千葉県を横断する大規模CCS事業が誰も知らないうちに計画中!?
「首都圏CCS事業」とは、日本製鉄君津製鉄所(将来的には京葉臨海工業地帯)から発生するCO2を、パイプラインを通して木更津市、袖ヶ浦市、市原市、長柄町、茂原市、白子町、九十九里町と千葉県を横断して運び、九十九里町沖の海底地下に貯蔵するというものです。
これほどの大規模な事業の実施有無が、地元といってもパイプラインの通るごく狭い地域への説明のみで、2026年度末までに決められようとしています。
FoE Japanは7月15日(火)と27日(日)に、袖ヶ浦市の昭和地区を対象として開催された住民説明会について地元の市民の方から情報を得て参加しました。
どんな事業なのか、問題点はなにか、見ていきましょう。
首都圏CCS事業の概要
会社名 | 首都圏CCS株式会社(株式会社INPEXと関東天然瓦斯開発株式会社との合弁会社)、日本製鉄株式会社 |
貯留地域 | 千葉県外房沖(深部塩水層) |
貯留量 | 約120万トン/年 *将来的には500万トンへの拡大を想定 |
排出源 | 日本製鉄東日本製鉄所君津地区および京葉臨海工業地帯の複数産業 |
輸送方式 | パイプライン |
事業の特徴 | 京葉臨海工業地帯におけるCO2排出源とCCS貯留地とを大容量パイプライン導管で結ぶ。 |
スケジュール | 2024年:事前調査や基本設計開始、ボーリング作業一部開始 パイプライン沿線行政への説明開始 2025年:地元説明、自主的な環境影響評価(事業者資料には「必要な場合のみ」と記載あり。) 2026年:上記を継続実施し、年度末までに事業化判断予定 (事業化される場合) 2030年度圧入開始に向け、工事等実施 事業継続年数、終了年度は未定 |
以下は、JOGMECが7月9日に開催した「令和6年度先進的CCS事業成果報告会」での説明資料からの抜粋です。
(*地元説明会で配布された資料を紹介したいところですが、「オンラインへの掲載はしないように」とのことで、残念ながらご紹介できません。本当は、こういった資料も公開していただきたいところです。)
対象地区住民説明会の様子
袖ヶ浦市では、パイプライン建設予定地区の住民(のみ)を対象に、6月上旬ごろに回覧板で告知し、7月に実施されました。
袖ヶ浦市では7月15日(火)18:30~、7月27日(日)14:30~、いずれも袖ヶ浦市民会館中ホールにて開催されました。
<7月15日説明会の様子>
参加者は25~30名程度。45分程度の説明のあと質疑。20時までの予定を30分弱延長して終了。
主な質疑は以下
・事故の可能性とリスク対応について
→考えられるのは、第三者が(パイプラインの存在を知らずに)別の工事で穴をあけてしまうことと、見えない隙間から少しずつ漏洩するリスク。
・導管の劣化、腐食について
→対策を取っている、内側の部材は十分な厚みを取っている。
→劣化が確認できれば交換も可能。保守管理については経験がある。
・説明会開催のあり方について、パイプライン敷設地区だけでなく、袖ヶ浦市内全域に、もっとオープンに告知すべき。袖ヶ浦市内だけでなく千葉県内や首都圏など来訪する可能性のある人にも告知すべき
→市と相談して検討
<7月27日説明会の様子>
参加者は60名程度。対象地区の方は前に、それ以外の地域の住民は後の列に案内された。
45分程度の説明のあと、質疑応答。
主な質疑は以下
・内房で排出されたCO2をなぜ外房に埋めるのか?
→水溶性ガス(天然ガス)の産出があって地層の状況がわかっており、外房のほうが貯留の可能性が高い。
・内房も外房も貯留の可能性を調べたのか?
→両方調べていない。外房はこれから調べる。
・なぜ税金を使うのか?
問題点とまとめ
・千葉県をパイプラインが横断し、外房沖にCO2を投棄する大規模な計画が、ほとんど知られずに進行中。
・現状、地元説明会はごく限られた対象地区のみ。
・CCSは環境アセスメントの対象となっていない。事業者の自主的な取り組みのみ。
・この状況で1年半後(2026年度末)に果たして「事業化判断」はできるのか?
各ステークホルダーへの丁寧な説明や対話を行うとすれば、1年半後の判断は難しいのではないか。
・莫大なコストがかかり、公的支援がなければほぼ不可能。現在の実施可能性調査も税金で行われている。環境・社会影響も大きく、かつCO2削減効果としては限られるCCS事業は見直すべき。
なお、地域の方からの情報提供によると、地区説明会については7月に木更津市、8月上旬に茂原市、そして10~12月に袖ヶ浦市(別地区)・市原市・白子町・大網白里町・九十九里町で、それぞれ行われるようです。
FoE Japanも引き続き注目し、情報をお伝えしたり参加を呼びかけたりしていきます。
(吉田明子、深草亜悠美)
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