権委員会からも日本政府に対し、慎重な融資検討を求める書簡が出されています。農業・漁業など生計手段への影響を懸念する地元住民の根強い反対も依然として続いており、4年以上、着工が遅れてきました。
日本政府・JBICは、2013年から同事業への融資検討を続けていますが、社会的合意もなく、人権侵害の状況が一向に改善されない同事業について、JBICガイドラインに則り、融資を拒否することが求められています。
連絡先:国際環境NGO FoE Japan 担当:波多江
Tel: 03-6909-5983 Email:hatae@foejapan.org
>以下、要請書本文の和訳です。(原文は英語になります。)
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内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様
拝啓
安倍首相の訪米にあたり、世界中から署名を寄せた以下の団体は、日本が特にインドネシアにおける石炭火力発電所の開発事業に果たしてきた役割に対し、深い懸念を表します。日本は、化石燃料から、風力や太陽光といったクリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー源に融資を転換させようとする動きを減速させ続けてきました。G7のリーダーとして、日本はもはや遅れをとるのではなく、気候変動による最悪の影響を回避するために不可欠な転換という変革を起こすべく、汚染エネルギーからの転換を奨励するリーダーになることが極めて重要です。
日本は、科学(的分析)や致命的な気候変動の影響が化石燃料を地中に留めておく緊急的な必要性を示しているにもかかわらず、石炭への継続的な依存を奨励してきた経歴を有しています。2007年から2014年にかけ、日本は海外の石炭関連事業に200億ドル以上もの融資を供与しました。日本はしばしば、石炭関連事業への輸出信用に対する規制の設置に反対してきました。アメリカ、フランス、その他の国々が海外の石炭関連事業への融資を制限した一方で、日本は海外の石炭火力の世界一の支援者でありつづけ、地球と人間に損害をもたらしています。劇的に(炭素)排出を減らす役割を各国が担わなくてはならないというパリ協定に世界が合意したにもかかわらず、2016年において新規の石炭火力発電所に着手することは、この先、何十年も炭素排出という損害を出し続ける危険を冒すということです。
その一例が、インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電所です。事業者が適切な方法で同事業に対する「社会的合意」を確保できていないにもかかわらず、また、地権者や農民の合意なしに、彼らが生計手段として依存している土地への出入りを封鎖してしまったにもかかわらず、国際協力銀行(JBIC)は、これまでのところ、同事業への融資拒否をしていません。石炭火力発電所は、気候に甚大な損害をもたらしますが、非常に大きな不の健康影響を地元コミュニティーに及ぼし、平均寿命を縮めてしまいます。同事業に伴う負の環境・社会・気候影響、そして、人権侵害に鑑み、私たちは2016年4月6日の融資調達期限の前に、JBICが同事業への融資を拒否するよう強く求めます。
事業者とインドネシア政府は、JBIC(環境社会配慮確認のための)ガイドラインに則った適切な環境社会配慮を怠っています。昨年末には、インドネシアの政府機関ではあるものの独立した政府機関であるインドネシア国家人権委員会も、土地収用プロセスをめぐる人権侵害について見直すよう、日本政府に警告しました。日本政府、および、JBICは、農民の生計手段を維持するとともに、現場での無用な衝突を回避するためにも、早急に未売却の農地への自由なアクセスを確保するよう、事業者に求めるべきです。
インドネシアの地元コミュニティーは、暴力、脅迫、人権侵害に晒されてきました。こうした傾向は世界中で起きており、悲惨な結果を招くこともあります。2016年3月、ホンジュラスのベルタ・カセレス氏とネルソン・ガルシア氏、また、南アフリカのシクホシフィ・ラデベ氏という環境擁護者らが殺害されていることを私たちは目の当たりにしています。国際社会は安倍首相の訪米にあたり、地元コミュニティーに対する脅迫や殺害は受容できないものであることを強く表明します。日本政府、および、JBICがバタン(石炭火力発電)事業に対する融資に邁進すれば、こうした行為を誘発する危険性があります。
JBICガイドラインは、事業者が適切な環境社会配慮を確保できない事業への融資を実施しないと規定しています。バタン(石炭火力発電)事業では、ガイドラインの明確な違反が見られることから、JBICは2016年4月6日の同事業への融資調達期限を前に、同事業への融資を拒否すべきです。
日本政府は、気候変動による最悪の影響を回避するため、バタン石炭火力発電事業だけではなく、すべての石炭火力発電事業への融資を拒否するべきです。G7のリーダーとして、日本は石炭火力発電事業への融資を止め、地元の大気や水を汚染することなく、あるいは、気候変動に寄与することのない電気へのアクセスを増進するような、クリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー事業への転換を図るべきです。私たちの懸念にご配慮いただき、日本政府が国内、および、海外の石炭火力発電事業への融資を中止する選択をしていただけるよう期待します。
敬具
(以下、賛同団体署名)
Cc: 伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長 岡藤 正広 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役会長 前田 泰生 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役社長 北村 雅良 様
株式会社三井住友銀行 取締役会長 北山 禎介様
株式会社みずほ銀行 取締役頭取 林 信秀様
株式会社三菱東京UFJ銀行 頭取 平野 信行 様
(以下、42ヵ国230団体署名)
>バタン石炭火力発電事業の詳細については、こちら